633.塔の下も

「どうかしたのか?」

「ウゴ、地面の下が……ちょっとヘン。魔力がどるぅーてなってる」

「どるぅー……? 魔力が動いているのか?」

「ウゴ、多分……自信ないけど」


 ウッドが遠慮がちに答えると、ヴィクターは羽をぴこぴこさせた。


「いや、気がついたことは何でも言ってくれ。俺のアテはダメそうだしな」


 ヴィクターはウッドの隣に来ると、すすっとうつ伏せになった。

 この着ぐるみで屈み続けるのは大変で、寝転がったほうが楽なのだ。


「ふむふむ……。どれどれ」


 ヴィクターがきゅっぽんと右腕の羽パーツを取り外す。着ぐるみから細く白い腕が出てきた。


 そのままヴィクターは手のひらを石の床に当てて、魔力を探る。


「ふむふむ……」

「ウゴ、どうかな?」


 ヴィクターがきゅぽっと羽のパーツを元に戻す。


「俺には正直よくわからんな。しかし、魔力が動いているのは確かなのか」

「ウゴ、多分……。さっきまで感じなかった」

「ふむ……。色々と謎が多いな。危険はなさそうか?」

「ウゴ、今のところは大丈夫」


 そこでヴィクターは立ち上がり、お腹のポケットからメモ帳を取り出した。


「よし、それじゃ歩きながらウッドの感じ取った周囲の魔力を書き留めようか。時間が経過したり、場所が変わるとまた何かあるかもしれない」

「ウゴ! わかった!」


 それからふたりは塔を歩き回り、昼頃に野営地へと移動した。


 ◇


「ぴよー! おかえりぴよよー!」

「わっふふー。だぞー」


 俺とステラ、砂コカトリスは昼前に野営地へと戻ってきた。


 4つのテントがしっかり張ってあり、真ん中ではレイアとナナが大鍋をぐるぐるかき混ぜている。

 みんなの昼ご飯だな。


「ただいま、問題はなかったか?」

「大丈夫だよ。魔物も全く現れなかった」

「それはなによりです……!」


 砂コカトリスはめざとく大鍋に近寄り、じーっと熱い視線を送っている。


「ぴよっ!」(うまそっ!)

「トマトとサボテンの煮込みらしいぴよ!」

「ぴよ……!」(真っ赤だぜ……!)

「赤いのはトマトぴよね。鍋の中身の半分はトマトぴよね」

「7割はトマトだね。ほぼトマト煮込み」

「ブレないな……」


 そんなことを話しているとウッドとヴィクター兄さんも塔から戻ってきた。


 さて、昼ご飯を食べながら情報のつきあわせをしていこうか。

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