ステージ26 超絶人気アイドルより小学生の方がポテンシャルがある

 ママと私が口論。こんなの、生まれてはじめて。

 こういうのも幸せなのかもしれない。

 そんな日常を噛み締めていた。

 それを邪魔する脅威が現れた。


「そこのおじさん、おばさんたち。うっさいわよ」


 えっ、私もおばさんに入るの? そう思いながら、声の主を見た。

 入ってるわ、これ。 相手が小学生じゃ、そうなる。


「だっ、誰? ダメじゃん。人ん家に勝手に入ったら」


 坂本くんったら、貴方のお家でもないでしょうに。

 けど、居心地の良さを感じてくれた上での発言ならうれしい。


「勝手じゃないわよ。母に招かれたんだもの」


 生意気にも言い返す小学生。

 母って、誰? ママのこと?

 私はママを見た。


「しっ、知らないわよ、そんな子」

「そんな子とは失礼ね。まりこという立派な名前があるんだから」


 まりこ。誰の子? まさかね。

 けど、それしか考えられない。


「まりこ、早かったのね」


 言ったのは、まりなさん。

 予想通り。

 

「当たり前でしょう。焼肉と聞いてはじっとしてらんないわ」


 焼肉? 何のこと?


「かっ、かわいい」


 ママったら、メロメロになってる。

 男にうつつを抜かすのはやめろって言ってた。

 女子が相手ならいいってことなの?


「ありがとう、おばさん」

「キャーッ! 喋ったわ。いえいえ、どういたしまして♡」


「もしかしておばさんが社長さん? 母がお世話になっております」

「まぁまぁまぁ! ご丁寧なご挨拶、いたみいります♡」


「いいえ、当然のことです。母を雇っていただいたのですから」

「心配しないで。まりなさんは何ていうか、そう。優秀なのよ♡」


 まりことかいう小学生、侮れない。

 太ももは太くないし、鎖骨はくっきり。

 まだ成長期手前の、全く膨らんでいないおっぱい。

 何より、お目目ぱっちり系の顔立ち。


 それでいて大人びた言動。


 ママはそのギャップにメロメロ。


 まりこちゃんが坂本くんを見た。

 蔑むような目。

 人の旦那を捕まえて、何ていう態度なの?


「で、坂本くんはどこ?」


 だっ、旦那のことかーっ!

 って、見てたじゃん。今、見てたじゃん。

 見たくせに無視とかって、性格悪い。

 きらい。この子、きらい。


「俺だけど」

「そうじゃなくって、イケメンの坂本くん」


「イケメンじゃなくって、悪かったな!」


 坂本くんは悪くない。悪いのはあいつ!

 私はとっさに坂本くんの唇を奪っていた。ショートキスだ。

 そして、気が付いたときには、まりこを投げ飛ばしていた。


「えいっ!」


 わっ、悪いのは全部、まりこだよ。


「私のイケメン旦那に、失礼でしょう。謝んなさい」

「さくら、辞めるんだ。相手は小学生だよ」


 坂本くん、どうして。

 脅威は、早期発見・早期対応がきほんでしょう。


「小学生だからよ。私にとっての最大の脅威!」


 『超絶人気アイドルより小学生の方がポテンシャルがある』だ。

 そのポテンシャルが私にとっては最大の脅威。

 坂本くんとの入籍まで最低でも2年はあるんだから。


 脅威が立ち上がった。


「なかなかやるわね。けどね、私には通用しないわ」

「何ですって!」


「小学生の身体は、あんたが思うほど硬くないってことよ」

「どう考えても硬そうだけど。ナインちゃん」


「ナインっていつの言葉? ちっぱいよ。発展途上のちっぱい」

「あん。坂本くんはおっきいのが好きなのよ。周りをご覧なさい」


 言いながまりこの視線を周囲に誘導した。

 まりなさん、あの子さん、社長。

 そして私。


「だったら、おっきくなるまで。私のおっぱいは、まだ確定してない」


 聞き捨てならない。


「やはり、あなたが最大の脅威ね。今の胸囲は矮小のくせに」

「言うわね、おばさん」


「くっ」


 私は動けなかった。まりこも。

 睨み合いはしばらく続いた。


 少しあって、叫んだのがあの子さんだった。


「待って、こんなのおかしいわ。みんな間違ってる」


 何様のつもり!


======== キ リ ト リ ========


まりこを敵視するさくら。勝手に追い込まれています。


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