思いは焼け落ちる

まずは魔法を発動する前に近づいて刀を横に振るう。

転生者は後ろに下がりながら回避して両手を胸の前に持っていき、両手の間に小さい火を作りそこから無数の火球を発射してきた。


 私はそれをライフルで撃ち落しながら右に進んで回避をする。一発程度なら問題ないが何発も当たるのは少し不味いかもしれない。上着も先ほどの攻撃を防ぎきれなかった箇所が多すぎて、穴だらけになっているので満足に防げないだろう


 残弾も心配になってくる。まだマガジンには余裕があるからリロードをしたいところだが転生者が撃ってきている魔法の数が多すぎてリロードをする暇がない。


 しかたないか、私は刀を納刀して私は飛行装置を操作して出力を上げる。低く唸るような駆動音が飛行装置からして、少しずつ装置が熱くなっていくのを感じる。丁度ライフルの残弾を撃ち尽くしたので、空になったマガジンをライフルから取り出して転生者に向かって投げたが、転移者の放つ火球に当たって小さな破裂音と共に四散した。ライフルで撃ち落していた分の火球がこちらに向かってくるが上昇して回避する。


 出力が上がって速度が上がっている今なら回避は簡単だ。そのままの速度を維持しながらリロードして転生者に接近する。転生者もこちらを目で追いながら魔法を放ってはいるがその魔法は私の少し後ろを通っていく。その後も魔法を放っているがすぐ近くを通ることはあっても当ってはいない。たとえ狙いを定めたとしても実際に動き続けているのを当てるのは結構難しい。

未来を必ず当てるなどできやしないから当たらないのは当たり前だが、それを知っていたとしても実際に当てるのは簡単ではない。


 それに先ほどから転生者の狙いが思ったよりが甘い。最初の攻撃はすぐ後ろを通ったのに今は上や下を通って滅茶苦茶だ。私がなるべく直線的な動きをしないように今までの敵が軍隊などを相手していた都合上あまり少ない対象を狙って撃つといった練習をしてこなかったのではないだろうが、それでも魔力の総量が多いのも転生者、数だけはすごい。少し接近するだけでも向かってくる火球の数が急激に増える。


 しかしそれでも手はある。ライフルを前に突き出して私に当たる魔法のみを撃ち落して接近、そのままライフルを捨てて両手で首を絞めて絞殺すればいい。魔法が詠唱等何かしらの言葉を言わなければ発動しない。首を絞めれば転生者の魔法の発動の妨害と、転移者の殺害を同時に行うことが出来る。


 それにあまり時間も残されていない。飛行装置から伝わる熱の温度が上がってきている。駆動音も少しずつノイズが走ってきている。まだ少し余裕があるように感じるが残りは三分といった所か・・・しかし今出力を下げると被弾する可能性が上がるから、下げるわけにもいかない


 意を決して回避行動を止めてライフルを突き付けながら一直線に接近する。転生者も接近することに危機感を抱いたようで、上昇を始める。空中戦において頭を取られるのは非常に不味いし、接近しないと私もどうしようもない。私も後を追うように上昇を開始すると転移者はこちらに体の向きを変えて後ろに下がりながら魔法を放ち始める。


 私もライフルを前方に構えて撃ち落とそうと発砲しながら接近するが、一向に距離が縮まらない。

その内マガジンの残弾も少なくなってきた。全部を撃ち尽くす前に早めにリロードしようとマガジンを取り外すと、それを見越したかのように転生者が魔法名を詠唱して先ほどよりも巨大な火球が放たれた。私は上昇を止めてリロードを放棄しライフルを操作してグレネード弾に切り替えて火球にぶつける。グレネード弾が火球に当たり爆発が起きて私の周りに爆発による煙が立ち込めて周りが見えなくなる。

咄嗟に口を塞ごうとしたが煙を吸い込んでしまい少し咳き込む。


 それでも転生者を追おうとライフルを再び切り替えた直後に、煙を分けて転生者が接近してきた。ライフルを向けてトリガーを引こうとしたがそれよりも早く転生者がライフルの持つ手を掴んで横に避けつつもう片方の手で私の首筋を掴む。そしてその手に力を込めて首を圧迫して気道が塞がれた。


「ぐ・・・ぁ・・・」


 私達が強く作られたとしても生物である必要上酸素は必要だ。私は逃れようと掴まれてない方の手で私の首を絞めている手を引きはがそうとするが、そこは転生者簡単に引きはがせそうにない。


 さらに転生者は笑みを浮かべながら、ライフルを掴んでいた手を放して顔の前に手を翳して


「フレイム」


火球を生み出して私の顔にぶつける。


 顔面が高温に包まれて意識を手放しそうになるのを唇を噛んでこらえながら、私はライフルを構えて転生者の顔に突きつける。しかし転生者の笑みが失うことは無い。今私のライフルにマガジンは付いていないから残弾はもう無いのだろうと思っているのだろうが構わずに引き金を引く。パン!と乾いた音がした後に転生者の頭が大きくのけぞって私の首から手が離れる。


 別に私の内ポケットにはまだマガジンが残っているし、向こうは撃ち尽くしたから残弾はないと思ったようだが、実際にはライフルの薬室に一発だけ残っていたから撃つことができた。


 離れた隙に私はライフルを手放して懐からスタングレネードを取り出してピンを抜く。


 一瞬何が起きたのかよくわからなかったようだが一杯食わされたことが分かると焦った表情浮かべながら手を伸ばして再び私に接近する。私の手が届く間合いに入ったのを認識した後に伸ばした手を掴んで引き寄せて近くに寄った転生者の顔面にスタングレネードを叩きつけて目を瞑る。何かが弾けた音がして目を瞑っても分かるほどにまばゆい閃光が走る。


 目を開けると至近距離で爆発した影響で良く見えないが、この手が転生者の腕を掴んでいるのを頼りに転生者の首を掴む。そして私は転生者の後ろに回り込んで蹴りを入れた後に下に押し込む。そのままクレーターの中で煮えたぎっている溶岩に転生者の体を沈める。


 顔を上げようとする転生者の頭を抑えながらジュウジュウと手の焼ける激痛と熱気による息苦しさ、それに溶岩から発する熱気に耐えながらさらに頭を溶岩に押し込むが、転生者もジタバタしていた手を頭に移して頭を掴んでいる私の手を殴り始める。何度も何度も殴られると流石に我慢できずに手を放して溶岩から手を引き抜く。


「クソが!!」


 それをチャンスだと溶岩から出てこようとする転生者の生存能力に辟易しながら、後頭部を今度は右足で踏みつける。


 更に左手だけで刀を抜刀して体に突き刺そうとするが物理無効に阻まれる。転生者は溶岩に浸かって骨が見えるほどボロボロになった手を伸ばして私の足を掴む。


 そこから何かするのかと思ったが何かをするわけもなく次第に力が抜けていき最終的に完全に脱力した。


 私は刀を持ち上げて見えている後頭部に刀を突きさす。今度は物理無効に阻まれることは無くそのまま頭に突き刺さった。


 終わったと思い離脱しようとしたがここで飛行装置が完全にいかれて沈黙してしまった。


「・・・・」


私は転生者の上に乗り空を見上げてため息をついた後に、左手でインカムを操作してユッカにつなげる。

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