第854話 激昂するエイジ
「同志達と揉めている事と俺達がこの場に現れた事は、本当に関係が無く偶然だったのですよ」
エイジがいつでも戦える態勢を整えていると、察しているイバキは事の詳細をゆっくりと話始める。現在長屋の戸の前から少し前に出た路地。その通路の真ん中にエイジが立っており、そこから少し離れた先に刀鞘に手を当てて、イバキを守るように立っているのが『スー』である。
更にはそのスーから気持ち間合いを取れる程の距離の先にイバキが立っており、そこからエイジに向けて弁明をしている形である。
「……」
エイジはその言葉を聞いても今度は無言だった。聞きたいのはそんな事では無く、聞きたいのはその先の、何故この場に『
「『加護の森』に恐ろしく強い『人型の妖魔』が二体現れたそうです。そして『
真剣な表情に変えたイバキが自分の知り得る情報を淡々と話始めた。そしてそれを聞いて、ようやくエイジは口を開いた。
「『人型の妖魔』が二体だと申したな。その種族は何だ? 鬼か狐かそれとも犬神か?」
「そ、そこまではまだ分かりませんが、こちらで今把握しているのは、その二人組が俺と同じ階級の『
「ふん! その『
退魔組の屯内であれば『
「退魔組の『
イバキは淡々と起こった出来事を告げていく。どうやら直接自分で見たわけでは無く、屯所に戻った後にサテツに聞かされた内容をそのままエイジに話しているようであった。
「ランク3の『鬼人』が野に放たれたか」
動忍鬼と呼ばれた妖魔の事は『ソフィ』達が解放したのだが、その事を知らないエイジは少し警戒するようにそう呟く。
それまでまだ冷静だったエイジだったが、次に告げるイバキの言葉に目の色を変えるのだった。
「どうやらタクシン殿は二人組に対して有する『動忍鬼』をぶつけたようだけど、それでもやられたところを見ると、その二人組はランク4以上だと推測されますね」
「待て『
エイジは返ってくるであろうイバキの言葉を想像出来たが、それでも何かを期待してイバキにそう聞くのであった。
「そりゃあ当然そう言う事でしょう。俺達『
すらすらと当然の事だと思って話をしていたイバキだったが、そこで聞いていた相手であるエイジが苛立ちを剥き出しにしているのを察し、言葉の語尾が弱まっていくのだった。
「『縛呪の行』は『式』にした妖魔の自我を強制的に失わせる術! そのような類の『行』は昔から使わないようにと教えられた禁術の筈だぞ!」
エイジも当然今のイバキが告げた術の数々は会得している。しかし先代や先々代といった『
『退魔組』は『
『鬼人級』の妖魔が逃げ出したという事よりもずっと、その
「そんな退魔士は殺されて当然! お主もそれを良しとするような退魔士であるか!?」
生粋の『
「ぐっ……!」
「ううっ……!」
イバキとその前に居るスーの二人は、エイジの殺気をその身に浴びて脂汗を流しながら苦しみ始める。
もしこの場に先程の『退魔組』の若衆が残っていれば、エイジのこの殺気に耐えきれずに、気を失わされていただろう。正気をまだ保っていられるだけ『イバキ』と『スー』は、相当の実力者であるといえたのだった。
……
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