室長登場とお願い
「そろそろ終業時刻ね」
「そうですね、じゃあ部屋に戻りますか」
「そうね~調整もある程度済んだし」
「あとはアイビーさんの訓練ですね」
その言葉を聞きながら私は床に倒れこみました。
まさか試し撃ちの後に武器とリロード用のカートリッジも持って走ったりもするとは。
小銃の反動でさえ肩が何回か持っていかれそうになってきついのに、ライフルの反動とかふざけているんじゃないかってくらいすごいんですけど。
さらに二脚の固定化機能を使っての立ち撃ちと膝撃ちで、私の肩とか腕はもうボロボロです。
「アイビーさんは初めてのわりに結構当てていますね。」
「長距離の射撃も結構当たってるわね~」
「結構筋もいいですから、次は屋外と動く目標に当てる訓練ですね」
「ま、まだあるんですか?」
「当然です」
ナギさんが私を立ち上がらせながら言う。
「屋外における射撃の場合、長距離になればなるほど風等の要因により弾がそれてしまうことが多々あります。」
「流石に銃の機能に弾がそれないようにする機能は、今回のランクだとつけられないのよ~」
「そういうことですし、最初からそう言う機能に頼りすぎると素の能力が落ちて、いざという時に足を引っ張ることがありますから」
「そうなんですね」
「まぁ今日はもう終業だから訓練はまた明日、この部屋に来てください」
「わかりました」
「お疲れ様、また明日もよろしくお願いするよ」
私はまだ力の入らない足を奮い立たせて部屋の出口に向かって歩き出そうとしましたが
「残念ながら・・・君は残業だよ、カルセ君!!」
と言う大声と共に射撃室の扉が勢いよく開きました。
「げぇ・・・室長」
「そうとも!!この私がこの88182室の室長ヘリオです!!」
上下汚れたジャージを着ていて、上に白衣を着ている髪を後ろで雑にまとめている女性がそう言った。
「・・・何徹目ですか室長?」
眼の下に広がるクマが少なくとも健康的な生活を送ってないことを教えてくれる。
「数える意味もないので知りません」
「えぇ・・・」
なんというブラック
そんな私とは違い半分予想通りだったような半分呆れたような、そんな顔をしているカルセさんが反論しました。
「それで何故残業なのですか?私今日の仕事は残らず終わらせましたが?」
「緊急の仕事だ!!そこの753部隊の隊長さんからね!!」
そう言ってヘリオ室長は私たちを指さしました。
え?隊長が?
「無論シェフレラ隊長が今日中に仕上げろといったわけではない!!今回の仕事に必要あるかもしれなくなるとのことで、作戦決行日までに作ってほしいと依頼してきたのだ!!」
「なら何故ですか?明日からでも納品日まで九日間ありますそれならば十分でしょう」
「それは100%ではない!!」
ヘリオ室長は拳を握りしめ高らかに言う
「カルセ君の意見は納品日丁度に装備が完成するということだ!!それでは駄目なのだ!!
製作者たるのも常に使用者と我々が満足するものを作らなければならない!!使用者が満足しても、我々がもっとこうすれば良くなった ああすれば性能が上がった等と思ってしまったら我々は使用者に不完全な物を渡してしまったことになる!!
それは私のプライドが許さない使用者の意見や要望を可能な限り聞き入れ性能を上げ使用者を我々が満足できる物を時間ギリギリまで作り続ける!!100%満足のできるものが出来なくても100%になるように努力し続ける!!それが私だ!!・・・だが」
そこまで言うと室長は姿勢を正し、頭を下げて続けた。
「私だけの力では足りないのだ!!他の88182室のメンバーも手伝っているのだがまだ人手が足りない!!カルセ君!!この通りだ!!手伝ってほしい!!」
カルセさんは少し考えた後、室長を見つめこう言いました。
「・・・当然追加の報酬はあるんですよね?」
「もちろんだ!!私に用意できるものなら何でも与えよう!!残業代は勿論のこと、私に用意できるものなら本当に何でも!!」
顔を上げそう言う室長に近づきながらカルセさんは
「それならば近々、88182室のメンバーで温泉旅行に行こうと話あっていたところです。
室長は欠席とのことですが参加してもらいます。」
こう言った
「・・・それでいいのか?」
予想外のことだったらしくポカンとした顔の室長がそう言った。
「ええ勿論、ああ残業代は別でいただきます。いいですね?」
「ああ ああ!!勿論だともカルセ君!!温泉旅行!!私も参加しよう」
「では決まりです」
「ありがとう感謝するよカルセ君!!では先に向こうに行っているよ!!すぐ来てくれ!!」
そう言いながらカルセさんの手を取ってブンブン振り回したあと、室長は入ってきた時と同じように勢いよく扉を開けて去っていきました。
「ええすぐに」
「あれでいいんですか?」
「あれでいいんです。室長の精神はともかく肉体の方はボロボロです。どこかで休ませないと倒れてしまいます。そうなったら困るのは我々ですから」
そう言ってカルセさんも扉の方に歩き出しました。
「お嫌いではないんですね」
と私が言うとカルセさんは振り向いて
「嫌いだったらとっくの昔に全員が異動届を出していますよ」
と苦笑しました。
「ではお先に」
そう言ってカルセさんは部屋から出ていきました。
「私達も帰るわよ」
そういってナギさん達も歩き始めました。
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