556.さっぱり貝のスープ

 にんにく、生姜、唐辛子、その他香辛料……をステラは準備していた。


「ぴよ。あたしも何かしたいぴよ」

「ではこのレモン汁を絞ってもらえますか?」

「らじゃぴよ!」


 ディアが渡されたレモンをガラスの絞り機にぎゅーっと押し付ける。

 豊かなレモン果汁が溢れ出てきた。


「ぴよぴよ……。いいぴよね……」

「我も何かしたいんだぞ」

「じゃあ、こちらのお野菜を――」


 そうして本格的に準備をし、夜ご飯の時間になった。


「特製辛味ソース……です!」

「ぴよぴよー! いい匂いぴよね!」

「おいしそうだな……!」


 元より中華(エルフ料理)と水産物の歴史は深い。

 エビチリとかもおいしそうだよな。


 用意された網の上に砂抜きしたホンビノス貝を並べる。


「ウゴ、これで大丈夫かな?」

「砂抜き時間は少し足りないかもだが……大丈夫だろう。さっきもオッケーだったし」

「わふ。そういえば昼と夜で網焼きだけど大丈夫なんだぞ?」

「ウゴ、俺は平気! おいしいし!」

「俺も大丈夫だ。ソースが変われば、こういうのは続いても食べられるんだ」


 それは本当で、湖よりも家のほうが調味料は揃っているからな。

 今回はしかもステラ主導のエルフ風網焼きである。


「スープも作ってみました。味付けは薄めですが……」


 そう言ってステラが出してきたのは、ホンビノス貝とねぎ、ゴマ入りスープだった。


「さっぱりしていいと思うぞ」

「ウゴ、スープもよさそう!」


 網焼きもスタートし、さっそく焼き始める。


 濃厚なソースに漬け込んだ野菜、あとは塩味でレモン果汁と……うむ、この違いがいい。


 じゅーじゅーと野菜が焼き上がってくる。


「湯を通したのもありますから、すぐ食べられますよ……!」

「恵みに感謝ぴよねー!」


 そうしてはふはふと食べ始める。


「わふわふ、うまうまなんだぞ」

「ピリ辛がいいぴよねー!」


 焼けた貝も……うむ、辛味ソースが混ざっておいしそうだ。


「はむっぴよ。ぴよ! これが貝ぴよね!」

「もぐもぐ……旨味が濃厚です! これはいい干し貝柱になりますね」

「わふー。それも楽しみなんだぞ」


 ステラ達もほわほわしている。俺とウッドも違う味で満足だ。


「とっ、スープは……」


 俺はゆっくりホンビノス貝のスープに口をつける。


 うん、おいしい。

 生姜とねぎ、ごまがさっぱり……濃いめのソースを相殺してくれる。


「干し貝柱だと味が変わったりするのかな?」

「身はありませんが……味はそれほど変わらないかと」


 それならと俺は思った。

 干し貝柱で出汁を取って、スープにすれば結構な量で売れるんじゃなかろうか。


「いいぴよね! きっと他の人もおいしくごくごく飲んじゃうぴよよー!」

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