第61話 俺の彼女と幼馴染が修羅場すぎる件……

「それを言うなら私は幼馴染ね。一緒にご飯を食べて、一緒にお風呂に入る関係かな」


「そんなこと言ってお風呂に入ってたのは昔の話なんでしょ? 中2の時までだって言ってたしー」


 春香が勝ち誇ったように言った。


 でも、やばい――!


 俺の本能が迫りくる危険を察知していた。

 これはマズい、この話は早く終わらせないといけないと激しく本能が訴えかけてくる――!


「そうね、最後に一緒に入ったのは数日前かしら?」


 ああぁぁ、間に合わなかった……。


「ほらね、でしょう? ……って、はい? えっと千夏、今、なんて?」

 春香が目をぱちくりさせた。


「数日前に航平と一緒にお風呂に入ったって、そう言ったんだけど?」


「すうじつまえ……?」

 春香が俺を見た。

 

「いやまぁその、色々あってな……?」

「色々って……?」


「ち、千夏がな? 勝手に風呂場に入ってきたんだよ、勝手に。なっ、そうだよな、千夏?」


「そうね、勝手に入って勝手に湯船につかって、勝手に身体の洗いっこをしただけよ。幼馴染だからね」


「か、かかか身体の洗いっこっこっこっこけー!?」

 春香が朝起きたばかりで元気が有り余っているニワトリみたいな声をあげた。


「背中とか、あとは前もちょっと洗ってあげたわね」


「前も!? こ、ここここーへい?」

 春香が俺を見た。


「それはその、話の流れでつい、な……? それにあれは一応その、まだ春香と付き合う前の話で――」


「こ、こ、こーへいの馬鹿ぁ! 知らないもん!」


 春香は言い訳する俺の腕を放り出すようにリリースすると、一人で先に先にと歩いていってしまう──!


「ちょっと春香、誤解なんだよ! 待って――」

 俺は当然、春香を呼び止めようとしたんだけど、


「春香は航平のことは知らないんだって。じゃあちょうどいいわね、私と一緒に学校に行きましょ?」


 千夏は俺の腕をガッチリロックしたまま、離そうとしないんだ。


 そしてそれを聞いた春香が、速攻で回れ右をして戻ってきた。


「っ! わたしが一緒に行くんだもん! こーへいと一緒に行くんだもん! 彼女なんだもん!」


「航平は私と一緒に行くわよね? 幼馴染の私と一緒に」

「こーへいはわたしと行くよね! 彼女のわたしと一緒に!」


「えっと、その……」


「航平?」

「こーへい!」


 2人の殺気だった視線に見つめられて──、


「あ、間をとって今日は3人で行くとか……みたいな?」


 ……はい、すみません。

 俺は日和ひよってしまいました。


 でもさ?


 春香のことはすごくすごく大事なんだけど。

 だからって千夏のことが全く大事じゃなくなったわけではないんだよ。


 千夏は俺にとってこれまでも、そしてこれからもずっと大切な幼馴染なんだから──。


「私はそれで構わないよ」

「わたしは構うし! 構いまくりだし! わたし彼女だし!」


「だから彼女なんてただの自称の肩書なんだってば。あ、ほら、それにそんなこと言ってていいの? もうこんな時間だよ? いい加減に学校行かないと遅刻しちゃうんじゃないかな?」


 千夏が向けてきたスマホを見ると、


「げっ!?」

 このままちんたらしてると遅刻するぞ。


「わわっ、もうこんな時間!? 早くいかないと遅刻しちゃうじゃん! じゃ、じゃあ! 特別の特別で! 今日だけ一緒に行ってもいいよ。でも今日だけなんだからね!」


「あら、ありがとう春香、優しいわね」


「でも今日だけなんだからね!? 特別の特別なんだからね?」


「はいはい、分かってるわ。ちゃんと前向きに考えておくから」

 ああこれ後で絶対に、考えたけど却下しましたって言う気だ……。


 だけどそんなことを言いながらも、千夏はすっと俺の手を離したのだった。

 空気を読んで引いてくれたみたい。


 俺はホッと一安心する。


「ま、航平のことはしばらく預けておくわ、自称彼女さんにね」


 でも、イチイチそういう不必要なあおりをかまさなくてもいいんだからね……?


「自称じゃないもん!」


「ね、航平。自称彼女さんに飽きたら、いつでも私のところに戻ってきてね」


「うがー! 飽きないもん! こーへいはわたしにゾッコンだもん!」


 間に俺を挟んで、俺の彼女と幼馴染が激しく火花を散らし合う。



 俺の――俺たちの青春は、始まったばかりだった。


 


「幼馴染に振られて子犬を助けたら、クラスで人気の美少女が彼女になった。」


 ~完(続きます)~



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お読みいただきありがとうございました。

ここまでが書籍版・第2巻までの部分となります。


この後ですが、本編の続きは大きく飛んで

↓からスタートします。


第62話 カレシカノジョの事情

https://kakuyomu.jp/works/1177354054896730213/episodes/1177354055172682912


なにとぞよろしくお願いいたします😊✨


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 60話10万字を越える長編をお読みいただき、誠にありがとうございました!


 温かい応援のおかげで…………なんと!


「第1回 一二三書房WEB小説大賞」にて《銀賞》を受賞し、


「「「「書籍化」」」」


 が決定しました!!(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾キャッホウ!!


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『実質同居の幼馴染』(一二三小説大賞 《銀賞》受賞!)🌸ほぼ公式🌸広報アカウント

https://twitter.com/Haruka_Kouhei


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 また気に入っていただけましたら、ブックマークと☆☆☆(評価)をいただけましたら嬉しく思います!


 書籍版もどうかよろしくお願いいたします!(>_<)

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