525.雨の湖

 植物魔法で雨からの避難場所を作る。

 大きな葉を生み出しただけだが。


 レイアはその避難場所に座り込んだ。


「さらなる高みを目指すためのザンザス着ぐるみver2.5ですが……まだまだ改良が必要ですね」

「着ぐるみならもうあるんじゃないか?」


 合羽を着込み、ボートに乗る準備をしながら聞く。


「ナナに手伝ってもらったのはありますが――あれは高価すぎますし、メンテナンスも大変なのです」

「ウゴ、やっぱりそうなんだ」

「多機能だとそういうこともあるのか」

「魔力がない人が調整するのは難しいでしょうね……」


 ごぉぉぉ……。

 レイアの着ぐるみから温風が流れてくる。

 うん、乾かしているんだな。


「それにしても雨に出かけなくてもいいにゃん?」

「雨の日も着ないとテストにならないのですよ」

「ウゴ、冒険者ギルドのマスターも大変だね……」


 いや、多分こうした苦労はレイアだけだと思うが……。


「ちなみに今から釣りをするんだが……レイアも来るか?」

「釣りですか……。久し振りに面白そうですね」


 よいしょっとレイアは着ぐるみを脱ぎ始めた。

 各パーツが外されていく――。


 ……ふむ、やはりそうか。


「にゃん……? ぴよ帽子を頭を乗せたまま、着ぐるみを着ていたのにゃん」

「もちろんです……!」


 バラバラになった着ぐるみは休憩所に干されることになった。


 ……絵面はあれだが、乾かすならこのほうがいいからな。


 ◇


 ボートには屋根がついているので、雨でも問題はない。


 ぽつりぽつりと雨の降る中、俺達は湖へと出かける。あわせて5隻のぴよボートだな。


「ウゴ、雨でも釣れるかな?」

「釣り好きな住人の情報だと、ヒットは悪くなるようだが釣れるは釣れるらしいぞ」


 雨だと草だんごの匂いが拡散してしまうから、らしいが。

 だがデータが少ないので、確実なことはわからない。これも調べて結果を積み重ねていくしかないが。


 俺も雨の日に釣りをするのは初めてだ。


「雨の湖も雰囲気があるにゃーん」

「ああ、普段とまるで違うな」


 この辺りはそもそも雨がそんなに降らない。

 ある意味、雨が降り続く今日は貴重である。


 降り続く雨だが、ボートの運航には支障ない。

 風がないのが幸いした。


「そろそろ湖の中心だな」


 ぴよボート5隻が湖の中心に集う。

 いよいよ釣りの時間だ……!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る