第985話 横暴な新人
『
トウジは表面上ではにこやかに対応をしていたつもりだが、内心では恐怖心を抱きながら何故自分が疑われているのかと、そればかりを考えながらユウゲの質問に答えていた。
彼自身にはイツキに疑惑を持たれるような、そのような隠し事は一切しているつもりはない。しかしそれでもトウジは、イツキに良くない印象を持たれていたというだけで、恐怖心が仕事に支障をきたす程でまるで物事を考えられなくなる。
先代『
どうやらユウゲ殿は納得してもらえたみたいだが、遣いを出されたという事は、何やら大きな疑惑が俺にはあるようだ。一度イツキ様としっかりと話し合わなくてはいけないだろう。そこまで考えたトウジだったが、そこでユウゲが再び口を開いた。
…………
「この部屋の前に居た新人は何やら特別扱いをされているようだが、そんなにもあの男は
イツキの元へ帰ろうとしていたユウゲが最後に新人の事を口にする。
しかしその新人の事をトウジに訊ねた瞬間『
「? トウジ殿、どうかされたのか?」
……
……
……
スキンヘッドの男『ヒロキ』は不満そうな表情を浮かべながらボスの部屋から渋々と出て来る。
彼は二代目の『
ユウゲ殿は『
「話が終わるまでは待つしかないか」
ヒロキはそう独り言つと、そこでようやく自分を見ている視線に気づいた。視線の先には、つい先日入ったばかりの新人『セルバス』が居た。
ボスから彼を組織に引き入れて相当に気に入られている様子であり、本来『
先程の中庭で警備をしていた者達でさえ、相当に長い期間の下積みを行って、ようやくアジト住みを許された者達である。
そうだというのにこのセルバスという男は、堂々とアジトの中でふんぞり返って、好き放題を許されている。
その内誰かが彼に我慢出来ずに、跳ねっかえりを引き起こしかねないと視線の先に居るセルバスを見ながらふと考えるヒロキであった。
そしてそんなヒロキに視線を向けていたセルバスは、ゆっくりと彼の元へと歩いてくる。
「よう、先輩」
「何だ? また酒が無くなったという話か? 保管庫から、自由に取ってきていいと言われているだろう」
「いや、酒の事じゃないんだ。ちょっとばかし、アンタに訊いておきたい事ができてなぁ」
ヒロキも『
そんな彼は新人がアンタ呼ばわりしながら、何かを聞き出そうとしてくる事に、少しばかり腹を立て始めていた。
「何だ?」
しかしここで冷静さを欠いて、暴力でも振るおうものなら『
ぐっと堪えながら『ヒロキ』は、セルバスに何が訊きたいんだとばかりに、冷静に返事をするのであった。
「さっき『ボス』の部屋に入って行った、あの男は何者なんだ?」
……
……
……
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