スタジオ12 らち☆きす
校門を出た瞬間、俺と佐倉はまたもまとめて拉致られた。
拉致ったのはさくらこ社長。
俺たち2人を軽々とつまみ上げた。
荷物でも放るようにして黒いバンのうしろのドアから押し込めた。
さくらこ社長の怪力は、山吹さくらを彷彿とさせた。
2人は、似たようなものなのかもしれない。
車内はベッド仕様になっていた。
「サクラ、仕事が入ったぞ。少年、直ぐにキスしろ!」
「はいっ!」
佐倉は慣れているのか、地味に素直な返事をした。
逆らってもムダという、諦めの境地。
俺は、あまりにも突然のことについていけなかった。
仕事の内容も聞いていない。
いきなりキスしろだなんて、ありえない!
これから、どうなってしまうんだろう……。
「……キスって……冗談じゃないよ! こんなところでできるかっ!」
不安を隠すために、思いっきり不満をぶちまけた。
「いいからっ、しようっ! おっぱいは、大丈夫だから!」
佐倉はそう言うと、俺に覆いかぶさってきて俺の唇を奪った。
佐倉リップはいつにも増して地味だが気持ちがいい。
付け足された言葉の意味が、言われたときは分からなかった。
けど、キスをはじめると直ぐに分かった。
佐倉おっぱいも気持ちいい。
何度もイッてしまいそうになるほどの気持ちよさ!
制服やブラジャーの上からでも充分に柔らかさが伝わってくる。
でも、大丈夫だった。
それはきっと佐倉の言葉が応援してくれていたんだろう。
俺、幸せだよ!
黒いバンが音もなく動き出し、社長の声がした。
「仕事は撮影。ある車のPR用。少年の最初の修行とする」
社長のものの言い方は、実に無駄がない。
絶対彼氏いないだろうな。
でも気になることを言った。
修行!
じゃあ、もしかしたら俺が撮影するってことかな。
それは楽しみ。
少しでもさくらのいいところが引き出せるように頑張ろう。
俺は、山吹さくらの魅力について考えつつ、坂本トングを出撃!
それがうまくいかない。
佐倉はまるで貝のように口を固く閉ざしていた。
それもそのはず。
俺たちの唇は、ダブルバーガーのように折り重なっていた。
上から坂本上リップ・佐倉上リップ・佐倉下リップ・坂本下リップの順だ。
だから坂本トングが入り込む隙間がない。
でも、こんなのでキスっていえるんだろうか。
これじゃまるで佐倉のあひる口を俺がくわえているみたいだ。
これでもし、佐倉が山吹れなかったら、仕事ができない。
社長、カンカンだろうな。
佐倉でも恐れるさくらこ社長だ。
俺なんかひとたまりもないだろう。
直ぐに解消しないと。
俺は、坂本リップを動かそうとした。
ところが、それもうまくいかない。
2人の姿勢は佐倉が俺に乗っかってるようになっている。
キスをはじめるとき、佐倉が強引に動いたから。
俺の方からはうまく動けない。
どうしよう。
全部、俺のせいにされたらまずい。
命が危ない。
何とかしなくっちゃ!
そう思っていると、佐倉の唇がゆっくりと動いた。
そして、昨日のキスのときのように唇と唇が平行になった。
これなら、キスの効果はありそうだ。
それに、堂々と坂本トングを繰り出せるぞ。
よし、頑張ろう!
俺は、しばらく佐倉トングとの無言な舌戦を楽しんだ。
俺と佐倉の手と手が恋人同士のように繋がれた。
お互いに身体の表面の多くを重ねようとして動いた。
重なったところはどこも地味に気持ちがいい。
手も、胸も、脚も。もちろん唇も。
俺、世界一の果報者かもしれない。
このときの俺は、撮影する気満々。
撮影に備えて、山吹さくらの魅力について考えた。
いっぱいあるから、楽勝だ!
理想の女子を思えばいいだけ。
えーと、えーと、えーっと。
先ず、炊事。大雑把なところがあるからダメそう。
続いて掃除。むしろ下手クソ、下着を脱ぎ散らかしているくらいだからな。
そして洗濯。覚えたばかりで未知数っと……。
んあ? 佐倉のいいところって、どこだろう?
優しさはどうだ、うん。
少なくとも俺に対しては優しいじゃないか。
いやいや。
桜庭先輩とのキスを強要されたのを思い出した。
あのときの佐倉には、優しさのかけらもなかった。
結果的には上手くいったからいいけど。
クラスのみんなに対しては厳しさも見せていた。
佐倉には、優しさはおろか、甘えたところが1つもない。
それが魅力でもあるんだけど……。
一貫しているのは、高効率を求めている点。
それって俺が求める献身的な天使タイプとはちょっと違う。
あざといだけということも充分に考えられる。
つまり、理想の女子っぽいことは地味に何ひとつ持ち合わせていないってこと。
むしろ小悪魔的。
でも撮影対象は超絶人気アイドルの山吹さくら。
家庭的なところじゃない。激しくて華やかなところがカギ!
さくらスマイルは最高。
さくらおっぱいは眺めているだけでも神々しい。服を着てても分かるくらいにね。
それに加えてて凛としたところが撮れれば充分だろう。
ってことは山吹さくらは、生活力のない、性格おブスの超絶美少女っ!
何だか、俺の理想とは程遠いな。
しばらくして、周囲が暗くなり車が止まった。
どうやら、スタジオについたようだ。
社長が俺たちに言った。
「PR対象が未着だ。合図するまでキスを続けろ。返事はなくてよい!」
言い終わったときにはもう、社長は車から降りていた。
車内の照明が全部消えた。
外にも光はないようだった。
真っ暗な車内で俺と佐倉は2人きりになった。これって……。
俺は、2人きりになったことに気付いた。
その途端、ついエロいことを考えてしまった。
身体のより多くを重ね、より気持ちよく、より一体感をおぼえたい。
そういうことだ。
さてどうしようと思っていたら、俺の左手から佐倉の右手が離れていった。
要らないものを斬り捨てるかのように、無慈悲に。
佐倉は、キスのときに体を重ねることを嫌がっているのかな。
俺はもっともっと繋がりたいのに、がっかりだ。
佐倉にとってキスはビジネスだもんな。
直後、佐倉は俺にまたがるように脚を動かした。
そして、自由になった右手で俺のYシャツのボタンを外した。
さらに、今度は自分が着ていたYシャツのボタンまで外して広げた。
ひゃーっ、佐倉は性に対して積極的だよなぁーっ! 地味だけど。
俺、丸裸にされるかも!
たっ、助けてーっ!
キスしたままでは限界もある。
関節のやわらかい佐倉はYシャツを脱ぐことができた。
でも俺にはムリ。
下になっているのもそうだけど、そもそも身体が硬い。
もちろん、今は下半身もカタい。
けど、今までより肌を多く密着できるようにはなったかな。
佐倉がまた、俺の身体の上に寝そべった。
何だこれは。
地味に気持ちいいぞ!
さっきまでより直に触れ合う面積が増えただけ。
佐倉も、もっと俺と繋がりたかったんだ。
うれしい!
佐倉にまた動きがあった。
佐倉は右肘をついて身体を支えつつ、
手のひらで俺の左頬を撫でた。
俺も負けじと左手で佐倉の髪を撫で返した。
愛し愛されって感じ!
俺は完全に受け身だけど、うれしみを感じた。
そしてついに、これはもしやっな事件!
佐倉の左手が俺の右手を佐倉の背中へと連れていく。
その先にあるものとは……。
(ブラホーック……。)
口が塞がっていなかったら、きっとそう叫んでいた。
佐倉が、自分でできないはずがない。
むしろ充分に手が届く。関節が柔らかいからね。
でも佐倉は、俺にブラホックを外させようとしているようだった。
だからこうして、俺の手を取っているんだ。
そこまでされたんじゃ、俺だって!
俺は、なるべく優しくそーっと佐倉の背中に手をまわした。
興奮で全身を震わせながら。
佐倉の背中は、地味だけどすべすべ。
エステに行ってたからかな?
それとも天性のものだろうか。
撫でているこっちが気持ちよくなってしまう。
ヤバい! イっちゃう……。
必死に堪えた。
そして何とか手探りで、ブラホーックにたどり着いた。
はずし方は……。
えーっと、えーっと、えーっと……。
わっかんないよ。やったことないもの。
俺は、はじめて両親を恨んだ。
どうして姉や妹を授けてくれなかったのか、と。
強引にでも、ブラホーックをはずしてやるぞ!
俺はすこぶるやる気に満ちていた。
技術はない。知識もない。
あるのは、情熱だ! おっぱいに対する情熱!
目の前のブラジャーをはずすことだけに、俺の青春をかける!
ブラホーックを触っていて、その構造に気付いた。
引っかかっているだけのホックだ。
ならば、1度こうして縮めてからはずせばいいはず!
ところが、初ブラホーックはずしをする俺に、立ちはだかったものがあった。
それは、佐倉おっぱいだった。
佐倉おっぱいは、地味におっきい。
佐倉おっぱいは、地味にやわらかい。
佐倉おっぱいは、地味に弾力がある。
そんな佐倉おっぱいが前屈みの姿勢より地面に平行な胴体からぶら下がっている。
それはもう、大きさを最大限にアピールできる姿勢なわけだ。
そんなだから、俺が力いっぱい縮めても、簡単に弾き返されてしまう。
俺にとって不幸だったのは、最初のおっぱいが佐倉おっぱいだったこと。
これが今の俺の実力。まだまだ修行が足りないってことか……。
だが、あの社長が待ってくれるのは2週間だけ。
それまでに俺は成長しなくてはならない。
今がその第1関門に過ぎないなら、こんなところでやられるわけにはいかない。
俺は、渾身の力を振り絞り、ブラジャーの背中部分を縮めた。
手が、痺れた……。
俺の情熱と努力が結実した。
震えた手がちょうどいい塩梅で、金具・ブラホーックを揺さぶった。
その震えが偶然にも1つまた1つとブラホーックをはずしていった。
そしてついには、あと1つとなった。
ここまでくれば、やるしかない!
俺のモチベーションはマックスに達した。
最後の1つ。これはまさにラスボス級だった。
1つになった支点。
全てのブラジャー&佐倉おっぱいの力がそこにかかっていた。
はずすための力が、今まで以上に必要なんだ。
硬い。あまりにも硬い。
だが、俺は負けない。諦めたらそこで終わりだから!
力を込める俺。
抗うブラジャー&佐倉おっぱい連合。
膠着状態を打破したのは、俺でもなく連合でもなかった。
佐倉が俺にぎゅーっと抱きついた。これが決め手となったのだ。
その結果、おっぱいがつぶれ、背中に余裕ができた。
このあとおれは、いとも簡単に、ブラホーックをはずした。
危なかった。
佐倉の援護射撃がなかったら、俺は連合に敗れていたことだろう。
だが、勝利した。
これは俺と佐倉の友情の勝利だ! と、思う。
連合に単独では勝利できなかった俺。
次に襲ってきたのは、自己嫌悪。
ブラホーックもはずせない俺に、山吹さくらを支えることができるのだろうか。
さくらおっぱいは、佐倉おっぱいよりもふっくらしているというのに。
でも、俺はいつか必ず単独でブラホーックをはずせるようになるって決めた。
佐倉の左肘がつき、手のひらが俺の右頬を撫でた。
顔を触られるのって、意外にも気持ちいい。地味だけど。
同時に残念なことに、佐倉のぱい圧が下がった。
脚を伸ばし、胴体を浮かせたんだ。
佐倉、どこへ行くんだーっ!
俺は心の中で叫んだ。
すこし遠ざかった背中。
抱きしめたくても、抱きしめられない距離。
折角、背中にまわした手が邪魔なように感じてしまう。
俺は、ほんの少しの悲しみを覚えた。
もっと繋がりたいのに……。
佐倉の身体が揺れると、大きなブラジャーが自重で少しだけ下がった。
途中で複雑な紐が腕に引っかかっていて、完全には落ちそうにない。
なるほど、そうだったのか。
俺は、気付いた。
佐倉は、ブラジャーを外そうとしている。
決して、遠ざかったわけではない。
佐倉だけではブラジャーを完全に排除することができなかった。
佐倉、頑張ってくれ!
俺のために!
いや、俺たち2人がもっと繋がるために!
そこでまた合図があった。
佐倉の左手が、俺の右耳を擦る。
カサッ、カサッ、カサッ! っと、3回。
気持ちいい! 佐倉、ありがとう。
いや、これは何かの合図?
『ア・イ・シ・テ・ル』では、数が合わない。
じゃあ、一体、何の合図?
これはもしや『ハ・ズ・セ』では?
もう、そうとしか思えない!
佐倉はブラジャーを自力では外せないとみると、俺を頼ってくれたんだ。
だったらうれしい!
やってやる。俺だって男だ!
俺はブラジャーのカップの部分に両手を伸ばした。
なるべくおっぱい本体には触れないように注意して。
けど、佐倉のおっぱいはおっきい。そして、やわらかい。
身体とは垂直の方向に垂れていた。
だから、何度か不可抗力で触れてしまった。
許してくれ、佐倉……。
何とかカップの部分に手を引っ掛けることができた。
あとは、下に向けてそーっと引っ張るだけ。
俺、がんばれ!
2人のために!
ズンッというぱい圧が俺を襲った。
佐倉が上半身を俺に乗っけてきたから。
まだブラジャーは完全にははずせてないが、おっぱいはカップからずれている。
おっぱいとブラジャーが、別々の動きをはじめた。
こっ、これは……。
まず、俺と佐倉の首筋の間にブラジャーがあった。
キスをしていて、佐倉の顔の影で見えはしないが、確かにそこにある。
俺はどうしても想像の翼を広げてしまう。
佐倉の上半身が裸なことを。
俺の我慢は、もう直ぐ限界に達してしまう……。
ヤバい、ヤバ過ぎる……。
早く完全にブラジャーをはずさなければっ!
体温を感じるほど近くにあるおっぱい本体からの刺激にも晒されていた。
その刺激は微妙に楕円形に広がったり、狭まったしていた。
佐倉の息遣いに合わせるようにして。
俺もそのリズムに合わせて呼吸してみた。
そうしたらもう、すごいんだ。
一体感というか、俺の身体が溶けていく感じ!
もう、我慢が……。
そのとき……。
ガチャッ、ウィーンっという機械音がした。
徐々に光が差し込んできた。
シャッターが開いたみたい。
ブォーンという、ものすごいエンジン音。
モンスターマシンの登場。
PR対象ってやつに違いない。
俺は別にメカ好きってわけじゃないけど、ゾクゾクっとした。
一体、どんな車なんだろう?
シャッターが閉じ、再び闇が訪れた。
しばらくしてエンジン音も鳴りを潜めた。
数秒の静寂。
のち、社長が誰かと話す声。女の人?
聞いたことのある声。だけど、誰だったか思い出せない。
俺は耳を研ぎ澄ました。
「遅かったな」
「申し訳ございません。高速が混んでまして……。」
「言い訳だな、減給。それから遅刻、寮を没収する!」
「そんな……また野良に逆戻りなの……。」
「不服か? ならば首にするまでだが」
「めっ、滅相もございません!」
「……直ぐに支度しろ!」
「はいっ!」
こっ、怖い……。
社長に逆らったら……。
女の人が支度ってやつに取りかかったようで、騒音が増えた。
それに混ざってコツコツという靴音。
徐々に大きくなっていった。
妙に緊張感がある。
色気みたいなものは全くない。
直感で、社長だって思った。
こっ、殺される……。
靴音が止み、車の後ろのドアが開いた。
うっすらと光が差してきた。
その直後、この日最も恐ろしいめにあった。
「少年。うちの商品に傷付けるんじゃないわよっ!」
(はっ、はひっ)
迫力満点。絶対に逆らえない……。
俺はとっさにキスを辞め、さくらから身を転がした。
そして、立ち上がった。
2つの意味で。
見られた。社長に見られた。たっているのを……。
「随分と粗末なものだな……。」
放っといてくれ! 高校生にも大きさには個人差はあるんだから。
と思いながらも、俺の脚は震えていた。
その震えは、脚の間にも伝わっていた。
不覚にも気持ちいい。
「大丈夫! 社長は、イッても大丈夫だからっ! おっぱいも、大丈夫だからっ!」
俺を気遣う、さくらボイス。
俺、自分が情けない。
でも、応援してくれる人がいる。
さくらチアがある。
だから、何とか堪えることができた。
最高の愛想笑い、坂本スマイルを社長にかました!
「えっへへへへっ! これくらい、朝飯前です……。」
「キモい。あっちへ行けっ!」
俺は言われた通り、あっちへ行った。
そして、イッた。
すっきり顔で、明るいところへ行った。
モンスターマシンがお目見えした。
ゴツいスポーツカー。
社長とさくらが話していた。
「本体価格、2億5000万。6億で200と思っていたが……。」
「今日なら、800はいけるかなっ」
「すごい自信だな。だったら、発注比率を変えるか」
「はい。こういうのは、たくさんあっても邪魔ですしっ!」
会話の意味がイマイチ分からない。
雰囲気的には、社長の当初の予測を上方修正した感じだ。
今日のさくらは絶好調みたい。俺もうれしい。
さぁ、撮影! 俺、がんばるっ!
======== キ リ ト リ ========
いつも、ありがとうございます。
坂本くん、張り切ってます。
どんな撮影現場になるのでしょう。それとも……。
坂本くんの物語の続きは、6月5日(金)に公開予定です。
それまでの月から水は、佐倉菜花の物語を更新してまいります。
この作品・登場人物・作者を応援してやんよって方は、♡や☆、
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