第1182話 子供のような一面を見せるミスズ
ソフィが『魔法』でゲンロク達の里へ向かえるという事をミスズ達に伝えた後、ミスズは色々と作戦を練り直していたようだが、直ぐにソフィに里へ送って欲しいと伝えるのだった。
そしてそこに丁度、準備を整え終えたのであろう最高幹部の『ヒノエ』組長と『スオウ』組長が、ほぼ同時にソフィ達の居る部屋へと姿を見せるのだった。
「こっちの準備は終わりましたよ。今から早速『旅籠町』の方に向かいますがいいですか?」
シゲンとミスズの両方に視線を送りながら、ゾロゾロと自分の組の隊士達を従えたヒノエがそう口に出すのだった。
「例の『妖魔召士』達の見張りの方はどうなっていますか?」
「そっちは大丈夫です。私の組から指折りの者達を、数人程出して見張らせています」
ヒノエ組長の一組に所属している隊士達は、その誰もが『ナギリ』や『カヤ』といったミスズが目を掛けて育てている『特務』の隊士達より現時点では強く、妖魔召士達の『魔瞳』をあっさりと回避出来るだけの力を既に有する完成された優秀な戦闘員達という事になる。それにヒノエ組長が任せても大丈夫だと思った数人である以上、ミスズは何も心配せずに頷いたのであった。
「こっちも準備は出来ましたよ。いつでも動けます」
ヒノエに遅れをとってなるものかとばかりに、スオウ組長もシゲンとミスズにそう報告をするのだった。
「分かりました。それではシゲン総長、私がソフィ殿とゲンロク殿の里に向かいますから、後の事は総長にお任せします。こちらの時間が掛かりそうだと判断されましたら、最初の作戦通りにお願いします」
「ああ、分かっている。ギリギリまでは本部で待機しておくが、間に合わないと判断したら『スオウ』組長を『ケイノト』へ向かわせて『キョウカ』組長達と合流させるぞ」
「はい、分かっています」
当初の目的通りであれば、現在この本部に捕らえている妖魔召士達を解放させて『ヒュウガ』の元へ向かわせた後、予備群を使って後をつけさせるという作戦だった。その予備群の代わりにスオウ組長達を使おうというのである。
「それではソフィ殿、こちらはいつでも構いませんのでお願いしますね」
ある程度の作戦の取り決めは決まっているようで、どうやら『ゲンロク』殿の所へ向かうのは副総長のミスズだけという事らしい。ソフィはそう判断して視線をミスズに送ると直ぐにミスズはソフィに頷きを見せた。どうやらソフィが移動を行える『魔法』というモノを、ミスズは信じて少しも疑ってはいないようであった。
ソフィはこれまでのミスズはもっと慎重なように見えており『魔法』で里までひとっ飛び出来ると伝えてもこれ程までに信用してもらえるとは思っていなかった。しかし今のミスズは、ソフィが使えると言った言葉を完全に信用仕切っていて、一切の疑いを持っているようには感じられなかった。
これはミスズがソフィに対して信用に足る存在だと判断したからなのだが、その事を理解していないソフィには『何かミスズ殿に心境の変化があったのだろうか』と考えるのであった。しかし今は『ゲンロク』殿の里へ向かうのが先だと考えてその思考を止めるのであった。
「それでは『ゲンロク』殿の元へ行くが、お主らもいいな?」
そう言ってソフィはヌー達に視線を送ると、皆一様に頷きを見せた。
――『
次の瞬間、ソフィ達は『サカダイ』の妖魔退魔師本部から、忽然と姿を消すのであった。
「と、とんでもねぇな……!」
『ヒノエ』は目の前で消えて行ったソフィ達の居た場所を見つめながら、驚きの声をあげるのであった。
……
……
……
ソフィの『
「う、うわぁ! これは凄いですね、ソフィ殿!」
初めて妖魔召士以外の者達が使う『魔法』を見るだけではなく自らも体感した事で、ミスズは興奮気味に目をキラキラとさせて周囲を見ながら本部に居る『ヒノエ』と同じように、こちらも驚きの声を挙げるのだった。
まるで子供のような一面を見せているミスズに、ソフィは静かに笑いながら口を開いた。
「クックック、ミスズ殿。もう手を離してもらっても構わぬよ?」
「え……? あ! す、すみませんソフィ殿」
移動を行う前にソフィにどこか掴むように言われていたミスズは、着地した後も興奮気味に辺りを見回しながら、ずっとソフィの服の裾を掴んだままだった為に、指摘されて顔を赤らめながら慌ててその手を離すのであった。
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