645.ナナボードでゴー!

 砂の精霊も撃破で数が落ち着いてきた。

 砂嵐に突撃するなら今だろう。


 ナナが地面に腹ばいになっていた(ナナとヴィクターの着ぐるみは特殊なヨゴレカットコーティングが施されている)


「さぁ、わたしは準備万端です……!」


 ステラはナナの上にぐっと立ち乗りしていた。


「僕に乗ってるだけじゃないの……?」

「いえ! 微妙な位置取りが大切なのです。理想的な体重移動でナナボードのポテンシャルを引き出さないと行けません。ばびゅーんでは細かい機動は無理でしょう?」

「まぁ、そりゃそうだけど」

「万が一のときは、360度のウルトラ空中大回転で頑張らないといけませんからね」

「ごくっ……」


 ステラの足元のナナが全身をぶるっと震わせた。


「ふむ……困難な任務だが、頑張れよ」


 ヴィクターがぽてぽてとナナボードに近づく。

 両手には薄青の魔力が渦巻いていた。


「一気に射出するぞ。言うまでもないが、空を飛んでいる間にも砂の精霊は生まれてくる。撃ち落とされないように」

「わかりました……!」

「速度は――そうだな、最大速度にするぞ」

「はい! お願いします!」

「僕の三半規管が耐えてくれますように……」


 ヴィクターが魔力をみなぎらせながら、ナナの足部分へと行く。


「では、いくぞ!」


 ヴィクターが大声とともに風の魔力を解き放った。

 突風が吹き、ナナボードが空へと射出される。


「どうにでもなれー!」


 ナナが叫びながらばびゅーんも使う。

 閃光を発しながら、ナナボードはさらに加速して砂嵐へと突っ込んでいった。


「いい感じです!」


 ステラは天才的なボードコントロールでナナボードにしっかり乗っている。魔力と風の勢いに合わせ、微細な調整を加えていた。


 空に上がるにつれて嵐が起こす魔力と風は勢いを増している。砂の精霊も続々と生み出されては落下していた。


「精霊がくるよっ!」

「ナナは飛行に集中してくれて大丈夫です! 攻撃と回避と回転はこちらでやりますので!」

「わ、わかった!」


 落ちてくる精霊をぶっちぎるスピードでナナボードは進む。砂嵐に飛び込むことで核の位置もはっきりとわかってきた。


 大量の精霊が待ち構えているが、問題はない。


「数十秒で中心部に突入です……!」

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