579.出発

 ヴィクター兄さんは徐々に近づいてくる。

 ディアとマルコシアスはのんびりと空を見上げていた。


「ぴよ。博士ぴよがきたぴよねー」

「来たんだぞー」


 もうすでに慣れっこだな。いいことだ。


 ヴィクター兄さんが空からふよっと降りてくる。


「ふぅ……待たせたな」

「いや、時間通りだ。久し振り」


 挨拶を済ませ、さっそく出発することにする。


「飛ばして行けば夜には着くだろう。それでいいか?」

「大丈夫、そのつもりだ」

「僕もそれでオッケーだよ」


 いつも通りナナ&ステラ&ディア&マルコシアスの組み合わせがひとつ。

 そして俺とウッド、レイア、ヴィクターの組み合わせだな。


「では行ってくる。留守は任せた、よろしくな」

「よろしくお願いしますね……!」

「はいですにゃー!」

「行ってらっしゃいませ!」


 ナールとアナリアに留守番を頼む。

 レイアもアラサー冒険者へ声をかけていた。


「ぴよちゃんをよろしくお願いしますね!」

「……間違ってはいませんが、へい」

「ぶれないにゃ」

「任せてくださいー」


 テテトカがのんびりと答えた。

 ララトマもウッドに手を振っている。


「お気をつけてです!」

「ウゴウゴ、行ってくるね!」


 こうしてみんなにあとを任せ、俺たちは空へと飛び立って行った。


 ぐんぐん村が遠ざかっていく。


「ぴよー! 砂の国へレッツゴーぴよよー!」


 ◇


 ばびゅーん!


 空を南へと駆ける。

 今日はからっといい天気だ。


「ウゴ、南はどんな感じなんだろう?」

「からっとしているらしいが……」


 多分、この着ぐるみを着ていると感じない気がする。


「私のこの帽子も、夏季仕様ですからね。すーすーと風を通しているのです……!」

「年中ぴよ帽子も大変だな……」

「いえいえ、このくらいはなんてことありません!」


 ヴィクターがぴよっと羽を上げる。


「うむ、見上げた心構えだ。夏だからといって、ぴよから逃げるのは良くない」

「エブリデイ、ぴよですよね!」

「お、おう……」


 まぁ、水分は俺の植物魔法でいくらでも取れるしな。


 そのまま空を飛ぶこと、2時間くらい。


 だんだんと植生が変化していった。

 木はまばらに、草は短くなっているように見えたのだ。


「ウゴ、空気が乾いてきたね……! からっとしてる!」

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