第1100話 妖魔の王連
「この牢部屋の中にお主達の仲間の『
地下に降りてきてから多くの個別牢の部屋を通って来たヒュウガ達だが、ようやくキネツグ達の居る部屋に辿り着いたようである。
コウゾウの言葉を聞いたヒュウガだったが、その部屋に意識を向ける前にもう一つ奥の一際大きい牢部屋を一瞥する。僅かな時間そちらを見ていたヒュウガだったが、直ぐに笑顔になって案内された部屋に目を向き直す。
「ご苦労様です、それでは中を開けて頂けますか?」
「……」
ここまで案内させられた以上は渋ったところで仕方がないとばかりに、陰鬱な表情を浮かべたままで、コウゾウは牢部屋を開けるのだった。
開いた扉の先にヒュウガ達が合流を目的としていた者達『
扉が開いた事に直ぐに気づいたキネツグ達だったが、言葉を出す事もせずに必死に意識だけをこちらを向けているのだった。
「やれやれ……。妖魔を従える事の出来る高尚な『
「「ひゅ、ヒュウガ様!?」」
突然聞こえて来た自分達の上司と呼べる者の声を聞いた二人は、もぞもぞと一際大きな動きを床の上で見せた後に驚いた声をあげるのだった。
「大変でしたねぇ、でももう大丈夫ですよ」
ヒュウガは転がっている二人の元にまで足を運んだ後『
突然の明るい視界が開けた事で眩しそうに二人は目を逸らすが、直ぐにヒュウガの姿を見ると、ほっと安堵するような表情に変えた。
「し、しかしヒュウガ様が何故……、ここに?」
この場所にヒュウガが来る事など露程にも思っていなかった二人は、信じられないとばかりにヒュウガの顔を視線に捉えながら告げる。
「全く何を言っているのか。大事な私の仲間が『
「はい。その通りです。しかし全く……! ヒュウガ様が二人組を狙えとは申されはしたが『
「す、すみません……」
「すみません!」
ヒュウガの側近の一人『ジンゼン』がヒュウガの代わりに説教をすると、その『ジンゼン』よりも位が低い『キネツグ』と『チアキ』は素直に謝罪の言葉を告げる。
「まぁその辺の話はここを出てからにしましょう。早めにここを出なければ、いつまた『
「ハッ!」
ヒュウガに返事をした側近の『
牢の入り口で様子を窺っていたコウゾウは、無言で右手を腰鞘に手を伸ばすと今が好機だとばかりに、意識がキネツグ達に向かっているヒュウガ達に襲い掛かるのだった。
しかし一気に距離を詰めたコウゾウが、抜いた刀でヒュウガの首を落とす前に、横からそのコウゾウの持つ刀の手をぬっと出てきた手によって掴まれてしまう。それはジンゼンが使役した『天狗』の式である『
「ぐっ……!」
刀を振り下ろそうとした状態で止められたことによって呻き声をあげたコウゾウに、他の者達が一斉に振り返る。
「全く油断も隙もありませんねぇ、王連よく防いでくれました」
「カッカッカ、儂を出したままにしておいて正解だったな人間共」
『
更に今も本気で力を込めて振り下ろそうとしているコウゾウに余裕綽々といった様子で、片手で受け止めていた妖魔『
「ぐっ……! ぐぅっ……!! ぬぅっ!!」
王連の強い握力でコウゾウの手が握り潰されそうになり、その痛みに耐えられなくなったコウゾウの手から刀が落ちてしまう。そしてヒュウガは床に転がったコウゾウの刀を拾い上げる。
「ふふ……。やはり貴方は
そう口にした後に何とヒュウガは、そのコウゾウの刀を持ち主の首へと振り下ろした。
「あ」
『
ざしゅっという音と共に『コウゾウ』の首が深く斬られて血飛沫が上がる。
「ほっほっほ。いい刀ですねぇ? 素晴らしい切れ味ですよ? コウゾウ殿」
ヒュウガはコウゾウの返り血を浴びながらそう告げると、その刀を横に居る王連へと渡すと再びニヤリと笑う。
意図を理解した王連は左手でそのコウゾウの刀を受け取ると、ヒュウガによって首を斬られた事で力が伴わなくなって、その場に崩れ落ちたコウゾウの首を目掛けて全力で横凪ぎに刀を振り切った。
恐ろしい怪力を持つ天狗の妖魔『王連』の全力で振り切った刀によって、胴体から首がゴトリと音を立てながら落ちて『
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