419.ぴよっと会議

 着ぐるみを着た俺とステラはクロウズとともに会議室へと向かう。


 ヴィクターは一時帰宅したらしく、残っているのは

 ルイーゼとレイア、ナナ、ジェシカだけらしい。


 その言葉のとおり、会議室に入ると閑散としていた。


 円卓のテーブルに地図がいくつも貼り付けてある。

 つややかな木材で作られた部屋でかなりの高級感だ。


「……来る途中で聞いたが、ぴよぴよ大作戦だとかをやるとか……」

「なかなかのネーミングセンスですね……!」


 ステラはすっかり乗り気である。

 まだどういう作戦かも聞いていないのだけど。


「一応、すでにこちらで検討はした。おおむね問題ないって感じだな」

「私の知識に照らしても大丈夫だと思いますわ」


 ルイーゼとジェシカが軽く頷きあう。


「急突貫なんで細かな部分はやりながらだけど、兄貴も協力するとさ。あとは……そちら次第だ」

「わかった……。中身を聞かせてくれ」


 レイアがきびきびと地図を広げて指差す。


「はい! このぴよぴよ大作戦というのは――」


 ◇


 ぴよぴよ大作戦。


 名前はアレかもだけど、作戦としては理に適っていそうだった。


「海コカトリスや着ぐるみの方を先導にして、星クラゲの分布を調べます。星クラゲの群れを見つけたら引き寄せて網にかけ――海面で討ち取ります。これを繰り返しながらボス個体を発見、駆逐します」

「星クラゲは網にかければ……そんなに簡単に行くのですかな」


 不安そうなクロウズにジェシカが補足する。


「星クラゲの毒は厄介ですが、力はありません。漁師用の網で十分対処できます。万が一の解毒用のポーションも……エルト様で用意できるかと」

「ああ、それは問題ない」


 植物魔法で原料は作れるからな。

 俺もポーションは作れるし。


「星クラゲは魔力に引き寄せられます。毒の効かないコカトリス達は、偵察用にも完璧です」


 ルイーゼがふんふんと頷く。


「言葉の壁はあの小さなコカトリスに任せる、という感じだな。リヴァイアサンで実績はある、効率的じゃねーか」

「あとは僕達の着ぐるみなら毒の触手は通さない。星クラゲのサイズが大きくなるとアレだけど」

「海面に引き上げた星クラゲを討ち取る手はずは冒険者にお任せを。これだけの兵と船があればかなりの速度でこなせます」


 レイアとジェシカは船団の指揮に集中、ということか。


「うちとしては今のところ他にいい知恵もない。闇雲にやるくらいなら、この作戦でもいいと思ってる。だけどひとつだけ問題がある」

「我々、ヒールベリーの村の協力か」

「コカトリスの連絡役がいるかどうかで、効率はまるで違うだろうよ」


 ルイーゼの目は、いくぶんか楽しんでいるようだな。不確定要素が出たことで火が付いたのか。

 そういう性格らしい。


「わかった。コカトリスはうちらで説得しよう」

「対価は出せねーがな」

「構わない。その代わり、我々も長期間村を空けることはできない」


 俺の言葉にルイーゼが目を細め、かすかに頷いた。


「あたし達の動きが鈍かったら、途中で帰るってか。言うねぇ」

「……全力を尽くす必要がある。お互いに。そういうことだ」


 ルイーゼが俺に近付き、手を差し出してくる。

 どうやら俺の答えは合格点だったようだ。表情が和らいでいる。


「あいよ。それでいいさ」


 俺はもふっとハンドで、ルイーゼと握手をした。

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