684.ぴよ体幹
もちろんステラの身体能力は唯一無二の次元にある。
しゅぱんしゅぱん、しゅぱぱぱぱーっ。
軽快に靴音を鳴らしながら油まみれの箱や板をあっという間に駆け抜けていく。
アスレチック、そして特殊油でつるつるするはずなのだが……ステラがその程度で苦労するはずもない。
「とう……っ!」
最後は大ジャンプを華麗に決め、ステラは訓練所のゴールに着地した。
……すごい。
「ウゴ、すごーい!」
「さすかあさまぴよ!」
「だぞだぞー!」
子どもたちと俺が拍手する――ただ俺は着ぐるみのため、ぱふんぱふんという音だが。
「すごいな、全く止まらなかった」
まぁ、ディアもマルコシアスも拍手で音は鳴っていないからな……。ぽふぽふである。
「ありがとうございます……! これも体幹のおかげですっ!」
ぐーっとサムズアップしながらステラが徐々に身体を前に傾けていく。
おおっ、そのまま45度くらいまで前に傾いた……!
そしてすすーっとまた直立に戻っていく。
「やばぴよ。かあさま傾いたぴよ」
「ふふっ、ディアもやってみたらどうですか?」
「ぴよよ?」
促されるまま、作業板の上でディアが身体をぐぐーっと前に傾ける。いや、もふもふなので毛が板に触れているが……おおっ、しかしけっこういいんじゃないか?
ディアの頭の位置がかなり傾いて、斜めになっている!
「で、できてるぴよ!? 意外と斜めぴよよ!」
「完璧なんだぞ! 普段と頭の高さが違うんだぞ!」
マルコシアスがディアの横にきちんと並ぶ。
ふむ、普段とは全然頭の位置が違うのがよくわかる。
「ディアにもまじかるなぼでぃーの力がありますからね。そのくらいの体幹はあります……!」
「ぴよ! 初めて……知ったぴよ!」
なるほど、コカトリス本来の身体能力ということか。確かに重そうな仲間を担いでも、コカトリスがバランスを崩したりすることは一度もなかった。
「さぁ、それでは……エルト様、どうぞっ!」
ごくり……。
きゅむっと訓練所のスタートに俺は立った。
目の前の訓練所は――油できらきら、つるつるしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます