ステージ２３ テイク２
邪魔者は消すに限るわね。
また坂本くんと２人きりになれた。
だけど、坂本くんは油断ならない。
わがまま王子モードとでもいうの。
そうなったらもう、山吹っても止められない。
だから私は油断しなかった。
「ねぇ。あゆまりさんの提案を受け入れましょう！」
そう言ったときにはもう、おっぱいを強調する第１ポーズ。
私は闘う。
「もう１回プロポーズしろと？」
坂本くんったら、恥ずかしがっちゃって。
こっちまで顔が赤くなるわ。
けど、私は闘う。
「そう。テイク２でもちゃんと結婚を申し込んでよ！」
「まさか、断る気じゃないだろうな……。」
そんな心配してるんだ。これは、揶揄うしかないわ。
闘いながら。
「さぁ、どうかしら？ 私、地味に天邪鬼だけど、何か？」
「絶対断る気だ。嫌だ。言いたくない！」
言いながら、坂本くんはお口にチャックしていた。
無意識の行動にしては、かわい過ぎる。
「もう、わがままね。坂本くんらしいからいいけど……。」
「えっ？ わがままなのって、俺らしい？」
無自覚。わがまま王子モードは無自覚に発動するらしい。
これは手強い。
「そうね。もはや奥ゆかしいのは影を潜めてる」
「そうか。もしかしたらこれが本当の俺なのか！」
「だからって、ちゃんとプロポーズしてよ。お願いだから！」
「分かったよ。そのお願い、叶える！」
坂本くんが私の正面に立った。
肩の力が抜けていた。
「さくら、好きです大好きです。愛してます。結婚してください！」
「うん。いいよっ。いつまでも一緒にいてね！」
この部屋、隣の部屋との境にドアはない。
全部筒抜けだってこと、忘れてた。
「やったーっ！」
全員のやったーっ！ いただきました。やったーっ、４つです！
まりなさんは泣いていた。
「おめでとう、お２人さん！」
あの子さんは興奮気味。
「すごかったね！ 世紀の一瞬ってやつよっ！」
そして、ママは感慨深げ。
「サクラ、良かったわね。これで毎日ロールケーキが食べられるわよ」
って、そこなの？
「俺、作りませんよっ！」
あっ。わがまま王子モード。
「なっ、何ですって！ それじゃあただの泥棒じゃないの！」
「泥棒って、別に俺、社長のものを獲ったりはして……あっ！」
「わーっ！ それはほら、きっと商品管理上の問題よ！」
私はとっさに坂本くんの声を遮った。
だってママが責められているみたいでかわいそうだったから。
ママのことは、私が守ってあげないとね。
「そっ、そっ、そうなのよ。サクラ、ささ、さすがね！」
「そうだよな。社長だもんな」
坂本くん、納得してくれたみたい。よかった。
「そうよそうよ。社長は、社長よ！」
「サクラの言う通り。社長なのよ、私」
社長、便利ーっ！
「３人ともおかしい。そんな当たり前のこと！」
「奇遇です。私も当たり前過ぎて退屈です」
バカあほ、すっこんでろい。まとまるはなしもまとまんないわよ。
坂本くんが悪戯っぽく言った。
「でも、よく考えたら、俺たち未成年」
「そうよね。結婚って簡単じゃないわ」
「さくらん家の両親は、了承してくれるかな？」
「あっ、当たり前じゃない！ 現に……。」
思わず言いそうだった。ママは社長だってこと。
割って入ってくれたのは、ママ。
「りょっ、両親がよろこぶのは当たり前ってことよ」
そうそう。そのとーり。私は首を何度も縦に振った。
「まーまー。兎に角、おめでたいですよねっ！」
まりなさんが強引にはなしを広げる構えをした。
＝＝＝＝＝＝＝＝ キ リ ト リ ＝＝＝＝＝＝＝＝
あれれ。まりなさんの行動。
はなしをまとめてるんじゃなかったでしたっけ。
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