631.壁画を読み解く

「エルト様、これは……」


ステラも砂コカトリスの言わんとしていることを理解したようだ。


「散在してる壁画は1枚に繋がる……パズルみたいにな。実に興味深い視点だ」

「塔が崩壊したときにバラバラになった、と」

「ぴよー!」(そーいうことー!)


砂コカトリスがそりかえってでーんと構えている。


「そう考えると意味がわからない壁画も、納得かもな。俺たちは断片しか見てなかったわけだ」

「ぴよちゃんは何が描いてあるか、わかっているのでしょうか?」

「ぴよよー!」(わからぬー!)

「……自信満々だな」

「わからないそうです……」


砂コカトリスが解き明かしたのは、パズルになっているということまでか。


「でも十分だ。絵を詳細に確認しながら回ろうか」

「はい! そうしましょう!」


砂コカトリスの描いた図を書き留め、また出発する。


その時、砂コカトリスが俺の羽をじっと見つめていた。


「ぴよよ……ぴっよ!」(それじゃ、ご褒美……じゅるり!)


砂コカトリスのくちばしからよだれが……。

この顔はわかりやすい。


俺は着ぐるみの羽に魔力を集中させ、サボテンを生み出した。


「はい、おやつ」

「ぴよー!」(やったー!)

「ふふっ、良かったですね……!」

「ぴよ。ぴよよ……」(いえーい。もっしゃもっしゃ……)


あごの下をステラが撫でると、気持ち良さそうに砂コカトリスが目を細める。


「それを食べ終わったら、もう一度壁画を回ろうか」

「わかりました……!」


というわけで、今度は絵をしっかり書き写しながら壁画を見て回る。


小一時間後……。

俺とステラはちぎったメモをくるくるさせながら、壁画のパズルを解いていた。


「ここがこうで……」

「こちらの線と線が……」

「ぴよー」(ねむねむ……)


砂コカトリスは砂に寝そべっていた。


「こう、か!?」

「そうですね! これで絵が繋がります!」


歩き回って解いたパズル。

俺とステラはハイタッチする。


出来上がった絵は、ちゃんと意味がわかるモノになっていた。


壁画の内容はこうだ。

塔の中部に祭壇型の魔道具があり、魔力を通すと……砂嵐が発生する。


そうとしか読み取れない。

まぁ、あとでヴィクター兄さんにも見てもらうが。


「この壁画は、さしずめ塔のマニュアルということだな」

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