素の隊長
浮遊感が止まったので目を開くと、いつもの転移課の部屋にいました
隊長は全員が転移し終えたのを確認すると手を叩きました。
「よし、今日はもう遅いからアイビーの歓迎会は次の休みということにする、各自明日もから仕事だからさっさと寝るように」
そう言い終わった後に隊長が歩き出したので私達も後に続きます。
皆の部屋は同じ場所にありますから全員同じ方向に歩いています。
・・・・私の考えは駄目だったのでしょうか。
隊長の言っていることは合っています。私はその時の自己満足を満たすために助けただけで、その後の事は一切考えていませんでした。
もし隊長が来てくれなかったら私はどうしていたのでしょうか・・・いえ結局私は途中で見捨てていたでしょう。私はこの仕事をやめるわけにはいきません。そのことを考えると隊長は汚れ役を買ってくれたのだと私は思います。
「アイビーちゃん難しく考えちゃ~駄目よ~」
部屋に戻っている途中でセラさんが後ろから抱き着いてきました。
「セラさん!?」
突然の事でしたので倒れそうになりました。
「難しい事よりも楽しいことを考えましょ~!」
セラさんが後ろからぎゅーと抱き着いたまま、寄りかかってきました。
「え?でも急に楽しい事と言われても、そんな急には・・・」
「じゃあ私が教えてあげるわ~。楽しい事よりも面白いことなんだけど~」
そう言ってセラさんが耳に近づいてささやいてきました
「隊長は~実は結構寂しがり屋さんなんですよ~」
「へ?」
隊長が寂しがり屋!?
私は思わず隊長の方を見てしまいました
隊長は隣にいるユッカさんと話しているようでしたが、私の視線に気が付いて顔をこちらに向けました。
「?どうかしたのか?アイビー」
「い、いえ何でもないです」
「そうか?ならいいが・・」
隊長はそう言ってまたユッカさんと話し始めました。
私は少し歩くスピードを緩めて隊長との距離を離してからセラさんの方に向きます。
「え、本当ですか?セラさん」
「本当よ~」
セラさんはニヤニヤ笑っています。
「実は隊長~向こうに行くまで、アイビーさんが来なかったので涙目でプルプルしていたんですよ~」
にわかには信じられません。隊長が涙目でプルプルしていたなんて・・・
今の隊長から想像のつかない事に理解が追い付きません
「本当ですか?嘘ではなく?」
「本当に本当よ~嘘だと思うなら~前にいるナギさん達に聞いてみて~ナギさんが教えてくれたから~」
「・・・分かりました」
セラさんに言われたように前を歩いているナギさんとバロックさんに聞こうとすると
「あ、隊長にはバレないようにね~絶対怒るから~」
「りょ、了解です」
私は隊長に気づかれないようにそっと動いてナギさんに近づきます
「あのナギさん」
「?どうしましたかアイビーさん」
ナギさんはバロックさんと話していましたが、私が話しかけたのでこちらを向きました。
「あ、すいません話していました?」
「いえ、特に重要な話ではなかったので大丈夫です。それよりもなんですか?」
「ありがとうございます。それで聞きたいことなんですけど・・・」
私は隊長の方をチラリと見てから小声でナギさんに聞きます。
「隊長って寂しがり屋なんですか?」
「え?あー・・・そうね、確かに寂しがり屋な所があるわね」
どうやら本当に寂しがり屋なようです。
「確かに隊長は寂しがり屋な所がありますね」
ナギさんへの声が聞こえていたようでバロックさんも苦笑いしながらうなずいていました
「やっぱりそうなんですね。意外です隊長にそんな一面があったなんて」
「まぁ普段の隊長はキッチリしていますから知らなかったと思いますけど、休日に隊部屋に行くとオフの時の姿が見ることができますよ」
「ええ、低血圧で朝が弱いので、朝会いに行くと結構寝ぼけていたりしますし」
「それに隊長の部屋に入ると、隊長すごい満面の笑顔で歓迎してくれるんですよ」
そんな隊長は想像できないですし、見てみたい気もします。・・・と言うか話を聞いて思ったのですけど
「ナギさん達はよく隊長と一緒にいるんですか?」
「「え?」」
話を聞いていると、二人とも結構な頻度で隊長の部屋に入っているように聞こえます
「え・・・まぁそうですね。隊長の部隊に入ってからそれなりに長い間一緒にいますから、部屋に入ることもあります」
「ええ、あと隊長と一番長い間一緒にいるユッカさんはもっとすごいですよ」
「え?どうすごいんですか?」
「一回隊長の部屋に入った時に見たのですが、隊長下着姿でアイスクリーム食べてたんだけど、その隣で上裸のユッカさんが同じくアイス食べていたんですよ」
「え?・・・それって、そういうことですか?」
つまり、ユッカさんと隊長って付き合っているんですか?
「いえ、違います」
ナギさんに速攻で否定されました。
「隊長とユッカさんは同期で結構長い間一緒にいたので、もはや兄弟どころの関係ではないので、お互いの裸を見ても一切何も感じなくなったみたいです。だから普段二人でいるときには、恰好を気にしなくなったそうです」
「ええ・・・」
隊長とユッカさんってもはや熟年夫婦の域すら超越しているんですね・・・すごいというかヤバイと言うか・・・
思えば隊長の番号って私の番号の半分ぐらいなんですよね。そう考えると結構隊長とユッカさんとナギさんって結構長生きしているんですね
「私の場合、隊長と番号は近い方ですけど元々創造課からの異動でこっちにきたので、付き合いの長さで言ったらバロックさんと同じ位ですね」
「へぇ・・・なんで移動したんですか?」
「・・・まぁ、いいか。上司が変わって新しい上司になった時に折り合いが悪くなったので異動届を出したんですよ」
そういえばカルセさんもちょっと前に言ってたような気がします。私は特に移動する理由もないので関係ない話ですね。
「それで移動した先がここになって、そのまま・・・って感じですね」
「そうなんですね。ナギさんの昔の話を少し聞くことができて・・・あれ?何の話していたんでしたっけ?」
「隊長が寂しがり屋な所があるって話ですね」
「私がどうかしたのか?」
いつの間にか隊長が私達の所に来ていました。
「え?い、いえ何でもないです」
「そうか?結構楽しそうに話していたから気になってな。何の話をしていたんだ?」
一瞬正直に話そうかと思いましたが話したら絶対にセラさんが隊長に殺されてしまいますから駄目ですね。隊長の怒った姿を見たことは無いので見てみたい気もしますがセラさんを犠牲にはできないです
「え、えっと・・・」
「今、隊長のオフ時の話をしていたのです。聞かれますか?」
「ん、そうか・・・いや、遠慮しておこう」
隊長は気恥ずかしそうな顔をしてユッカさんの所に戻って行きました。
・・・今日は意外な隊長の姿が見れました。
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