第四章

過去の一幕——とある冒険者の敗北——

 負けた。

 俺は止めたんだ。だが、どうしようもなかったんだ。


 所詮パーティは人の集まり、リーダーに実権があるとはいえ限界はある。全員の和が乱れ切っちゃ話にならねぇ。


 時には強権を使わなけりゃならん時もあるし、逆にメンバーに合わせてやらなきゃならん時もある。

 そうしなかったら、どのみちバラバラになっちまう時があるんだ。



 だがよ、それで全滅しちまえば一緒だろ?



 必死に、さっきまで死に物狂いで戦ってたって言うのに……今度は逃げるしかない。ひたすら足を前に、死にたくないという渇望を糧に、すでに限界を迎えた身体に鞭打って逃げ続ける。


 情けねぇ……

 涙も鼻水も止められねぇ。


 それでも本能が『逃げろ』と急かし、俺はそれにただ従うしかない。



 だが、逃げて……逃げ切ってどうすんだ?



 唐突に、その疑問が頭に響いた。

 家族ともいえるパーティを失い、帰るべき家ももうない。


 生き残って……どうするんだ?


 あれほどまでに必死に動かしていたはずの足、それが……止まった。


 そして、それは、あった。

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