616.戦闘開始

 ガラガラ……!!


 固いものが崩れる音が聞こえる。

 また落雷で崩落したのだろうか……?


 だとしたら、俺たちはどう動けばいいのか。


「どうする? 今、雷が落ちたところに行くか?」

「ああ、そうしてくれ! そこから精霊が入ってきてしまう!」


 カカが両方の羽をわたわた振る。

 それを受けてステラが廊下の先を指差す。


「こっちです……!」

「わかった!」


 ぽよぽよぽよ!!

 俺とナナ、ヴィクター兄さん、カカは着ぐるみなので、可愛らしい足音だ。


 相変わらず廊下は避難する人や兵士っぽい人で混雑していた。それでもカカとヴィクター兄さんが先頭を行くと人波が割れ、スムーズに走っていける。


 やがて人もかなり少なくなってきた。

 ステラが腰からバットを引き抜く。


「そこを左です!」


 T字路を左に曲がる。首の後ろがぞわぞわしてきた。魔力の乱れを感じる。


「そろそろです! 臨戦態勢を!」

「ここじゃあんまり派手なのは使えないね」


 ナナがお腹のポケットをごそごそし始める。


「これはちょっと扱いづらいけど……」


 そういってナナがポケットから取り出したのはマスケット銃のような魔道具だった。


「てってれー。ぱんぱん筒〜」


 ネーミングセンス……!


「なんですか、なかなか良さそうなデザインですね……!」

「魔力を集中して撃ち出すんだよ。シンプルだけど攻撃魔法の代わりになる」

「すごい技術だな……」


 この世界に銃のようなモノはない。火薬はあるが、そのまま爆発させるくらいだな。

 それに比べるとナナの武器は相当進んでいるように見える。


「魔力の調節を間違えるとドカン! だけどね。この着ぐるみなしじゃ、僕も撃てないよ」

「…………」

「ウゴ、危ないんだね……」


 心なしかウッドがちょっとナナと距離を取った。

 危険を察知できるほどウッドも成長したのだ。


「さぁ、そろそろ――この階段の上です!」


 階段に近づくと、ものすごい嵐の音が聞こえてきた。これまでは人の喧騒で聞こえなかったのに……!


 ざーざーとまさに砂が飛び交う音がする。


 そして……ひし形や三角形の砂の塊が宙に浮いている。砂の精霊だ。


 すでに兵士たちが戦っている……!


「えーい!」


 ドッゴォッ!!


 ステラが間髪入れずにボールを投げて、砂の精霊を粉砕した。戦闘開始だ!

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