スタジオ02 佐倉と雷鳴③

 撮影はすこぶる順調。俺はさくらの全てに注目した。

 さくらの集中力は桁違い。

 さくらスマイルを次々に決めた。


 さくらは本当に激しくて華やか。

 とっても凛々しい。


 さくらチェンジ、この枠の衣装替えはハイペースだった。

 でも、肌の露出は少なめ。


 おしゃれな長袖シャツはそのままに、ジャケットを取っ替え引っ替え。

 これまでの撮影で、コツを掴んだんだろう。

 本当に順調だった。


 俺は、ここまでは安心して見ていられた。



 あと数分というところで、最後のさくらチェンジとなった。

 とても危険な格好に。


 さくらはジャケットを脱ぎ、おしゃれな長袖シャツも脱ぎ捨てた。

 この時点で既に布面積は半減していた。


 女の子らしいと言っていいのかどうかは、俺には分からない。


 さくらボディーはダイエットうまくいったよの見本。

 おっぱいおっきいよの見本。

 おなかすっきりくびれくっきりの見本。


 あと、ヘソがかわいい。

 そして凛々しい。


 俺、緊張してきたよ。

 でも大丈夫。


 あれは水着だから。大丈夫、大丈夫。


 俺の緊張は、それで終わらなかった。

 むしろ、はじまりに過ぎなかったともいえた。


 さくらはズボンも脱いだ。

 履いていたときでも、充分に脚の細さは分かった。

 それはもう、細さの中にも軽重というか、脚特有のめりはりがくっきり。



 強い。



 刺激が強過ぎる。



 こんなの凶器じゃん。全身凶器じゃん。

 で、でも、大丈夫、大丈夫。

 あれは水着だから大丈夫だから……。



「さくらすぃむすぅーつ。(……すぅーつ……すぅーつ……。)」



 大丈夫なわけない。俺はエコーの効いた声で叫んでいた。



 水着での撮影は長くはなかった。静止画ばかりを数ショットだけ。

 そのうちの最後の1ショットはぜひ見せて欲しいなって思った。



 バレエにもヨガにもありそうなポーズ。

 胸を張り。上体を三日月状に反りかえし。

 おっぱいをツンと大きく上に向けて。

 左足が前で右足が大きくうしろで。右膝は床につけて。

 左手をおへそよりも上の胴体前面に巻きつけて。


 言い方を変えると、おっぱいを下支えして。


 完璧といってもいいポージング。



 さくらはどちらかというとポーズ不要な完璧ボディ。

 というか、どんな仕草でも華やかで激しい。


 それがポーズを決めているのだから、完完完璧な感じだ。

 カメラもそれに合わせて高いところからさくら全体を見下ろすような位置に。


 唯一残念なのは、右手が何も表現していないこと。


 右手はカメラを持って真っ直ぐさくらの斜め上前に伸びていた。


 独りで撮影するのは大変そう。

 シャッターを切るのくらい手伝ってあげたい。

 けど、さくらがそれを望んでない以上、俺なんかの出る幕じゃない。



 そんなあっと驚くポーズでの1枚。絶対に傑作だと思う。



 見せてもらえないかなぁ。


 その1ショットを終えた瞬間。

 さくらスマイルがさくらウインクと共に俺を襲った。


 真っ直ぐにさくらを見ると、とても眩しかった。

 いや、観ていられなかった。



 刹那に稲光。


 ガラス窓全面が明るくなった。

 佐倉を真っ黒なシルエットに変えた。


 次いで雷鳴。


 バリバリバリバリっていう、いやなやつ。


「坂本くん! ふぇえーぇっ!」


 佐倉は声にならない声とともに俺の元へ飛んできた。

 地味に素早かった。

 恐怖に怯えているせいか、力なく、自信もなさげ気。

 俺は佐倉をヒッシとキャッチして、しっかり支えてあげた。



 そういえば、キスしているときに考えた。

 佐倉って雷が苦手なのかもって。


 さくらになってからは凛としていたから、そんなことは忘れていたけど。

 俺の予想は当たったみたいだ。


 佐倉は、雷が怖いのを堪えてキスを続けていたんだ。

 それは全部、ファンへの恩返しのために。


 やっぱり佐倉って、すごいよな。

 途中で辞めなくて、正解。


 俺は精一杯の尊敬の念を込めて言った。


「やっぱり雷が怖かったんだな」

「うん。でもやっぱりって、分かってたの?」


 佐倉が俺の胸に顔を付けて、地味に甘えながら言った。

 俺はよしよしっという気持ちを込めて、佐倉の背中をトントンした。

 佐倉の背中の肌の感触が直に伝わってきた。


「キスのとき。稲光を避けてるって感じたんだ」

「坂本くんって、キスしてて私の考えが分かるんだね」


「そっ、そうかな? でも佐倉だってさっきは当たってたじゃん」

「そうね。そうだったわね! 私たちって、似たもの同士なんだね」


 佐倉はそう言いながら頭をもたげた。

 佐倉の姿勢が変わった。

 佐倉おっぱいが今までにないぱい圧となって俺の胸を直に押した。


 水着姿で。


 佐倉アイには俺の姿が映っていた。

 俺なんか佐倉の足元にも及ばないのに佐倉が言ったんだ。

 俺と佐倉が似たもの同士だって。


 俺はとってもうれしかった。

 お義兄さんへの紹介は是非、似たもの同士で!

 俺は素直に言った。


「うん。だったら、うれしい!」


 最後、佐倉は額で俺の胸を押してきた。


======== キ リ ト リ ========


深まる愛情。キスからはじまる撮影会。ここまでは順調です。


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