第112話:お着換えタイム 靴下&スカート編

 ベッドに腰かける楓さんを前にして俺は生唾を飲み込む。彼女に大人しく休んでいてもらうためには俺が制服からパジャマにドレスチェンジをしなければいけなくなった。ゲームならボタン一つで完了するが現実ではそうもいかない。


「勇也君……早くお願いします……」


 頬を赤く染め、愁いを帯びた声で懇願してくる楓さん。伸ばした足をもじもじとさせているのが何だか艶めかしく見える。うん、これ以上黙って何もしなかったら理性が蒸発してしまう。俺は覚悟を決めて作業に取り掛かる。


「そ、それじゃ……始めるね」


 我ながら震える声で宣言してからまずは足元のハイソックスに手をかける。適度な肉付きの太ももはマッサージをしてあげたくなるがその欲をぐっと堪えてゆっくりと下ろしていくと新雪のような美脚が顔を覗かせる。いつ見ても綺麗だ。


「ゆ、勇也君……なんだか目がエッチです……」


 口元を抑えながら恥ずかしそうに言う楓さん。好きな人を着替えさせるなんてことは初めてだから仕方ないだろう!? そもそも靴下を脱がした瞬間に楓さんが「あっ……」って変な声を出すからいけないんだぞ!


「楓さんも俺の立場になったらきっとわかるよ。思っている以上に緊張するんだからね、これ」


 昂ぶる気持ちを落ち着かせるように俺は大きく深呼吸をしてから次なる部位へ。それに取り掛かる前に楓さんには足だけで布団の中に入ってもらう。その理由は一つ。これから着手するのはスカートだからだ。


「えぇ……スカートを脱がすためにわざわざお布団の中に入らなくてもいいじゃないですかぁ」


 そうしないと俺が恥ずかしいんだよ! スカートを脱がすってことはあれだろう、楓さんを下着姿にするってことだろう!? スラリとした新雪の美脚、頬ずりしたくなる太ももだけでも理性が蒸発するのに下着まで見せられたら―――


「看病どころじゃなくなるから勘弁してくれ……」


 頬に熱を感じながら俺は言った。だがそんな俺を見て楓さんはニヘヘと笑った。まずい、あれはろくでもないことを思いついた時に見せる顔だ。


「なるほどぉ……勇也君は私の下着姿を見たら看病どころじゃなくなるんですね。フフッ、それじゃ……んっしょ」


 スルスルと衣擦れの音が布団の下から聞こえた。何をしているのか理解した時には楓さんの手には脱ぎたてのスカートが握られていた。そして俺がかけてあげた布団からすぅっと足を引き抜いた。


「フフッ。これで勇也君の手間が一つ省けましたね」


 首をコテッと傾ける楓さんは妖しく微笑んでいた。傷一つない綺麗な生足を目の前にして俺はごくりとつばを飲み込む。そして今日の下着はお気に入りの赤か。花柄のレースがあしらわれていて可愛いんだよね。じゃなくて!


「は、早くパジャマを履かせてください……私だって恥ずかしくないわけではないんですよ?」


 いや、それならなんで布団から足を出したのかな!? なんてツッコミを普段なら入れるのだが今の俺にそんな余裕はない。ぼーとする頭でベッドの上に乗り。ふらふらと楓さんに近づく。


 日々のトレーニングとケアによって適度な弾力とスベスベした絹のような触り心地の足を軽く持ち上げてパジャマのズボンを履かせていく。呼吸をするのを忘れるほど緊張しながら震える手で何とか無事に履かせることが出来た。任務を終えた時、俺の息は絶え絶えで心なしか心臓の鼓動も早くなっていた。


「ありがとうございます、勇也君。それじゃ今度は……こっちですね」


 シュルリと胸元のリボンを解いて第一ボタンを外した。たったそれだけのわずかな動作なのにとても色っぽくてドキッとした。一段と心臓が昂る。


「知っていると思いますが私は寝るときは着けない派なので、その辺りもお願いしますね?」


 お願いされても困るんだけど!? というか楓さん、絶対に俺の反応を見て楽しんでいるよね!? 


「そんなことないですよぉ? 私は勇也君にお着替え手伝って欲しいだけでーす」


 ひゅーひゅー口笛を吹くってことはそういうことだな! ちくしょう、俺の純情を弄んだなっ! それならここからは反撃させてもらうからな!


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