630.壁画

「ぴよよー」(これこれー)


 砂コカトリスがもにもにっと進む。

 俺たちもそこへついて行った。


 近くに寄ってみると、砂コカトリスがピックした理由がはっきりわかる。


「これは……絵が描いてありますね」

「かなり色が剥げているが……」


 案内された壁には、一面にくすんだ絵が描いてあった。風化のせいでかなりボロボロではあるが。


 壁自体もぎざきざ、変な台形になっている。


 しかし所々残った赤色や青色から、かつては華やかな壁画であったことがうかがえた。


「この絵はしかし、何の絵なんだ?」

「うーん……わかりませんね……」


 俺とステラは並んで首を傾げた。

 くすんだ絵は何かを表しているようでもあり、そうでもないようであり……とにかくわからん。


「ぴよよ〜」(あとはこっち〜)


 砂コカトリスがぴよっと先に進んでいく。


「ついていくか」

「そうしましょう」


 とにかく砂コカトリスの記憶と過去の発掘者の記録が頼りだ。午前中はその辺りの確認に回すのが懸命だろう。


 数分後、砂コカトリスについて行った先にはまた壁画があった。今度の壁もボロボロ、三角形になっている。


「これもか。状態は同じくらいだな」

「ええ、やはり意味は読み取れませんね……」

「ぴっぴよ」(あとはこっちにもー)


 砂コカトリスがまた歩き出す。

 今度は10分程度歩いたか。また壁画があった。


 さらに……次々と同じように点在する壁画を案内される。合わせて6枚の壁画がここにはあった。


 全部回るのに小一時間ほど使っただろうか。

 確かに興味深いモノではあったが……。


「どれもくすんでわからなかったな」

「ええ、同じような色使いではありましたが」


 回り終えて、とりあえず位置を地図に記録しておく。後で資料と付き合わせないとな。


 そこで砂コカトリスが砂地へとしゃかみこんだ。


「砂ぴよちゃん? どうかしました?」

「ぴよっぴ」(こっからが大切なんだよー)


 砂コカトリスがキリッとした顔で、砂に絵を描き始める。耳の長いエルフ、どう見てもステラの顔だ。


「ぴよよー」(ここが真ん中でー)


 さらにステラの顔を中心に砂に点を打っていく。


「……これは壁画の位置か?」

「ですね。この地図に記録したのと同じ……」


 しかし砂コカトリスの羽は止まらない。それぞれの壁の形も羽で描いているな。


 最初の台形、次の三角形。どんどん壁の形を砂に描いていく。


「ふむふむ……。今、俺たちが見て回ってきた壁画だな」


 さらに砂にコカトリスの羽でつつーっと壁同士に矢印を……えっ!?


 これは、まさか……。

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