第1316話 ヌーの親切心
「お主どういう風の吹きまわしだ?」
二回に分けて『ミスズ』達と『ヒノエ』達を移動させると告げようとしていたソフィだったが、突然のヌーの提案にソフィは、張本人に尋ねずにはいられなかったようである。
「ふんっ! てめぇが『
「……」
ソフィはちらりとセルバスを見るが、セルバスもヌーを見て驚いていた。
先程のヌーの言葉通りであるならば、わざわざ許可を取るように『セルバス』を指差して『こいつも一緒に連れていけ』と約束させようとはしないだろう。確かに半分は本音なのだろうが、しかしもう半分は『セルバス』を思っての発言であることは間違がなかった。
「クックック……」
どうやら照れ隠しで捲し立てたのだろうというところまでセットで理解したソフィは、ヌーを見てこみ上げてくる笑みを隠し切れずに、声を出して笑うのであった。
ソフィとヌー達の会話を理解しようと黙って聞いていたミスズだったが、確かに自分達の都合で協力をして頂いているというのに、これ以上迷惑をかけてはいけないと判断したようだった。
「ソフィ殿、ヌー殿。時間を取らせてしまって申し訳ない。ではヌー殿に我々を『加護の森』へ送って頂いても構いませんか? ソフィ殿は出来ればヒノエ組長達を『ケイノト』に運んで頂きたいのですが……」
「うむ。それとすまないが、ヌーの言葉通りにそやつも連れて行ってやってくれないか? そやつも色々と頼りになる奴だから、このままここで留守番をさせるよりはいい筈なのでな」
ソフィはセルバスの方を一瞥した後に、ミスズに一緒に『加護の森』へ連れていってやってくれと頼むのであった。
「分かりました。そこに居るセルバス殿を我々と共に行動をすることは許可はしますが、あの『ヒュウガ』殿に付き従っている『妖魔召士』達は全員が侮れない強さを持っているということは忘れないで下さい。我々も出来るだけ危害を加えられないように注意はしますが、セルバス殿に行動を共にしても絶対に安心だといえる程の余裕は、我々も持ち合わせてはいませんので」
――そう話すミスズの言葉は本心だろう。
どうやら『ヒュウガ一派』達は、これまでソフィも相手をしてきた『妖魔召士』達とは、少しばかり意味が違うのだろうと感じられるのだった。
「お主もそれでいいな?」
「も、もちろんです旦那! そ、それにヌーもありがとな!」
どうやら『シグレ』の力になってやりたいと考えていたセルバスは、御膳立てをしてくれた『ヌー』に感動したようで普段であれば絶対に言わないであろう感謝の言葉を『友人』に対して告げるのであった。
「ふんっ! てめぇも『
そう言って腕を組んだまま、セルバスから顔を逸らすヌーであった。
「ああ……。お前の言う通りだな。惚れた女のためなら命を捨てる覚悟くらい持たなきゃな」
どうやらセルバスも肚が決まったのだろう。
セルバスは『
もうミスズはソフィやヌーにセルバス達の会話を理解しようとしたのを諦めたようで、どういう意図なのかと考えるの放棄して成り行きを見守りながら、素直に会話が終わるのを待っていたようであった。
「それではヌー殿、我々を『加護の森』へお願いしますね」
「ああ。お前とそこに居る連中に、
ヌーはミスズの直接の部下である『特務』の『ナギリ』と『カヤ』。そしてスオウに彼の組の副組長である『サシャ』に、そのスオウの組の隊士達を順々に視線を送りながら確かめて、そう告げるのだった。
「はい。よろしくお願いします」
「
ヌーはこの中でソフィを除いて一番無視が出来ない存在であった『シゲン』の方に視線を送った。
「ああ。私も『ヒュウガ殿』の件以外にも色々と抱えているものでね。それに『ヒュウガ一派』の一件は全て副総長であるミスズに託してある。すまないがヌー殿、此度の件はよろしくお願いする」
そう言って総長シゲンはヌーに軽く頭を下げて頼むのであった。
「そうかよ」
ヌーも軽く首を縦に振って『シゲン』の言葉に頷いた。
「じゃあソフィ。俺は先にこいつらを『加護の森』へ向かう。お前に後で『
「クックック……! 分かっておる。お主も死ぬなよ?」
「はっ! てめぇは誰にモノを言っていやがる? なぁテア?」
そう言ってヌーはテアの肩に手を回しながら、鋭利な歯を見せながら笑うのだった。
「――」(はいはい)
テアは舌を出しながら適当な相槌をヌーにうつのであった。
「じゃあ、もういいか? 俺は魔力の余波でこの建物が吹っ飛ぼうが気にしねぇが、少しでも建物が崩れる確率を下げたいなら、俺に近づいておけよ? 今後、野ざらしで仕事をしたくねぇんだったらな」
ククッと厭味な笑みを浮かべてヌーがそう言うと、慌ててミスズやスオウ達はヌーの身体に近づくのであった。
「じゃあ、行くぜ」
歯を見せて笑みを浮かべていたヌーは、真剣な表情になったかと思うと目を『金色』にさせながら『魔力回路』から迸る程の魔力を開放する。
――「『
次の瞬間、ばしゅんっという音と主に一斉にヌー達は姿を消すのだった。
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