誰でもお金持ちにいきなり招待されるとビビると思う

「お待ちしておりましたアイビー様」


 宿に着くとフローラさんが宿の前で待っていました。


「すみません、遅かったですか」


少し気は進んでいませんが参加すると決めたからにはちゃんとしたいと私は思います。


「いえ時間通りですので問題はありません」


「よかったです」


「ではアイビー様、屋敷にお連れしますので馬車にお乗りください」


 そう言ってフローラさんが後ろにある物に案内しました


「これが・・・馬車?」


「はい、馬車です」


 私の知っている馬車は馬が荷台を馬が引くものだと記憶にあります


 いえ、別に馬がとてつもなく巨大で馬そのものに乗り込むということではないのですが・・・


 まさかの馬が全身金属製!!でもテカリすぎないようにツヤ消しされているようです。


 私は馬に近づいてしげしげと眺めます


 近づいたりしても動かないことからこの馬は生き物ではなさそうですね


 しかも中から音が聞こえます。もしかしてオーベルテューレのように動力付きなのでしょうか?


 では何故馬の形をしているのでしょうか?


 そう言えば私はこの世界の乗り物を見るのは初めてですね。


 もしかして他の乗り物もこのような物なのでしょうか?


「・・・どうかしましたか?」


 フローラさんが少し怪訝そうな目でこちらを見てきました。


「い、いえ私は旅をし始めたばかりな者で、こういうものが珍しいんです」


「馬車がないほどの田舎から来たのですか?」


「は、はい私の生まれ故郷は内向的な場所でして・・・それが嫌で旅を始めたもので・・・」


「・・・なるほど、そうでしたか」


 フローラさんはこちらをじっと見た後に納得したような顔をしたので誤魔化せたようです


「とりあえず中へどうぞ、お話は中でしましょう」


 馬車の扉を開けて中に入るように促したので私はそれに従って中に入りました。


 フローラさんは私が中に入った後に私の向かいに座りました


 え?この馬車には御者さんはいなかったと思いますけど?


「お屋敷へ」


 フローラさんがそう言うと馬車がゆっくりと動きだしました。


 まさかの自動操縦でした







「この馬車は途中に設置している目印を通りながら屋敷までの最短ルートを移動します」


 窓から外を眺めているとフローラさんが説明を始めました


「この馬車はゴーレム技術を使って作られた物で王都ではよく見かけることになります」


 私はフローラさんの方に向きました


「こんな便利なものが走っているってすごいですね。でも私がこの町にいる間にこの馬車を見たのは今日が初めてですよ」


「はい、それはこの馬車が貴族用だからです」


 そう言われてよく見てみると中の装飾からして高級感が漂ってきます


「貴族の方を歩かせてお屋敷に案内するなんてできませんから、貴族の方を送り迎えするのに使われます。本来はこの町のように人が多い場所での運用はあまり良くないのですが、馬車のスピードをなるべく落として動かしていますし、障害物を検知すると止まりますから事故は今の所ありません」


 なるほど、貴族の方が町中をのんびり歩いていたら恰好の的ですしね。


 でも・・・


「そんな馬車に私が乗っていいのでしょうか?」


 私は貴族じゃないですし、歩いても良かったんですけど・・・


「問題ありません。御屋形様の指示でこの馬車を使っているので文句を言う方はいないかと、それに他の人に客人を迎えずに歩かせたなどと言われるのを避けるためです」


「そ、そうですか」


 貴族社会も大変そうです





 しばらくの間馬車に揺られていると眠くなってきましたがここで寝るわけにはいかないと、思いながらも舟をこいでいると馬車が止まりました


「到着しました」


 フローラさんはそう言って馬車を降りました。


 私も眠気を覚ますために頭を軽く振って目元をこすってから馬車を降りました。


 屋敷は三階建ての立派な建築物ですね。


 コの字になっているのでとても威圧感があります。


 そして・・・


「「「いらっしゃいませアイビー様」」」


 馬車から屋敷までの道にずらっと並ぶメイドと執事さん。そして扉の前にフレアさんとフレアさんのお父さんがいます。


「・・・ひぇ」


 隅に行きたくなる感情を必死で抑えます


 私はこういう雰囲気と言うかお姫様扱いに慣れてというか初体験なので怖いです・・・


 正直逃げ出したいです。


 集まるところがお店とかにできなかったのでしょうか?


「ではご案内します」


そんな私の気持ちをわかってはくれずフローラさんはそう言って屋敷に歩いていきました。


「え?あ、はい」


 もうなるようになれです


 私は慌ててフローラさんの後をついていきました。


「こんにちは、アイビーさん」


 フレアさん達の所に着くとフレアさんが挨拶をしてくれました


「こんにちはフレアさん・・・様の方がいいですか?」


 昨日はフレアさんの素性を知らなかったのでさん付けで呼んでしまったのですが、素性を知った今は様付けで呼んだ方がいいのではないかと私は思います


「いいえアイビーさん、他の方が集まるお茶会ならいざ知らず、ここには私達しかいないのだからさん付けで呼んでもらって大丈夫です」


「わ、わかりました」


 本当は様付け呼びにしたいのですが頑張ります。


「あの・・・それともう一つ聞きたいのですが・・・」


 私はフレアさんのお父さんの方を向いておずおずと言いました。


「なにかね?」


「あの・・・私が来てもいいのでしょうか?」


「なに?」


「フレアさんが止まりたいと言った時に知らない人を家に入れるわけにはいかないって言ってませんでしたか?」


たしかフレアさんが私を家に泊めようとようとした時にそんなことを言っていたような気がします。


「私は知らない人を家に泊めるわけにはいかない私は言ったのだ。食事程度なら問題ない」


それにと、フレアさんお父さんは続けます。


「成り行きとはいえ娘の面倒を見てくれたのには変わりない、ならば感謝をするのは当然のことだ」


「いえ・・・」


「御屋形様、そろそろ時間が」


 私はもう少し話をしたかったのですがフローラさんが話を遮りました。


「そうか、すまないが続きは食事の時にするとしよう」


「あ、はい、大丈夫です」


「ではアイビー様、ドレスの調整をしますので付いて来てください」


フローラさんは扉を開いて中に入っていく


「では後ほど」


「ああ、こちらも楽しんでもらえるように努力しよう」


「アイビーさん、またあとで」


「はい、フレアさん」


 私は。そう言ってフローラさんの後についていきました。 

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