近い未来、人は欠けた体の一部を機械で補う。耳や肺、さらには頭に至るまで。
ただどんなに機械が体を補ってくれようとも、人の心は変わらず多感なティーンエイジャーならなおのこと。
限られた場所、人という箱の中で精一杯生きる様を、いつかその箱が誰かに開かれる日を夢見る希望を抱く一人の少女の青春模様。
私が物語の中で印象に残った言葉として「ありがとうも、ごめんなさいも、一緒に言える言葉が、あればいいのに。」というのがありました。
この曖昧でなんとも表現しづらい感じが、まさに青春だなと思います。
人は外見がどんなに変わろうとも本質は人であり、友情や恋愛というものは存在し続けるのだろうと感じさせられました。
物語の中で感情の変化が静かに語られ、それでいて大きな変化が生まれる。読んでいて続きが気になる作品でした。
近未来の恋愛事情をぜひ覗いて見てください。
小説はテキストで書かれるので、作者がどういう文で織って物語を紡ぐかによって見え方が大きく異なる。それは物語自体の違いもあるかもしれないが、文の書き方によるところも大きいと思う。
そういう意味でこの作品は文が良かった。過度に情熱的ではないのが特に。
物語はメイン2人の会話に焦点をあてられていて、その会話の雰囲気を崩さないように地の文が考えられているように見えた。
そしてティーンズ2人の会話という異常度の低い内容がメインなので、物語の盛り上がりの波は控えめになっている印象。この物語は私だったらもう少しドマラチックに書くが、それではこの物語の良さを表現できなさそうだな、と思った。
ただし、波が少ない分、この物語は途中で読み終えると次が気になる、というタイプの話ではないので、ぜひ一気見をお勧めしたい。
本1冊弱、その結末まで通しで見た時に「こういう語りで進んできたから、話全体として綺麗にまとめられたのか。ああ、良い話だった」という感覚をきっと味わえるのではないか。
大きな音と異性が苦手な主人公の少女、野菊。
ルームメイトと共にダンスパーティーに参加した時、一度見たら忘れない。
「真っ黒な円筒型の機械頭」の青年と出会う。
「君、暇なの?」
彼の名前は、ユウヒ。
頭がない機械頭の青年。
偶然の出会い?
いいえ、必然だ。
なぜ、ユウヒが野菊に声をかけたのはある秘密があって……。
ダンスフロアから始まる青春。
独特な世界観なのに、なぜか次話が気になるのは不思議と「気になる」が文章中に散りばめられているから。
スッと入る情景描写にも注目しつつ、純粋な展開の面白さもかなり目を惹きます!
一話一話のタイトルにもお洒落さがあり、非常にテンポのいい作品になってます!
ぜひご覧ください!
大きな音が苦手な野菊は、学園祭のダンスフロアでユウヒという男の子と出会います。ユウヒは頭がなく、代わりに黒い機械頭を使っています。偶然ユウヒと出会ったと思っている野菊だけど、彼が野菊に声をかけたのはある秘密があったのです……。
★
体の一部を機械が補うことができる近未来な世界観に散りばめられたのは、まるで海外ドラマのような鮮やかなハイスクールの生徒たちの日常。
クラブ。
DJ。
ミュージック。
学園での暮らし。
どれもが素敵なんです!
その中で語られるストーリーは、高校生の野菊とユウヒの出会いと苦しい過去。
重たくなりそうなテーマなのにさわやかな印象を受けたのは、鮮やかな舞台設定と登場人物達のキャラクターがとても素敵だから。
もう、第一話で心を掴まれます!小説でクラブミュージックを感じられるなんて思ってもいませんでした。心地良くてずっとひたっていたいくらい、この作品が大好きです。
たくさんの人に読んでほしい作品です。
さあみなさん行ってみませんか?ダンスフロアへ!
ぜひ感じてほしいです!
体を揺らす音楽を、野菊とユウヒの物語を……!
機械頭のユウヒと主人公野菊が出会ったのは、学園祭の体育館——ダンスフロア。
野菊はその日を境にユウヒの存在にだんだんと惹かれていくのですが、二人を結ぶ縁には秘密があって——
この作品はまるで洋画を鑑賞しているような錯覚に陥ります。洋書を翻訳したような独特な表現描写には思わずため息が漏れるほど完成されており、ページを捲る指が止まりません。
そしてこの物語に登場するキャラクターたち。一昔前の『機械頭』を使い続けるユウヒ、誰にも言えない過去を持つ野菊、そして彼女を支えるルームメイトたち。派手でイケメン、住む世界の違う人間のはずなのに何故かユウヒを気にかけるクリストファーなどなど。
扱うテーマは重たいものの、この魅力的なキャラクターたちが読者を退屈させることは決してありません。見事と言わざるを得ない伏線回収にはあっと驚かされること間違いなし!
技術の進歩により、機械の義体が一般的な世界。そんなちょっと未来の世界のボーイミーツガールストーリー! クラブミュージックに彩られた鮮やかなラストをぜひみなさんもご覧ください!