380.準備と予習

 大樹の塔。

 ララトマとテテトカは、討伐に持っていく荷物の用意をしていた。


 よいしょっとララトマが植木鉢を持ってくる。


「まずは植木鉢です! どうでしょう!?」

「必須だねー」


 うんうんとテテトカが頷く。

 この植木鉢はララトマの予備品である。


 次に持ってきたのは、草だんごの材料一式である。


「草だんごの材料は――できるだけ多くです! ぴよちゃんもいますし!」

「だねー。ご飯用、おやつ用、作っている時に食べる用、コカトリス用の分がいるからねー」


 テテトカも合わせて草だんごの材料を包んでいく。

 それを見たテテトカが喉を鳴らした。


「じゅるり……」

「ダメですよ、テテトカお姉ちゃん!? これは持っていくやつですから!」

「わかってる、わかってる」


 あとはー、とテテトカが荷物置き場をごそごそとする。


「これも持ってく?」

「……いいんですか?」


 テテトカが持っているのは神聖なじょうろだ。

 これも予備で未使用なので、ピカピカであった。


「旅先でウッドに水をかけてもらいなよー」

「お姉ちゃん……!!」


 ララトマがテテトカに抱きつく。


「よしよしー」

「あっちでも頑張るです!」

「無理はしないようにねー。あっ、そうだ! あと……服もね」

「そうでした! それもありました!」


 ドリアードの服は自作で、土汚れしないマジカルな服である。

 ほとんど同じデザインだが、これも予備はちゃんとある。


「よし……! とりあえずこれでオッケーです!」


 ◇


 冒険者ギルドからの帰り。

 ぽかぽか暖かく、歩いているだけで少し眠気がする。


 でも俺も準備をしなくちゃな……。


「結構な大荷物になりそうだな」

「ナナもおりますが、持っていくものは選ばないと行けませんね」

「その辺り、旅慣れしてるステラが頼りだ……」

「はい……! お任せください!」


 家に帰るとディア達はお勉強していた。

 リビングに大きな本を広げて皆で読んでいる。


「何を読んでいるんだ?」

「海の本ぴよ!」

「これから行くから、予習だぞ」

「ウゴウゴ、ずいぶんこことは違うんだね……!」

「勉強熱心ですね……! どれどれ……」

「俺も行ったことはないからな。一緒に勉強しよう」


 前世の記憶は薄ぼんやりあるが……多分、前世の俺は海には頻繁に行かなかったな。

 あまり記憶が前に出てくれない。


「たくさん砂があるぴよ……! 真っ白みたいぴよ!」


 ディアが挿絵のページをもふもふする。

 こういう時間は大切だ。


「ウゴ、水が押したり引いたりするとか」

「波もあるんだぞ。ざぶーんだぞ」

「ぴよ……! すっごいぴよねー」


 そんな感じでアレコレ言いながらページを進めていく。ときおり地球にはない事柄も書いてあるな。


「王国南部の海の見どころ……ふむふむ」


 小島くらいの亀、魔力が凝縮された青い小石。

 時間によって七色に輝く海。


 前にも読んだが、ここに海はないからな。

 あんまり真面目に頭には入れなかった。


「改めて読むと、楽しみになるな」

「ウゴ、想像つかない!」


 普通に観光で行ってみたくなる。

 というか、観光案内のページみたいだ。


 まぁ、本は高いからな。

 途中からお金を持っている相手向けの記述になるのはよくあることだ。


 ペラリ。


「――っ!」


 ページをめくった瞬間、ステラの目つきが鋭くなった。

 何かあったのか?


 という疑問はすぐに解けた。

 波間に浮かぶコカトリス達の絵があったのだ。


 そこのページには――。


「仲間ぴよ!」

「海コカトリス、鑑賞スポット……!」


 そんなページもあったのか……。

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