ユッカとクレア

 腕を振って相手の腕にイエローリリィの刃を絡ませようとしたが魔法を当てられて弾かれる。トリガーから指を離して鞭の部分を収納して元の両刃剣に戻す。


「ッチ!」


 舌打ちをしながらもう片方の腕で銃を構えて撃つ


「クラスターアクアボム」


 しかし向こうの魔法に爆発に巻き込まれて吹き飛んで一向に相手に当たる気がしない。直撃しても物理無効だから傷が付かないのであまりひるまない。狙って撃ち落としているという訳ではなく数をばらまいてたまたま当たっているだけであるがそれでも数をばらまかれると少し厳しくなる。


 バロック君やナギさんならガントレットとか盾でガードしながら接近することができるけど、俺だと少し難しい一応数発程度なら剣で迎撃できるけど流石に接近すると数が増えるからそれを全てさばき切ることはできない。それだったらまだこの状態を維持した方がいい。


 俺達の仕事はシェフレラの邪魔をさせないこと出来れば助太刀に行きたいところだが今の所助太刀に行く余裕はない少し会話をしているので余裕があるように見えるがそれもギリギリだ。全員一対一ならアイビーちゃん以外遅れはとらないと思うけど、今回は俺達よりも数が多いあまり一人に時間を割きたいところは無いのは理解しているが少し一時の感情を優先してしまいコイツにしつこく相手をしていたら向こうに脅威として認識されてしまったらしくずっと付きまとって来て魔法を撃ってくる。


 あの時少しカッとなって動いてしまった俺が悪いし似たような事をしていたのであまり言いたくないが、しつこくないか?この攻撃だって俺が他に行かないようにするための牽制目的だろうし、よそ見をすると少し強めの攻撃が飛んでくるから面倒くさい。けれどもこんな攻撃を長時間しているなら流石に魔力が切れるだろ。彼女は転生もしていないし転移もしていない、さらに神に干渉されてもいない正真正銘この世界の住人だ。だから持っている魔力量も当然一般人レベルか少し多いぐらいのはずだ。ならばここは防御と回避に専念して向こうのガス欠を狙うのが吉と見た。俺はもう一度剣のトリガーを引いて剣を数珠状に変形させて振り回して向かってくる魔法を弾いて時間を稼ぐ。


 次第に魔法の数が少なくなっていく、今だなと鞭を大きく振るってあたりの魔法を弾き飛ばした後に彼女目掛けて鞭を振り下ろす。先ほどよりも明らかに動きが鈍くなっているので彼女は回避しきれずに鞭は足に当たり絡めとる。俺は剣を引いてこちらに引き寄せながらトリガーから指を離すと巻取りが始まって彼女がこちらに手繰り寄せられてくる。足から引っ張られているのでスカートの中が丸見えになっているが特に気にせず、寧ろ何で中に別の何かを履いていないんだ?と心の中で突っ込みながらも、もう片方の手にあるリボルバーを構えて狙いを定め発砲する。放たれた弾丸は真っ直ぐに狙い通り肩に命中したので続けて数発撃ち込む。


 魔法量が少なくなっている今なら傷を付けることが出来るのではと狙いにくい四肢を狙って撃っているが1発2発と命中しても一切傷がつかない。


「嘘だろ?!」


 それでも撃ち続けるが弾が肩や腕に貫通することはなく、その内に六発全て撃ち尽くしまった。リロードする暇もないのでホルスターにしまってこちらに引っ張られている女性に一発ぶん殴ろうかと思ったが、女性がこっちに手を伸ばして魔法名を言って水の刃を放ち始める。

しつこいと思いながらぶん殴るのを止めて再び剣のトリガー引いて伸ばして振り回して勢いをつけた後に、近くにある建物を狙って足の拘束を解いて投げて建物にぶつける。激突すると同時にガラガラと建物が崩れて姿が見えなくなる。


「まだ魔法を使えるなら物理無効の機能はまだ生きているかもっスけど、しばらく瓦礫の重さで動けなくなってほしいっス」


 聞こえているのかは知らないが、とにかく厄介なものの対処が終わったので背を向けてバロック君たちの所に戻ろうとしたが


「アクアニックブレイク!!」


 の声と共に爆発が起きて一緒に先ほど崩した瓦礫を吹き飛ばす


「はぁ!?」


「アクアデスサイズ」


 何が起こったのか理解できないまま体を爆発した方に向けると、爆発による煙の向こうから大鎌の形をした水が飛んできた。完全に不意を突かれたから回避は間に合わない


「クソ!」


 剣のトリガーを引いて剣を伸ばし鎌の形に沿うように鞭を横に振って魔法にぶつける

少しの均衡の後こちらが押され始める


「オーシャニックノヴァ」


 更にダメ出しのごとく鎌の後ろで爆発が起きて完全に勢いを取り戻した鎌が鞭を押しながら迫る。

鎌が迫る中俺はまだ押されている剣を踏み台にして上に上がりながら回避をするが少しミスをして靴の底が少しスライスされた。


「オラよ!!」


 そのまま空中で一回転して勢いをつけて鞭を振り下ろして攻撃をする。その時に先ほどの爆発するときに煙が晴れたようでようやく向こうの姿を認識できた。

外見に傷は一切ないが先ほどと違う点が一か所ある。彼女の指だ。正確には彼女の左手にはまっている指輪だ。先ほどまで何の変哲もないただの指輪だったのに今は眩く青く光るその指輪から何かが流れ込んでいるように感じる


「・・・補給アイテムっスか」


 今の所他の人から似たような報告は来てないし見えていない、と言うことは量産品ではなく、特注品や個人の品だろう。魔法のある世界だと良くある。多分だが魔力を貯めるとかそう言う類の物だろう。俺ら魔法はあまり得意じゃないからよくわからないけど小さい充電バッテリーだと考えれば理解できる。さっきの二つの魔法は今までの魔法よりも明らかに威力が上がっていた。十中八九転生者が開発に関わっているだろう。


 ブーストだったら最初から使っているし、デメリットがあるとしても転生者がデメリットのあるものを女性に渡すとは考えにくいからブーストアイテムの可能性は低い


 だとするならば、魔力を貯めて必要な時に引き出せる貯蔵庫だと予想する。


「面倒っスね」


 容量がわからないが転生者がいるなら並大抵の量ではないだろう


「・・・・ません」


「ん?」


 彼女が何か話し始めた


「何が正しいのか何が間違っているのか全く分かりませんが、私は私が愛している人のために戦います」


 彼女が決意に満ちた目で俺を見る。正直覚悟を決めるのが遅いと俺は思うが、まぁ別にいいか。敵の心配するほどの俺はお人よしじゃないし


「そうっスか」


 鞭を振るって構え、数瞬の沈黙の後に両者が動き出す。

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