第8話 赤鬼に見えた叔父(良二)さん
花子さんの表情は硬かった。口調もいつもよりぶっきらぼうだ。何かあるのだろう…。
私は、自分が見たままのことを話した。と言っても、叔父さん?が怒った表情の赤鬼に見えたってことだけだけど…。ま、普通はそんな風には見えないよね?
話を聞いてから、黙りこくっていた花子さんに今度はこっちからの仕返しとばかりに、質問攻撃をしてしまった。叔父さんってどういう人なの?何故花子さんは、驚かなかったの?
叔父さんは、花子さんの父親、つまり月子ちゃんのお父さんの弟で、その奥さんである叔母さんは花子さんの母親、月子ちゃんのお母さんの妹らしい。何だかこんがらがっちゃう…え?兄弟が姉妹と結婚したの?いいの…?
んー、つまり?特赦な能力を濃く保つために、出来るだけ近親関係にある、所謂血族結婚?が必要である…ってこと?何だか、遺伝子的には本当はあまりよくないんじゃないかって、生物学をしらない私でも思うのだけど、時代が違うからいいのか?…。
でもって、何故叔父さんが赤鬼に見えても驚かないのか?って聞くと、叔父さんは、誰に対してもにこにこ笑顔で、優しいのだけど、本当のところは心の底で怒っているんじゃないかって疑っていたからなんだって…。
怒っているって思う理由って何なんだろう?
叔母さんは、いつも月子ちゃんには優しいけど、花子さんには素っ気ないらしい。それも理由があるようだけど、分からないというか知らされていない。両親やおばあ様は知っているのに、自分だけは蚊帳の外って感じで、花子さんとしても落ち着かないようだ。
花子さんの話しぶりを見ていて思うのだけど、どうも叔母さんよりも叔父さんの方が好きなようだ。私がそれを問うと、ちょっとはにかんで亡くなった父親にとってもよく似ているから…と話してくれた。
叔母さん=高坂つばきさんは、宇喜多家の長女で、月子ちゃん達の母親であるさくらさんは次女になるようだ。本来は、本家の長女が跡を継ぐのが習わしであるようだけど、つばきさんには何の能力も現れなかったらしい…。
だからかな?ほんの少し力を持つさくらさんが後継者となって宇喜多家を名乗り、分家でも血の濃い高坂家の兄弟の長男を婿として家に入れ、妹のつばきさんは高坂家に嫁ぐことにしたようだ。
恐らく、どちらかの家に能力のある子どもが生まれてきても、無理なく後継者にできるよう、調整をしたのだろう。宇喜多の本家に最初に生まれたのが、花子さんだけど、特殊な能力の発現はなかったようだ。
え?でも、全く無いの?ここ重要じゃない?
回りくどい言い方をするよりも、単刀直入に花子さんに聞いてしまう方がいいだろう。私は決断した。つまり、質問しただけなんだけどね。
「花子さん、本当に何の能力もないの?」
花子さんは少しもじもじしてから、私に小さい石を拾ってから渡してくれた。
「手のひらに置いて、動かさないでジッと見ててくれる?」
言われたように、ジッと石を見ていたら、ゆっくりだけど確実に動くのが分かった。
えー?何これー?
「実はね、少しだけモノを動かせるの…。お母さまはご存じよ。
でもね、皆に内緒なの。皆が期待している能力は、人の心の中が読める能力だから…。お母さまにも同じようにモノを動かす力があるのよ。だから婿養子を頂くことになってしまったのだけど、本当はこんな力は役に立たない…。
人の心が読める後継者が一族としては欲しかったみたいだから。
月ちゃんが生まれてきて、一族が欲していた能力があることが徐々に分かって、きっと皆ほっとしていると思うのよ。
私は、月ちゃんに能力があることは、嬉しいことだし、羨しいことだけど妹に重い糧を背負わせてしまったようで、いつも申し訳ないって思うの。
月ちゃんは決して辛いって言わないけど、やっぱり人の心を読むのは負担じゃないかって…。どんな時でもニコニコ笑ってお姉ちゃんって慕ってくれる月ちゃんに私は救われてきたの。だから、何があっても、どんなときでも助けてあげたいって思うんだ。」
少し遠い目をして話す花子さんは、きっと私の奥に隠れている月子ちゃんに向かって話しているのだろう。
姉妹って、お互いに持っているモノと持っていないモノを比べてしまいがちだけど、花子さんはそれを超えた妹思いの優しい姉なのだと感じた。守りたいって言った言葉は、私の中に強くある楓への気持ちと重なって、偽りのない言霊として響いた。
花子さんの妹への想いを聞きながら、勾玉と一緒に入れている赤い玉を思い出した。何でかって?だって、ちょっと重くなったような気がしたんだもん。
でも、花子さんがつばき叔母さんを嫌う理由って?
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