第1話 運命という罪


私は彼女の質問について考えた。

「あなたは悪い人?」

当たり前だと思う?いや、違う。この子は血まみれで、更には無傷だった。彼女が人を殺したのか…、普通ならここで結論は終わる。でも、私は彼女に過去の自分を重ねていた。彼女は誰かから身を守るために殺したのか…、私にはなかった思想だ。

「ねぇ、あなたは1人なの?もしも辛いことがあったならお姉さんに相談して!これでも結構な経験者なんだから!」

私がそう答えると彼女は笑いだした。

「ふふ、あなたみたいな純粋な人が悪い人なわけないよね。ごめんなさい。」

彼女は立ち上がり、私の前を去ろうとした。その時、私は不意にこう言ってしまった。

「え、えっと。親とかいないみたいだし…、その…私がお姉ちゃんとして養ってあげるよ。」

彼女は立ち止まり呟いた。

「ふ〜ん、こんなの見ても怖くないんだ。ねぇ、私の目を見てよ。」

彼女が振り向くと一瞬だが全身に電気が走ったような感覚に襲われた。その時の彼女の目は…真っ黒だった。


「そっか、これがあなたなりの罪滅ぼし。それならいいよ。私はそういう人には手を貸してあげたいから。」

ふと気がつくと彼女の雰囲気はガラリと変わっていた。何の変哲もないただの少女だった。

「あ、でも、私にはお姉ちゃんがいるから、あなたがお姉ちゃんにはなれないけど、どうしよう?」

そう戸惑う様子はまさにただの幼い少女で、先程までが嘘のように違った。

「大丈夫。お姉ちゃんじゃなくてもいいから。ただあなたが放っておけなかっただけ。」

それを聞いた少女は笑った。

「うん、ありがとう!」

その笑顔にはどことなく変な雰囲気があったが、私は気にせずに笑い返した。

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