ステージ29 超絶人気アイドルの野望・17ライブ会場版

 かの有名な焼肉会館。

 最上階ともなると、食べ放題は1人1万2000円。

 けど、よりによって1階とは。


 しかも今日は、おまけが多過ぎる。

 坂本くんにはそこんとこ理解してもらわないと。


「ったく。こんな安い焼肉、わざわざ来なくっても」

「まぁ、そう言うなって。今は1階が精一杯なんだ」


 いやいや。2人きりなら3階まで登れたし。


「だったら、余計なの4人を置いてくれば良いじゃない」


 坂本くんもはやいところリストラという言葉を覚えるべき。

 そう思っていたら、神対応が私を待っていた。


「そうだ。そのうち2人で最上階でディナーしよう」

「本当? うれしい。私このビル買う!」


 ビルだけではなく、中に入っているお店も買う。つまり、私物化だ。

 お店だけではなく、中で働いている人々も買う。つまり、奴隷化だ。


 そんな私の野望を止めるでもなく、坂本くんは構想を訊ねてきた。

 『超絶人気アイドルの野望・17ライブ会場版』

 これについてはまだ語れない。

 その代わりに、焼肉会館構想だけは詳しくはなした。


「60階建てに改築する。最上階は9万円よ!」

「なるほど。でも、それだったら鉄板焼の方がいいような」


 そっ、その手があったか。さすがは坂本くん。

 けど、それじゃあ何会館だか分からなくなる。


「いや、焼肉よ。焼肉で9万円なのがシャレオツなのよ」


 私が言うんだから、間違いない。うん。

 坂本くんも納得の表情だ。




 店に入ると、若々しい女の人の声が出迎えてくれた。

 うざいくらい元気。


「いらっしゃいませ!」


 同時にすごい音。ガシャンッ!

 お店の人がお皿を落としたから。

 そして、そのまま固まってしまった。


「あっ、ああああっ、あっ、あ……。」


 お皿落としたのがよほどショックだったみたい。

 あぁ、うざい。

 坂本くん、悪い顔ひとつせずにお店の人をフォロー。


「大丈夫、ですよ……。」

「あっ、ああああっ、あっ、あ……。」


 どうしたの、ママ? まさか、便乗ってやつ。

 ママの視線の先にいたのはお店の人。

 どんどんシンクロ率を高めている。


 ママの実年齢は41だけど、30歳くらいに見える。

 お店の人も30歳くらいに見える。


 あっああっあと言わせたまま横に並べれば、同級生で充分通用するかも。

 私は試してみた。




 というわけで今、ママとお店の人は並んでいる。

 思った通り、まるで同級生のよう。

 その2人が同時にあっああっあから解放されて言った。


「あっ。明菜!」

「あっ。あの子!」


 明菜って誰? あの子さんとの関係は?

 私は、自然にあの子さんを見ていた。


======== キ リ ト リ ========


そのときのあの子さんの表情は?


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