第1114話 折角のお言葉
「彼はミスズ様の直属の部下で『
最高幹部と言っていた目の前のスオウ組長が命令ではなくて、無理を言って手伝ってもらっていたというくらいなのだか『
ソフィはその話を聞いて成程と心の中で頷く。この町に来た時に取り囲まれたソフィだが、その前に一番最初に目が行ったのは町の右奥でこちらを睨んでいたそのナギリだった。
どうやらソフィが目をつけた男は『
スオウはソフィがナギリの話を始めた時から、これまでとは違う闘志のようなものが漲っているのを感じ取っていた。思えばサカダイの町に入った時、彼は最初にナギリに目をつけていた。
最初に『
「そうだね、君の連れのヌーと言ったかな。彼が目を覚ますまでの間、今からナギリに会ってみるかい?」
町を案内しようと考えていたスオウだったが、強く彼がナギリに会いたがっていると感じ取った為、そのプランを頭の片隅に追いやり、彼の願いを叶えてあげようとするのだった。
「よいのか? 別に我は仕事の邪魔をするつもりはないが」
ソフィは特務専門部署といったところがどういう仕事をしているのかは分からないが、その名称からも特別な業務が課せられているだろうという事は理解が出来る。
最高幹部のスオウが頼めば確かに従って会ってくれるだろうが、単に会ってみたいという理由だけで彼らの仕事の邪魔をするつもりはソフィにはなかった。
「それを言うならもう先に俺が彼らの仕事を中断させていたわけだしね。今更だよソフィ殿。それにコウゾウが帰ってくれば、彼はコウゾウにサカダイでの仕事を教える為に、更に忙しくなるだろうから今日くらいは休んでもらった方が、彼の為でもあるんだよね」
「報告の為に後からコウゾウ殿がサカダイに来るという話は、旅籠町の方で聞いてはいたが、コウゾウ殿は今後この『サカダイ』に仕事場を移すという事なのか」
ソフィの質問にスオウはまた『しまった』というような表情を浮かべ始める。どうやらこの事はまだ彼らだけの内密な話だったのだろう。
「どうしてだか分からないけど、キミといると『
困ったものだよとボヤきながらもどうやらここまで話をしてしまえば、後は一緒だとばかりにスオウは一度だけ副組長のサシャを一瞥した後、再び彼らだけに知らされている『コウゾウ』の内情を説明してくれるのだった。
「元々コウゾウはうちの副総長に気に入られていてね。本来であればナギリと同じ『特務専門部署』で仕事をする筈だったのだけど、コウゾウがまだ自分には早いって言ってきかなくてね。治安が悪い場所への派遣を副総長に申し出て飛び出して行っちゃったんだよねぇ。ミスズ副総長からしたら、さっさと自分の部下に加えて、
旅籠町でコウゾウはソフィ達に自分は一介の『
ソフィはそう言えば彼に最初にあった時、その洞察力が優れていたところを見たことがあった。ああいう一面だけであっても彼が優秀だったのだという事はよく分かるソフィであった。
「成程な……。そういえば旅籠の護衛副隊長のシグレ殿は、コウゾウ殿が来る前は旅籠町で護衛隊長をやる事になっていたと言っていたが、そういう理由で後からコウゾウ殿が『
スオウは旅籠町での事は詳しくは知らない為、途中からはそういう事情だったのかと納得するソフィに相槌を打つに留まるのであった。
「よし、そんなわけだからナギリに会ってみたいなら、俺が彼の元へ直接案内をするけどどうする?」
「すまぬな、それではよろしく頼む」
本当に構わないよとばかりにスオウに勧められたソフィは、折角の機会だと納得して御言葉に甘える事にするのであった。
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