363.中々の距離感

 お見合い会も終わり、後片付けに入った。

 すっかり日も暮れている。


 シュガーが、胸をなでおろしながら言う。

 ちなみにナナ以外は全員、着ぐるみをもう脱いでいた。


「やれやれ……結果としては、上出来なんですかね。五組のカップルが出来たことだし」

「そうですね……。やはりぴよ効果はあったと言えるかと」


 ステラのテンションは元に戻っている。

 ナナがぼそりと呟く。


「やっぱり着ぐるみで性格変わるタイプか」


 その呟きはステラには聞こえてはいなかった。


「にゃー、お疲れ様にゃー」

「「にゃー!」」


 ニャフ族が片付けを手伝いに来てくれた。


「おー、ありがとうごぜぇやす!」

「にゃー、成果はどうにゃ?」


 シュガーはナールを両脇から抱えると、ちょっとだけ高い高いする。

 そして何事もなかったように、降ろす。

 ナチュラルな動作だけど、中々の距離感の近さだった。


 レイアが戻ってきた着ぐるみを箱に詰めながら、


「まずまず、何組かのカップルができましたよ」

「それは何よりにゃ!」


 ステラもふむふむと頷きながら、


「定期的にこういうイベントもいいかも知れませんね。初回は様子見の人も、次は参加してくれるかも知れませんし」

「まさに、その通りです……! 継続も大事ですからね!」

「……そうすればまた着ぐるみの出番もありやすからね」


 シュガーの言葉に、レイアがぐっと親指を立てる。

 いい笑顔付きで。


「ちゃんとわかっていますね!」


 ◇


 夜の帰り道。

 風のざわめきを聞きながら、シュガーとナールは並んで歩いていた。

 ナールを自宅まで送るためである。歩きながら、二人は話をしていく。


「にゃ。着ぐるみはどうだったにゃ?」

「レイアはしっかりと作ってますからね。息苦しさもあんまりなく、やりやすかったですぜ」

「コカトリスグッズには手を抜かないにゃ」


 距離はそんなにない。

 とことこと歩いていくと、すぐにナールの家に到着する。


「にゃ。送ってくれてありがとうにゃ」

「気にしないでくだせぇ」


 ちょっと照れくさそうにするシュガー。

 それを見て、ナールがちょいちょいっと手招きをする。


 その仕草でシュガーは、すっとナールと目線が同じになるようにかがむ。

 もう何度もやってきた流れだからだ。


「今日はお疲れ様にゃ……!」


 ナールがシュガーにぎゅーっと抱きつく。

 もふもふなナールの体を受け止めながら、シュガーは微笑む。


「ナールもですぜ」


 シュガーがふにふにと腕を回して撫でると、ナールは上機嫌に応えた。


「にゃーん……」


 少しの間そうすると、シュガーが名残惜しそうにナールから離れる。

 夜になったとはいえ、人の目がないわけではない。

 さすがに長時間やるのはちょっと慣れないのだ。


「んじゃおやすみ、ナール」

「おやすみなさいにゃ!」


 そうして別れる二人。

 ナールはシュガーが見えなくなるまで、手を振っていた。


 その様子を大樹の影から、またしてもコカトリス達が見つめていた。


「ぴよ……」(春だ……)

「ぴよぴよ……」(愛とか恋とかだ……)

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