いつかの星を掴むのなら

紫蘭

第1話君の言葉はすべて嘘

僕のことを話そうか?

僕はね、いつも君のことばかりを思ってただその日を絵筆を持ったまま上の空で過ごしているだけのクズだ。

でもね君のことを想うだけで一日幸せなんだ。

僕のことを君は気持ち悪いと罵るけど、それはきっと君の嘘だ。

本当は僕の愛に気が付いていて、恥ずかしいからそういう風に僕を罵るんだろう?

僕にはわかっているんだ、君がどうしようもないほどの恥ずかしがりだって。

僕はそんな君の嘘を耳にするたびに全身に鳥肌が立つ。

いつまでそんなに見てるんだと君は怒るけど、

そんなの決まってるじゃないか。

君がとても綺麗だから僕は目を逸らすことができない。

初めて君を見た時君は泣いていたね。

君の価値を理解できない糞野郎から僕は君を守ってあげたんだ。

僕は君のためならいつ死んでも構わない。

本当だ。

君もそうだろう?

僕のことを愛しているだろう?

分かってる。

僕は君が傍にいるだけでクズからスーパーヒーローに変身できる。

君は素敵だ、最高だ、

どこかの三流男が使いそうな言葉で表せば君は太陽だ。

僕はそうだね、君が思うほどモテなくはないんだ、

どちらかといえばモテるほうだよ、それもきっと君はわかってるよね。

でも僕に言い寄ってくる女たちは皆退屈な女ばかりだ。

僕の持っているものに集ってくるだけの、鳶みたいな女たちだ。

僕が何を持っているかって?

それもきっと君は分かってるはずだけど、今更そんなことを聞きたいのかい?

そうだね、僕は芸術家だ。

君のことを描き続けている。

僕は美しいものが好きだ。

美しくないものなんてこの世に存在しうる意味がないとまで思うほどに美しいものに執着がある男だ。

君は自分を卑下する癖があるけれど、この世に君以上に美しい女はいないよ。

僕が証言しよう。

僕が欲しいのは君だけだ、瑠璃子。

名前まで美しい。

君には青く透き通る海がよく似合う。

その端正な顔立ちに似合わない豊満な曲線、

初めて脱がせた時の僕の興奮は君には理解できるまい。

下半身に血が滾り、脈動が視界を揺らす。

君の瞳は恥じらうように斜め下を見つめたままで僕のほうを見ない。

さっきまでの威勢はどこに行ったのかと思うほど君の瞳は潤んでいた。

おおっと、急に芸術家っぽく熱く語ってしまった。

こんな風に僕を夢中にさせるなんてなんて罪な女なんだ、君は。

君がいない時間も僕は

君を想ってつい自分の下半身に手が伸びて

絵筆を時々置いてしまう。

どくどくと波打つ頸動脈を感じながら白濁の液体を眺めていると

君の白い肌をこの液体で汚してしまいたい衝動に駆られてしまう。

でもだめだ。

とても綺麗な君を僕の精液で汚すなんてことは。


だから僕は君を殺そうと思ったんだ。

冗談はやめてくれ?

それもきっと嘘だ。

僕に殺されるかと思うとゾクゾクする癖に。

ああ、鳥肌が立ってきたよ、瑠璃子。

君はなんて美しいんだ。

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