第二章 ノリと勢いも大切ですよね

1.アラサー男の夜配信

「こんばんは~。皆さん、今日も来ていただいてありがとうございます。今日も仕事で疲れました~」


 愚痴ともぼやきともとれる挨拶がだいぶ定着した。定期で配信をしているわけではないが、仲の良い人たちが配信していない時は隙間を埋めるように配信をするようになった。常連になってくれるリスナーさんも増えて、プライベートな時間が充実してきた。


いちご

「お疲れ様です」


ぴゑんマン

「ボクも疲れたよ~って言っても一日PCに張り付いてただけなんだけどねっ」


レミア

「今日も学校で先生にごちゃごちゃ言われて最悪だったぁ」


「お疲れですね~。今日は僕は派遣の女の子にお菓子をいただいて、それだけでちょっと頑張ることができましたよ~」


呉井心

「おおっ! いいね~、只野さんにも春が来るのか…!?」


ねぐせ君

「只野さんくらいしっかりしてる人なら彼女なんてすぐできちゃいますね!」


古美

「いやいや、只野さんのことだからもう彼女さんがいらっしゃるのでは?」


「それが募集中なんですよ~。いい子いいないですかね~」


児島

「只野はいいやつ。オレがもらってやろうか」


グングンぐると

「児島さんは男前すぎてちょっと…」


いちご

「えっ、児島さんに気に入られるなんてちょっとズルいです」


「嬉しいですね~。こんな僕にそんなふうに言ってくれるなんて」


児島

「ぐると許すまじ」


古美

「かっこいい女性像ですよね、児島さんは」


ぴゑんマン

「派遣の子、カワイイですカ? 只野さんの周りはカワイイ女の子が多そうだって、ボクのカンが囁いてます~」


「派遣の子は可愛いんですけど、やっぱり仕事なんでアレですよね」


 川相さんの顔を思い浮かべる。可愛いなとは思うけれど、彼女にしたいかと言われるとよく分からない。


レミア

「レミアだって可愛いよ」


ねぐせ君

「他にもいる系ですか~?」


「うーん。どうかな。あ、毎日寄るコンビニのレジの女の子は良い感じです」


呉井心

「それもっと詳しく!」


古美

「ちょっとワクワクしてきましたね」


「詳しくって言われても…。毎日コンビニ弁当買って帰ってくるんですけど、そのいつも寄るコンビニの店員さんって固定の人で。その中に一人だけいる女の子がなかなかなんですよね」


児島

「なんだ、もう意中の相手が居るのか」


ぴゑんマン

「これはいくっきゃないね!」


グングンぐると

「ああー只野さん一抜けか…」


「いや待ってください。まだそうと決まった訳じゃないじゃないですか。それにそんな勇気、僕にあると思います?」


呉井心

「只野さんはやればできる男だ!!!」


いちご

「真面目で誠実な感じを出していけばきっといい感じですよ」


レミア

「只野さんは話も面白いしきっと大丈夫だとおもう」


「いやいやいやいや。僕の話聞いてました?」


呉井心

「次回の配信では何か進展があるだろうなぁ!」


ぴゑんマン

「祭りだー!」


児島

「私を差し置いたんだから、土産話くらいは持ってきてもらわないとな」


いちご

「そうだそうだー!w」


「まじですか…」


ねぐせ君

「これはドキがムネムネの予感~!」


古美

「楽しみにしていますね」


 今日の配信では俺の恋の行方について、常連さんたちが勝手に盛り上がるお祭り騒ぎだった。今までだったらなんとも思わなかったことだが、何かが変われるような気がしないでもない。


 ネタとして期待を裏切りたくない気持ちと、現実の自分とのギャップにむずむずした。

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