超絶人気アイドルが俺を必要とするのには理由がある

スタジオ２２ ご報告！

　キスのあと、俺たちはみんなを呼んだ。

　俺は、みんなの目線に注目した。

　俺のカノジョを、佐倉菜花と見るか、山吹さくらと見るか。

　これは俺にとってはかなり重要なこと！

「サクラ、はなしは済んだんだな」

　社長が言った。社長は元々、佐倉とさくらを区別していない。

「はい。良くはなし合いました！」

　さくらが言った。そうだっけ？　俺たち、何話したんだっけ！

「では、お聞かせくださいな、さくらん！」

　まりなさんは、佐倉だと思っているみたい。

「奇遇です。私も聞きたいです！」

　あの子さん、相変わらず。でも、佐倉だと思っていることは伝わった。

　俺は、どこかでホッとした。さくらの次の発言を聞くまでは。

「私たち２人のこと。私からより、章からおはなしいたします」

　１歩控えて旦那を立てるちょっと古めの大和撫子よろしく、さくらが言った。

　しかも、俺のことを章だって。これじゃあ本当の夫婦みたい。

　俺は、さくらにぽんっと背中を押され、前へ出た。

（なっ、何言えばいいんだ？　俺たち、はなし合いなんかしてないよ）

　俺とさくらが２人きりになった目的。

　それは、今後の活動についてはなすためだったはず。

　でも俺たち、キスばっかしてて、何もはなしていない。

　俺は一体、何をみんなに報告すればいいの？

「キスしました」

「はぁっ！」

　俺以外、全員がハモった。きれいな「はぁっ！」だった。

　妙な満足感が俺の頭の中に渦巻いた。

　社長は額に手を当てていた。

　まりなさんは目が点になっていた。あの子さんはあたふたしていた。

　そしてさくらはムキになったのか、目を閉じ、手をのしのししながら言った。

「そこじゃないでしょう！」

「じゃあ、どこ？」

「だっ、だから。結婚話よっ！」

「えーっ！」

　俺を含めた全員がハモった。

　俺はこれにも満足を覚えた。

「なんで、章まで驚いているのよ！」

「いや、だって結婚なんて……申し込んだか……。」

「そう。それをみんなに言ってほしい！」

「はいっ、そうします！」

　俺は、改めて、みんなの前に立った。

　そして、さくらを脇に抱き寄せて言った。

「社長、まりなさん、あの子さん。言います。聞いてください！」

　拍手。鳴り止んでからの喝采。励ましの声。

「がんばってーっ！」

　あたたかいお言葉。

「俺こと坂本章は、佐倉菜花さんに、プロポーズしました！」

　また拍手。今度は長い。それでも鳴り止まない拍手はない。

「おーっ！」

　俺は続けた。

「以上ですっ！」

「えーっ！」

　俺以外全員のえーっだ。狙ってたから、余計に気持ちいい。

「ちょっと章！　なんで以上なのよっ！」

　大剣幕のさくら。当然だと思う。狙い通り！　

「だって、まだ聞いてないからっ！」

「何をよっ！」

　さくらがまたのしのししはじめた。予想通り！

「プロポーズの答え、聞いてない」

「キッ、キスしたでしょう……。」

「した。最初にみんなに報告した！」

「それが答えじゃない！」

　さくらののしのしが止まらない。

　ここまでくるとさすがに予想外。でも、緩める気はない。

「分からない！　言葉じゃないと、分からない」

「なっ、章……。」

「おやおや、痴話ゲンカってやつ？」

「はい。最早、爆発するか、菜花ちゃんが答えないとおさまりませんね」

「……。」

「さくら、どうする？　一緒に爆発するか。それとも答え聞かせてくれるか？」

「非リアの妬みで爆発なんかしてたまるかっての！」

「じゃあ、ちゃんと聞かせてくれ！」

「もちのろん！」

　こうして、さくらが俺のプロポーズに返事をすることになった。

　それは、まりなさんの悪ふざけだった。

「どうせなら、プロポーズから見たい！」

「あっ、あぁ、奇遇です！　私もそう言おうと思ってました」

　何をおっしゃるまりなさん。あの子さんのは取って付け？

　これは予想外。さくらを揶揄おうとしてはじめたことなのに。

　俺にまで火の粉が降りかかってきた。拙い。

　そのとき。

　さくらが俺にキスをした。ショートキスだ。

　みんなが見ている。恥ずかしい。

　でも、気持ちいい。

　キスを終えるとさくらは翻ってまりなさんとあの子さんに向かい合った。

「しばらく、どっかへ行っててねっ！」

　そう言って、手を振った。

「御意！」

「仰せのままに！」

「よきにはからえ！」

　すごい日本語が飛び出した。いつの時代だよ。

　社長のは、悪ノリだろうけど。

　兎に角、静かな部屋でまたさくらと2人きりになった。

＝＝＝＝＝＝＝＝　キ　リ　ト　リ　＝＝＝＝＝＝＝＝

爆発が見たかった。残念。この上は、ハッピーエンド目指すしかないですね。

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