第1059話 組織からの除籍処分

「確かに貴方の仰る通り、我々は許されないでしょうね。向こうがどんな条件を出してきたとしても貴方に私どもを助けるつもりがない以上、待っているのは絶望だけだ」


 数秒間程『ゲンロク』を睨んでいたヒュウガだったが、謝罪を述べていた時と違って何やらヒュウガの言葉に強い意志のようなものが、感じられた『ゲンロク』であった。


「それは当然の事だな。ワシの言う事を全く聞かずに好き勝手働きおって、前回あれだけ分からせてやったというのにこの始末じゃ手に負えんぞ。そんな奴らを庇うのはほとほと嫌気がさしてくるというものじゃ!」


 ゲンロクはヒュウガの行いに一度目は大事な仲間だと思って目を瞑った。当然その時もけじめはしっかりと取ったが、それはヒュウガがした事に対するゲンロクの思いの強さを知ってもらう為に行ったのである。


 だが、どうやらゲンロクの想いはこのヒュウガには届いていなかったようだ。

 ソフィ殿達を襲わせた理由は『妖魔召士ようましょうし』の事を想ってではなく、どうせ自分勝手な思い付きでしかなかったのだろう。自分の思い通りにいかない事で癇癪かんしゃくを起こす子供のように怒りを伴って喚いた挙句に、自分の言う事を聞く者達に襲わせたのだと簡単に推測がつくゲンロクであった。


 このような者をいつまでも組織のNo.2に置いておく事は出来ない。

 割り当てた仕事に対しては、忠実にこなす事の出来る逸材ではあったが、思い付きやその時の感情で、取り返しのつかないような事を引き起こすヒュウガは『妖魔召士ようましょうし』の組織に相応しくはない。


「よく分かっているじゃないかヒュウガ。だがこれまでの功績を考慮して、最後にお前を『妖魔退魔師ようまたいまし』の者達から


 このまま部屋を出ていけと言われると思っていたヒュウガ達は、突然の温情が感じられるゲンロクの言葉に少し驚いた様子で、ゲンロクに視線を向けるのであった。


「この場でお前達をこの『妖魔召士ようましょうし』の組織から脱退させる。お前達がもう『妖魔召士ようましょうし』と名乗る事は許さぬ」


「は?」


「『ヒュウガ』『キクゾウ』!!」


「「!!」」


(※『妖魔召士ようましょうし』の除籍処分とはこれまで組織の為に行ってきた者に対して、功績を考慮した上で引退をさせる事である。今後は『妖魔召士ようましょうし』と名乗る事は許されないが、処分を決めた者が処分をさせる者に対して、これまでの働きを踏まえて組織を抜ける時に決して少なくはない額の金子が支払われて、今後は隠居の身とさせる為、屋敷や土地を譲り渡す場合もある)。


 キクゾウは金子だけかもしれないが、ヒュウガは組織の最高幹部の一人であった為、ゲンロクからは相当に大きな屋敷や土地を譲り渡される事になるだろう。


 本人を含めた円満な引退であれば、除籍処分であっても納得の行く形でヒュウガや、キクゾウは余生を過ごす事が出来るだろうが、この両名はゲンロクから言い渡された処分内容に不服な様子であった。


「こ、このお飾りの長がぁっ! いつまで上の立場に居るつもりなのだ。お前はもう組織のトップに相応しくはない! 逆にこちらからお前を処分してやるわぁっ!」


 『ヒュウガ』の目が青く輝いたかと思うと、可視化される程の膨大な『魔力』が『ヒュウガ』の身体に纏われ始めた。


「ひゅ、ヒュウガ様……!?」


「き、きさまぁ……、この期に及んでまだ逆らうつもりか!」


 ヒュウガが『青い目ブルー・アイ』を用いたと言う事は、組織の長であるゲンロクに対して弓を引くという行動の表れである。


 それを見たゲンロクも直ぐ様、目を青くさせて『青い目ブルー・アイ』を使い『妖魔召士ようましょうし』相手に対する対策を取るのであった。


 当然、結界を張っても居ない状態で上位以上の『妖魔召士ようましょうし』達が、これ程までの魔力を放てば、狭い里中にその魔力の奔流が伝わるのは自明の理であり、直ぐに大勢の『妖魔召士ようましょうし』達がこの場に集まってくる。


 『ゲンロク』を慕う『妖魔召士ようましょうし』に『ヒュウガ派』の『妖魔召士ようましょうし』達。


 同じ志を共にする筈の『改革派』であった『妖魔召士ようましょうし』達は、この時のヒュウガの行いによって、組織は再び激しい内部分裂を巻き起こす引き金を


 ……

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