411.仕切り直し

 一方、ヒールベリーの村。


 コカトリスが地面に横になり、ほふく前進をしていた。マジカルな毛並みなので汚れることはない。


 これもコカトリスのダイエットのひとつである。

 あるぴよは海に行き、あるぴよはほふく前進でエクササイズするのであった。


 そんなコカトリスの上にイスカミナがうつ伏せに抱きついている。

 コカトリスもイスカミナの毛並みを満喫しているので、気持ち良さそうだ。

 ふにゃーと半分眠そうにしている。


「ぴよぴよ……」(なかなかの毛並み……)

「もぐ……癒やされるもぐ」

「ぴよっぴ……ぴよぴ」(寝たらたぷる……まだ運動が足りないのだ)


 アナリアがコカトリスの頭を撫でながら、イスカミナへと話しかける。


「いいですね、これ……かわいい」


 コカトリスとイスカミナのセット。

 もこもこな組み合わせである。


「私もかわいいもぐ?」

「かわいいですよー! ぴよ達と合わせてにばいかわいいです!」

「ありがともぐー!」


 きゃっきゃっと遊んでいると、テテトカがぽてぽてと通りがかる。


「盛り上がってますねー」

「これがなかなか気持ちいいもぐー」

「コカトリスに抱きつくの、いいですよね……」

「なるほどー。ふむふむ……たしかにいいかもしれませんねー」


 コカトリスはうにょうにょと微速前進をしている。


「ぴよっぴー」(たぷよ、燃えろー)

「この子もダイエットに目覚めてるので、重しがあったほうがいいですよー」

「……重し?」

「初耳もぐ」

「ちょっとたぷり気味ですからねー。軽く運動したほうがいいんですー」

「ダイエットに目覚める子が多いもぐね……」

「ここのご飯は美味しいですからね……」


 テテトカがコカトリスの頭を撫でながら、広場を指差す。


「そうですー。んじゃ、運動を続けましょー」

「ぴよー!」(れっつ、ほふくー!)


 ◇


 海から戻って事情を説明すると、ルイーゼは額に手を当てた。


「星クラゲが大発生……!? なんだか変な話になってきたな」

「リヴァイアサンもいたけどね。こちらも様子は変だった。襲いかかっては来なかったし」

「ああ、5体確認したが……すぐに退散した」


 ちなみにこの着ぐるみには速乾機能が付いている。

 魔力を流すと表面の水気が飛ぶのだ。


 ぶぉぉぉ……。


 まるでドライヤーのような温風と音が響き渡る。

 俺とナナとヴィクターの3体分である。


 甲板には捕まえた星クラゲが並べられていた。


 マスクを外したクロウズがルイーゼに進言する。


「ルイーゼ様、情報を整理する必要があるかと」

「……リヴァイアサンを深追いするな、と」


 ぶぉぉと温風を出しながら、ヴィクターもルイーゼに進言する。


「相手が星クラゲなら作戦の見直しが必要だ。毒をどうするか考えなければならない」

「…………」


 星クラゲについては、俺もゲームでの知識がある。

 確かに星クラゲは毒が強烈だ。今日の装備はリヴァイアサン対策が主で、状態異常の対策はあまりしていない。


 俺もルイーゼへ、


「最終的な目標は航路の安全確保だと思うが」


 そう言うとルイーゼがため息をつく。


「わかった。海の上でうだうだ考えても仕方ねぇ。一旦、港に戻るぞ!」


 俺の懸念は毒だけではない。


 星クラゲもいわゆる群れを形成する魔物であるが……つまりフラワーアーチャーのように、巨大な個体がいる魔物なのである。

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