第865話 手掛かりを追う
「成程……。しかし感謝するぞエイジ殿。エヴィの居所までは分からなかったが、手掛かりを掴めたのは大きい」
ソフィが本心からそう言うと、エイジも頷きを見せた。
「しかし当然『ゲンロク』が襲われたという話は『退魔組』にも知れ渡っているだろうし、情報では『イダラマ』もまたこの町から姿を消している。近隣の里も『ゲンロク』の支配下にある以上、近くにはもう居ないだろうな」
可能性があるとすれば『ゲンロク』の支配圏では無い隣町の『
「ゲンロクとかいう者がいる里の場所は分かるか?」
唐突にソフィがそう言うが、この町に居る確率は低いと話した時からその質問をされるだろうと判断していたエイジは直ぐに口を開いた。
「この『ケイノト』の町より更に北へ進んだ先に『ゲンロク』の現在の根城にしている里がある。結界が施されている為に里に入れば直ぐに感知されるし、当然襲撃を受けた後の今は警備も当然厳しくなっているだろう」
やんわりとゲンロクの元へと向かう事は止めた方がいいとそう告げるエイジだったが、ソフィは首を横に振った後に口を開く。
「ここから北か。ひとまずゲンロクという男に会って事情を聞かねばなるまい。我々は里を襲いに行く訳では無いのだから、別に見つかったところで問題はなかろう」
ソフィがそう言うと、隣で聞いていたヌーも頷いた。
「確かに先程訪れた『
行く事をやんわりと止めるエイジとは裏腹に、シュウは向かうなら確かに今が一番いいだろうとそう告げるのだった。エイジはシュウに視線を向けるが、シュウは視線をソフィに向けたままである。仕方なくエイジもまた、ソフィに視線を移しながら口を開く。
「確かにこの町に居る『退魔組」の連中は直ぐに動く事は出来ないだろうが、ゲンロクの居る里には厳密にはゲンロクの配下というワケでは無いのだが、複数の『
どうやらエイジはソフィを死なせたくないらしく、ゲンロクの元へ向かわせたくはないらしい。
「だが、探している少年の居場所を突き止めるのならば、ゲンロク殿から情報を得るしかないだろうな」
しかし止めようとするエイジに反して再びエイジは、ソフィをゲンロクの元へ向かわせようとするような言動で煽ってみせるのだった。
「そもそもこの世界へ来た目的がエヴィなのだ。居場所の手掛かりがあるというのなら、向かわない手は無いだろう」
「ソフィの言う通りだ。無駄にこの町に滞在していてもいつかは『退魔組」とやらの人間に見つかるだけだ。エヴィを見つけに行くなら、こちらから動かなければならないだろう」
ヌーもまたゲンロクの元へ向かう意見に好意的な態度を示す。テアはヌーやソフィの決定に従うであろうし、この場でエイジだけが反対を言った所ところでどうしようもない。
「分かった。エヴィという少年の手掛かりを見つける為に、ゲンロクの元へ向かうというのならば、この小生もついていこう。ゲイン、お前は留守を頼むぞ。間違っても『退魔組衆』が訪ねてきてもソフィ殿達の居場所を申すで無いぞ?」
父親に留守を申しつけられたゲインは、コクリと大きく頷くのだった。
「良いのか? 大体の場所さえ教えてくれれば我達だけで向かうぞ?」
「まだまだお主達から、サイヨウ様の現在の様子を聞きたいところだ。それに小生がいた方が里では何かと顔が利く筈だ」
そこまで申し出てくれているエイジを断る理由も無い。ソフィとヌーは一度だけ視線を交わし合い、エイジの申し出を快く受けるのであった。
「だが、向かうというのなら明日にしよう。今は町中の『退魔組衆』が色々と動いている。先程の件の事もあるし、今動くのは得策では無い」
「分かった。では言葉に甘えさせてもらうとしよう」
ソフィがそう言うとエイジは、一度だけシュウを見た後に首を縦に振って頷きを見せるのだった。
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