535.トロッコの中身を

 カミーユ達が帰って、数日。


 ザンザスの鍛冶ギルドの何人かが住人希望としてやってきた。

 ラビット族とドワーフの皆さんだな。

 ……ラビット族のほうが多いが。


 今の鍛冶仕事で大きなのはやはり魔導トロッコか。

 イスカミナの工房で話をする。


「もぐ。魔導トロッコのお手伝いをしてもらいますもぐ!」

「そうか、スピードアップが見込めるな」


 工房には魔導トロッコの本体が置いてある。

 イスカミナが台に乗りながら、ガチャガチャと調整していた。


「そろそろ内部は出来上がりですもぐ。外装に取り掛かりますもぐ」

「いよいよか……」


 感慨深い。

 この魔導トロッコは、ヒールベリーの村で一番時間のかかる事業だからな。


 それもついに……!


「もぐ! 住人以外も乗る、観光用としても……だとデザインは慎重に決めないとですもぐ!」

「……コカトリスなのは決まりなんだよな?」


 俺の言葉にイスカミナが顔を上げる。


「きっと多分、こだわる人はこだわりますもぐ。私は機能が満たせれば、それなりに満足するタイプですもぐ」

「そうだな……」

「乗り心地も『ぴよみ』を追求したりすると、かなりハードルは高いですもぐ。でも、そのほうがいいかもですしもぐ」


 その通りだ。

 座り心地とかはこれからだからな。


「ありがとう、そのまま作業を続けてくれ」

「わかりましたもっぐー!」


 ◇


 それからひと仕事を終えて俺は家へと帰ってきた。

 家族にさっきのイスカミナの話をする。


 ステラがすごい食いついてきた。


「ほうほう……! ついに装飾部分ですね」

「ぴよ! 見た目は大切ぴよね」

「わふー。座り心地も大切なんだぞ」

「ウゴ、たしかに……座席が固くて冷たいと悲しいかも」

「それほど長時間の乗車にはならないはずだが、座り心地は考えないとな。……でもそれほど数はいらないのか」


 とりあえず座席数分作ればいい。

 予備はあとでも構わないだろうし。


 そうなると――素材からこだわりたい。


「ウゴ、どうしたの?」

「ウッドのマルデコットンはどうかと思ってな。いや、もちろんかなりの加工は必要だろうが」

「いいですね! 耐久性も色合いもありますし」

「ぴよ! 刺繍もできるぴよよ!」

「柄があるのはいいんだぞ」


 その話にステラはすごく乗り気になった。


「でしたら、マルデコットンはぜひお任せください!」


領地情報


 地名:ヒールベリーの村

 野球チーム名:ヴィレッジ・コカトニア

 特別施設:冒険者ギルド、大樹の塔(土風呂付き)、地下広場の宿、コカトリス大浴場、コカトリスボート係留所、たくさんの地下広場、ため池、入浴の塔

 領民:+6(鍛冶屋の皆さん)

 総人口:269

 観光レベル:B(土風呂、幻想的な地下空間、エルフ料理のレストラン、池と堤防、入浴の塔)

 漁業レベル:B(レインボーフィッシュ飼育、鱗の出し汁、マルデホタテ貝)

 牧場レベル:B(コカトリス姉妹、目の光るコカトリス、ヒナコカトリス、海コカトリス)

 魔王レベル:D(悪魔マルわんちゃん、赤い超高速)

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