454.ダンジョンの空

 星クラゲを片付けた俺達は移動の準備をする。


「……ぎゅぎゅっと」


 ステラがロープで、コカトリス達と自分をくくり付けていた。

 これでコカトリスを担いでステラは空を飛ぶらしい。


「ぴよぴよ」(並んでー、並んでー)

「ぴよよ」(空を飛ぶのさー)

「……大丈夫か?」

「エルぴよちゃんのロープは丈夫ですし、心配はないかと……!」


 いや、心配なのはコカトリスを担いで空を飛ぶことのほうなんだが……。


「やはりSランクの冒険者には、根本的なパワーが必要ですわ……!」

「いや、そんなわけはないけど」


 ジェシカにナナが突っ込む。


「でもナナも凄いパワーですわよね? 着ぐるみをずっと着てますし……」

「これはヴァンパイアだし」


 ぴこぴこと羽を動かすナナ。


「でもその全身着ぐるみ……それなりに重いと思いますわ」

「…………」


 そこに気が付くとは……。

 魔力でアシストしているが、この着ぐるみはそれなりに重装備である。

 常に魔力を流し続ければ快適だが、魔力が尽きると普通の着ぐるみ。重い。


「まぁ、筋力はそれなりに必要だな。俺も腹筋背筋は鍛えてる」


 ヴィクターが頷いている。


 ……おう。兄はナチュラルに着ぐるみを着ているからな。


「エルぴよもそうだろう? でなければ、この着ぐるみは少々厳しいだろうからな」


 ◇


 ふよふよ……。

 準備が終わり、ヴィクターの魔法で俺達は空に浮き上がった。


「ウゴウゴ、岩山……! 本当に陸の上!」

「上から見るとまた違うな……」


 高さからすると……30メートルくらいだろうか。

 岩山の向こうに緑のジャングルが見えた。

 俺達が入ってきたジャングルだろう。


 他にも見渡すと砂漠や沼がある。

 本当に色々な地形のミックスだな。

 この世界の本で読んで知っているが、実際に見ると不思議というほかない。


「空には天井があるんだとか……」

「ウゴ、この空は作り物なんでしょ? 凄い!」

「ダンジョンは広いように見えますが、地平線や空は見せかけですからね。実際は見えるほどには広くありません」


 みっちりしたコカトリスを担いで、ステラが言う。


「ぴよぴ……?」(この人、やっぱり何か凄くない……?)

「ぴよぴよ」(とってもぱわふる)

「ぴよちゃん達も空を楽しんでいるようですね」

「ぴよ……?」(やはり何か、人間さんとは違う……?)

「ぴよっぴ?」(人間さんの限界超え?)

「ぴよ……」(あり得る……)


 ……?

 コカトリスのぴよぴよに、なぜか疑問符があるように感じるが……。


「とりあえず異常なし。まっすぐ前に進むぞ」

「わかった」


 岩山には死角が多い。

 とりあえず見渡す限り、星クラゲはいないようだが……。


 しかしこのダンジョンのどこか、ボスやダンジョン化の原因がある。


 ゆっくりと進んでいこう。

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