第1013話 真剣勝負
「さぁ、姿を見せなさい『
チアキが放り投げた『式紙』からボンッという音と共に、頭に長い一角を持つ一体の鬼人が出現する。
『
どうやら鬼人の妖魔である自分を見ても動かないシグレの様子を見て、使役した『
「ちっ!」
チアキは『
どうやら現世に現れて直ぐに、攻撃をしようとする『
チアキの『
『
『
避ける事も防御する事も出来ない今の自分が相手では、一瞬で首の骨を折られて絶命させられてしまうだろう。
(コウゾウ隊長、申し訳ありません……)
目の前に迫った妖魔の手を見たシグレは、両目を瞑りながら心の中でそう呟くのであった。
「馬鹿野郎! 俺の護衛隊なら簡単に諦めるんじゃない!」
シグレは自分を叱咤する声に驚いて目を開ける。
シグレが目を開けた先、目の前まで迫って来ていた鬼人の右手をコウゾウの刀が斬り飛ばしたかと思えば、そのまま思いきり前蹴りで鬼人を吹き飛ばした。
「!?」
更に次の瞬間に『シグレ』は地に着いていた足が離れて、浮遊感に包まれたかと思うと、そのままコウゾウの胸の中に抱き寄せられた。
「えっ……、た、隊長!?」
彼の抱き寄せられた腕の中で『シグレ』が顔をあげるとそこには、自分に向けて笑みを向けてくれるコウゾウの顔があった。
「もう大丈夫だぞ。シグレ」
心の底から安心させてくれるような声でそう囁かれた為に、彼に抱きしめられているシグレは安堵感に包まれながら、顔を赤らめるのであった。
そしてそのままコウゾウはシグレを抱き抱えたまま、ソフィ達の前まで戻って来ると、ゆっくりとシグレの身体を離した。
シグレはコウゾウに感謝の言葉を告げようと視線をコウゾウに向けた瞬間、その背後から迫って来ていた先程の『鬼人』の姿が目に入った。
「た、隊長……! う、後ろ!!」
「分かっている」
シグレを離したその体勢のまま腰を低く落としたコウゾウは、距離を縮めて来る鬼人が、間合いに入るのを待った。
そして鬼人が背後を向いたままのコウゾウの背中目掛けて、再び手を伸ばしてきたその瞬間――。
まるで背中に目がついていたのかと思える程、的確に間合いに入り込んできた鬼人の胴体を振り向き様に、右手で持った刀で横凪ぎに斬り伏せる。
「ぐぅっ……っ!」
鬼人の固い皮膚をあっさりと貫いて胴を横に割いて行く。
『
そしてそのままコウゾウの刀が『英鬼』の胴を真っ二つにするかとそう思われた次の瞬間、コウゾウの刀がピタリと止まった。
「むっ……!」
コウゾウは固い皮膚の鬼人が更に固くなっていくのが、その刀を持つ手を通して理解させられていく。そしてそれと同時に、チアキの声が場に響き渡った。
「『
鬼人は苦しそうな声をあげながらもチアキの命令通りに、自分の胴体を貫こうとしている刀を持つ『コウゾウ』の手をガッチリ掴んだ。
ただの妖魔ではなく鬼人だからこそ出来る芸当と言うべきか、自分の身体は『コウゾウ』の刀に貫かれている状態である。皮膚を貫かれながらも、その相手の手を掴んできたのである。人間や他のランクの低い妖魔であれば、絶命していてもおかしくはない。
チアキの目が再び青くなり、更にチアキは高速で『印行』を結び始めると、苦しそうな声をあげている『
――捉術、『
「グォアアッ!!」
鬼人の『
「なっ……!?」
コウゾウは目の前で鬼人の傷口が塞がっていく様を見せられて、驚きの声をあげざるを得なかった。
みるみる内に傷が塞がっていったかと思うと『
刀を『
先程までも鬼人の妖魔として相当な力を持っていた『
もはや『予備群』であるコウゾウであっても、人間の身ではこの鬼人の妖魔には力では遠く及ばなくなってしまっていた。
「『
「グォアアッッ!!」
もはや使役者であるチアキの言葉もちゃんとは聞こえているのか怪しい英鬼だが、言われた通りに『コウゾウ』の首の骨を折ろうと手を伸ばして来る。
「さ、させませんよ!」
もう一人の予備群『シグレ』は刀を構え直すと、そのまま信じられない程の速度で『
「殺ったぁ!」
シグレは全体重を乗せるつもりで『
「う、嘘!? そ、そんな馬鹿な……!!」
殺すつもりで本気で差し入れた自分の刀が真っ二つに折れて驚いているところに、コウゾウを掴んでいる手の反対側の手で『
「ぎゃんっ!」
シグレは鼻血を出しながらそのまま後ろへ吹っ飛ばされる。そしてそのまま痙攣を引き起こしながら、地面に横たわる。たった一発で、予備群のシグレは戦闘不能にされてしまった。
「し、シグレ……っ! グァッ!?」
やられたシグレに声を掛けようとしたところに、今度コウゾウの首を『
「グォアアア!!!」
「ぐっ……っ、あああっ!!」
『
「ひゃはははは! よしいいぞ、いいぞ『
チアキの言葉を聞きながら、コウゾウはそのまま死を覚悟した。
――その時であった。
金色のオーラを纏ったソフィが『
『
「コウゾウ殿とシグレ殿の心意気はしかと見させてもらった。ここからは、我に代わってもらうぞ」
『
……
……
……
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