第952話 提案と本音
「ソフィ殿。何やら俺に話があると聞いたのだが」
ソフィ達の居る部屋に入ってきたコウゾウは『
「おお、公務中にすまぬなコウゾウ殿」
お茶を横に置いた後にソフィは居を正しながらコウゾウに告げる。
「それは構わないぞ。今は『
そう言うとコウゾウも腰に差していた刀を横に置きながら座る。
「そうか。まぁ今から話す事は直接は『
含みのある言い方をするソフィにコウゾウは首を傾げる。
「今回の作戦だが、上手くいって『
「それは……、屯所で起こした『
どうやらある程度予想がついていたのかコウゾウは、直ぐにソフィに聞き返してくるのであった。
「うむ、そうだ。元々『
「……」
コウゾウは今ソフィが告げた言葉は嘘だとすぐに気づいた。あの部屋の中を調べた時、そんな
…………
当然、今ソフィが告げた言葉は、ヌーを助けるための嘘の言葉である。
しかし説得力を持たせる為に、ソフィは目を金色にしたかと思えば、三色のオーラを同時に体現させて、戦力値を高める。
ソフィはサカダイの『
しかしこの屯所に来た時に、この屯所に居る護衛隊達の戦力値を普段の形態では、測定出来なかったことを踏まえて、ある程度の力を示さなければ、本気にしてもらえないと考えたのだ。
そこまで考えたソフィは目の前に居るコウゾウが見過ごせないと感じられるように、戦力値を3000億程度まで上昇させた。これは先程奴らの宿の中で呼び出した『魔神』から、ある程度の『魔力』を引き出していた為、この形態であっても出せる限度の数値であった。
これ以上の戦力値が必要と感じるならば、再び魔神を呼び出して魔力を返還してもらわなくてはならなくなるが、今のソフィの力を前に『コウゾウ』は脂汗を流している。
どうやら『
「もちろん『
これは先程のウソの言葉では無く、間違いなくソフィの本音でもあった。本音と嘘が入り混じったソフィの言葉。その上に説得力を持たせる威圧感。更には『
ソフィという大魔王の重圧をその身に浴びながらコウゾウはしかし、完全に呑まれる事は無く、冷静にとまではいわないが、先程の条件を考慮するように考え始める。
目を金色にさせながらソフィは、その完全な魔力のコントロールで、全ての威圧をコウゾウにのみ向けている。
今のソフィに無理やり『
「分かった……。奴らが犯罪者だという事を考慮して、先程のヌー殿の行いに関しては、前向きに検討しよう。しかし『
「うむ、いいだろう。ヌーの件を考えてくれるというのなら、いくらでも我はお主に協力しよう」
「それとソフィ殿『
「分かった。お主の言う通りにしよう」
ソフィはコウゾウが頷いたのを確認した後、纏っていたオーラを消して通常の状態へと『魔力』を戻すのであった。
その様子を見ていたヌーは色々と思うところはあったが、何よりもヌーは改めてソフィという壁の高さを思い知るのであった。
直接ソフィの魔力を感知するような危険な真似はしなかったヌーだが、それでも先程の魔力は明らかに自分やミラを越えていた。
あれだけの力を放出しておいて、周りに魔力の余波を一切向けさせず、何事も無かったかのように、その力を消していた。
自分の魔力を完全にコントロールする事は、最上位の大魔王であっても難しい。
如何に自分の魔力が高かろうとも戦闘で使う魔力は、よくて自身の最大魔力の九割程であり、それ以上の魔力を使うとなれば、どうしても負けられない戦いに挑む時であり、そんな時であっても極力は自爆を避けるために、極大魔法はギリギリまで使えないだろう。
だが、先程のソフィの行った魔力コントロールは、完全に自分の魔力を管理下においていた。つまりヌーにしてみれば、恐ろしい程の先程の魔力でさえ、奴にとってはすんなり制御が出来る程度の魔力だったという事である。
(まるで底が見えねぇ、こいつに全力を出させる事の出来る奴なんざ、過去・未来・あらゆる世界を含めて、存在なんかしやがるのか? 色んな世界を見てきた俺だが、出て来る気がしねぇ……)
そう言いながらもヌーは、手を強く握りしめながら笑みを浮かべて、意欲を滾らせるのであった。
――だったらいずれ、この俺が越えてやるよ。
……
……
……
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