323.報告を終えて
「ぴよよー! とうさまー! おにいちゃーん!」
「父上ー、兄上ー!」
ディアとマルコシアスが俺達に呼びかけて来る。
「おかえり、皆……!」
「ウゴウゴ、おかえりなさいー!」
わっと集まって、俺達は再会を祝いあう。
「大丈夫だったか、ステラ?」
「ええ、ばっちりだと思います……!」
ステラがソリを横に置く。
……なんか高そうな、ミスリルで出来てるっぽいが。
い、いや……とりあえずは皆のことだな。
「ぴよー!」
「よっと……楽しかったか?」
ステラからディアを受け取り、胸元に抱きかかえる。ふわっふわのもこもこ。
……変わらない、うん。変わってない。
嬉しい。とても嬉しい。
「とっても楽しかったぴよよー!」
ん?
発音が良くなったような……お喋りが上手になったような。
ステラを見ると嬉しそうに微笑んでいる。
「さすがエルト様……もう気が付かれましたか。少し流暢になったみたいなんですよ」
「そうなのぴよ?」
「そうみたいだな……!」
もにもに。
少しずつでもしっかり成長しているということか。
良かった良かった。
子犬姿のマルコシアスはウッドに抱きかかえられている。すりすりとマルコシアスがウッドに頭をこすり付け、尻尾をふりふりしていた。
やっぱり再会が嬉しいんだな。
「兄上なんだぞ……すりすりだぞ」
「ウゴ、マルちゃん……。ちょっと成長した?」
ウッドはマルコシアスを抱えながら、左右にちょっとあやすようにしている。
「そうなんだぞ! ちょっと大きくなったんだぞ!」
俺は片手でマルコシアスの頭をすーっと撫でる。
「ふむ……確かにそうだな」
マルコシアスもいつも抱っこしているからな。
頭がちょっと大きく、特に耳が指の先くらい大きくなってる。
「……ところでナナは? お礼を言いたいのだけれど、静かだな……」
ステラの背中にはコカトリスの着ぐるみがセットされたままである。
シュール。もう慣れたけど。
この着ぐるみの中にはナナがいるはずなのだが。
ステラが着ぐるみに目線をやって、
「疲れてお休み中なのです……。着いたら起こして、とは言っていましたが」
「何かあったのか?」
「神経と魔力をかなり使ったので……。このソリも収納できなかったようで」
「魔力を浸透させないといけない、とかだったな」
その辺の話はおいおい聞くか……。
疲れてまだ起きないのなら、無理に起こす必要はない。
「よし、他の人達も帰りを待っているからな。とりあえず顔を見せに行こう……!」
「はい……!」
◇
一通りの報告を聞き、夜になった。
今夜は芸術祭のお疲れ様会だ。
広場を使い切り、大々的な宴会をやるのだ。
釣りでゲットしたマルデホタテもあるし、パズルマッシュルームもある。
もちろん新鮮な野菜や果物もある。
野外で焼いて食べる野菜は、どうしてこんなに美味しいんだろうな……。
皆もそうみたいで嬉しい限りだが。
「よかったですー、お花喜んでもらえてー」
「好評みたいで頑張った甲斐がありましたです!」
テテトカとララトマが挨拶に来る。
今日は乗り気らしく、席にドラムを置いて後で演奏するらしい。
他のドリアードは食べながら、合間に草だんごをこねているな。いつも通りだ。
「君達のおかげだ。ありがとう」
「いえいえー。皆の頑張りですよー」
次に来たのはアナリアとイスカミナだ。
「おかえりなさい、ステラ! 元気そうで……! ディアちゃんにマルちゃんも!」
「ぴよ……ただいまぴよー」
「ただいまだぞー」
「もぐ。おねむみたいもぐね」
「ですね……」
ディアとマルコシアスもやはり疲れていたのか、お腹いっぱいなのか。
すでに半分お眠りモードである。
適度なところで帰るようにはしているが。
「ウゴ、ベッドでねる?」
「ぴよ。まだ大丈夫ぴよよー」
……らしいので、このままだ。
ステラがディアを撫でながら報告する。
「お二人の花飾りも好評でしたよ。ヴァンパイアやドワーフの方も興味津々でした」
「わぁ、それは何よりですね……!」
「よかったもぐ!」
そしてイスカミナが興奮気味にわたわたと手を振っている。
彼女にはステラが持ち帰ったソリを渡して、見てもらうよう依頼しているのだ。
この様子だと、結構いい品物っぽいな。
「もぐ! あのソリ素晴らしいですもぐ!」
「ミスリルのように見えたが……やはりそうか」
「高純度のミスリルを使ってますもぐ。軽くて丈夫ですもぐ。ぺたぺたいっぱい指紋つけちゃいましたもぐ!」
「お、おう……」
まぁ、好きに調べてくれていいが……。
でもこれで魔導トロッコも進展は加速しそうだな。
よしよし。
見渡すと村人達はどんちゃん騒ぎをしている。
テテトカもドラムを叩きながらコカトリスの歌を歌っていた。
そのコカトリス達もぴっぴよと踊っている。
隣には家族が揃っている。見上げれば満天の星空だ。
良い、本当に良い夜だ!
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