566.トロッコに乗り込もう

 そういうやり取りのあと、俺達は魔導トロッコへと乗り込む。


 ディアとマルコシアスも楽しそうだな。

 ぴよわふしている。


「ぴよ。たのしみぴよねー」

「わふー。やっとの完成なんだぞ」

「もっぐ。ふたりとも運転席に来るもぐ?」


 イスカミナの申し出にディアとマルコシアスがばんと身を乗り出した。


「いいぴよ!?」

「面白そうなんだぞ!」

「ぴよ! 行ってもいいぴよ?」

「イスカミナの誘いなら大丈夫だろう」


 多分。そのはずである。

 試運転は何回もしているし、問題はない。

 良い思い出になるだけだ、うん。


 特使の人は和やかにこの様子を眺めている。


「家族想いですなぁ」

「何事も挑戦が大事だからな。何だったら、特使も帰りは運転席を体験されては? 良い土産話になるだろう」

「ははは、それは面白そうですな。ぜひ帰りは運転席を堪能しましょう」


 ステラに抱えられ、ディアとマルコシアスが運転席へと移る。


「よろしくお願いします……!」

「ぴよ! ここが運転席ぴよねー!」

「わふ……! 一番前なんだぞ!」


 ディアとマルコシアスはもう楽しんでいるみたいだな。


「このボタンはなにぴよ?」

「それはヤバいボタンもぐ」

「わふ。こっちのレバーはどうなんだぞ?」

「それは触っちゃいけないレバーもぐ」


 ……大丈夫か。いや、大丈夫だ。

 信じろ……!


「ぴよぴ」(隣いいです?)


 組み立てコカトリスも興味があるのか、魔導トロッコに乗り込む。


( ╹▽╹ )( ╹▽╹ )ぴよ!(いえーい!)


 そんな感じだな。


 レイアが自分の隣の大型シートをぽんぽんと叩く。


「ふふふ、ぴよちゃん達ここにどうぞ」


 コカトリスが座れそうなスペースはもう多くない。

 見事な誘導策だ。やるな、レイア……!


 コカトリスはそんなことは露知らず、ぎゅむっとレイアの隣へと座る。


「ここのボタンを押して、こっちのレバーを引くもぐ」

「なるぴよ……! この通りのレバーはどうぴよ?」

「絶対に触っちゃいけないレバーもぐ」


 ステラが横からこそっと俺につぶやく。


「まさか運転までするとは思っていませんでしたが……」

「ううむ、俺もだな」


 後ろから見ていると、イスカミナが実演するのをディアとマルコシアスがマネている。


 カチャカチャとやっては、ふたりとも頷いている風だった。


「んじゃ、そろそろ出発もぐー!」

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