551.湖へ
翌日。
今日は休日だ……ステラはぴよシートの仕上げに取り組むらしいが。
「ふぅ……」
ぴよシートに腰掛け、ディアと子犬姿のマルコシアスを膝の上に乗せている。
「満喫しているんだぞ」
「いえ、さらなる高みを目指すための構想中です。
はふ……」
「頬が緩んでるんだぞ」
「ぴよ。でもこのシートはけっこーいいぴよ」
ぺちぺち。肘掛け部分を確かめるディア。
「この部分も凝りたいところですね……」
「ま、まぁ無理のないようにな」
俺はいそいそとバッグに荷物を詰めていた。
「エルト様は今日はどうされるので?」
「ブラウン達に誘われてな。ウッドとちょっと釣りに」
それなりに長い付き合いで気が付いたが、ステラは釣りだけはさほど乗らない。
……多分、ステラは素潜りのほうが早いからあまり楽しめないんだと俺は思っているが。
釣り道具、それと合羽も持っていこうか。
「ウゴ、ちょっとマルデ生物釣ってくる!」
「くむくむ……今日は天気危ないんだぞ」
マルコシアスが窓から空を見る。
この地方では春を過ぎて夏になるまで、一時期雨が増えるらしい。
確かに雲はやや分厚いが……。
「一応、合羽を持っていくから大丈夫だ」
「ウゴウゴ、傘もある!」
「ぴよ、それなら安心ぴよね!」
「気を付けていってらっしゃいませ」
というわけで、今日は釣りだ。
雨が降らないといいが。
ブラウンを始めとしたニャフ族、テテトカと合流して湖に向かう。
「にゃーん。今日は釣り、頑張るにゃーん」
「ぼくも釣りとお昼寝頑張りますー」
◇
湖に着くなり、雨がざーっと降り出した。
天気は無情である。
「にゃにゃーん。負けないにゃ……!」
「ウゴ、がんばるー!」
合羽を着込んだニャフ族はやる気である。
「はわー。雨ですねぇー」
俺も合羽を着込んでいるが、テテトカはそのまま雨に打たれている。
「いいのか? めっちゃ雨が降っているが」
「ぼくたちは頭から水を被りますのでー」
「そうだった……!」
そりゃ雨くらいは気にしないか。
「にゃーん……?」
「どうした、ブラウン?」
「あっちにコカトリスがいますにゃん……?」
雨の向こうをブラウンが指差した。
コカトリス着ぐるみがぽにぽにと歩いている。
ナナの着ぐるみに似ているが、ちょっと違う。
「ふぅ、ふぅ……!」
「この声は――レイアか?」
俺が声をかけると、レイアがぴっと羽でサムズアップした。でも苦しそうな声を出しているな。
「性能テストに来たら、このザマです……! 雨がにじんできます!」
……うん、それはヤバいな。
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