第696話 イルベキア軍の個別の軍隊

 イルベキアの国から見える二つ先の拠点にまで迫ってきていたスベイキアと、その同盟の龍族達は、遂にイルベキアの最終防衛ラインというべき拠点にまで辿り着こうとしていた。


 しかしそこで遂にイルベキア軍も本腰を入れて反撃に出る。

 シェアーザとベルモントを指揮官とする『』が動き出したのである。


 現在イルベキアから最も近い拠点に『スベイキア』と同盟を組んでいる『トルクタリア』と『ネパルトミ』という国の龍族達が最前線に姿を見せていた。


 トルクタリアもネパルトミも、ブルードラゴンで構成された軍だったが、国力自体はスベイキアどころか、イルベキアにも遥かに劣っている。


 ここまでは数と勢いで強引に領土を次々と侵攻し、拠点を攻め滅ぼしてきていたが、最終防衛ラインのイルベキアの最後の拠点に到着した時、トルクタリアとネパルトミの龍族達は、一斉にイルベキアの龍族達に撃ち落とされた。


 百にも満たぬその龍族達だったが、これまでのイルベキアの兵士たちとは戦力値が違っていた。


 それもその筈シェアーザとベルモントが率いるイルベキア軍の最終兵器。

 イルベキアの『個別軍隊』と呼ばれる龍族達は、その全員が『龍化』に加えて『』を纏えるのである。


 本来『龍化』と『オーラ』を同時に纏える龍族は、スベイキア大国の龍族の軍隊達だけであった。


 そしてそのスベイキアの軍隊は全兵士が『コープパルス・ドラゴン』という龍種の最上位の存在の為『龍化』と『』を纏えるのはそこまで不思議な事では無いが、ブルードラゴンであるイルベキアの龍族が、オーラを纏えるというのは、驚くべき事なのであった。


 イルベキア軍に所属する『個別軍隊』の平均戦力値は7億を越える。

 トルクタリア国やネパルトミ国の兵士達の戦力値は『個別軍隊』の半分に満たなかった。


 圧倒的なイルベキア兵達の『龍ノ息吹ドラゴン・アニマ』によって、一気に押し返す事に成功する。


 『個別軍隊』の龍族達の奮闘を近くで見た事で、イルベキアの龍族達は再び意欲が再び高まり、よい動機付けなった。


 イルベキアは大国と呼ばれているが、正にその面目躍如と言える結果となった。

 五カ国からなる連合軍を相手に最終防衛ラインまで攻められたモノのそこからは、一歩もイルベキアの国には近づけさせてはいない。


 更には『個別軍隊』の指揮官であるシェアーザと、ベルモントもまた活躍を見せる。


 恐ろしい速度で戦場の空を駆け回り、次々と連合軍の龍族達に火を吐いて撃ち落としていく。


 このまま押し返し魔族エイネが来るまで、持ち堪えられるかもしれないと、希望がイルベキアの者達の頭に過ったとき、遂にが、その姿をイルベキア兵に見せ始めるのだった。


「出て来たぞ、スベイキアのだ!」


 ヴァルーザ龍王の側近『シェアーザ』がそう口にすると同時、イルベキア兵達に向けて姿を見せたネスコーは炎を吐いた。


 このまま行けるかというペースを見せていたイルベキア軍に、再び希望から絶望へと落とす程の『コープパルス・ドラゴン』の化け物じみた火力を見せつけられるのだった。


 ネスコー元帥から同胞達を守ろうと『個別軍隊』達が盾となり、イルベキア兵士の前に集結し始める。

 そして更に上空から『』を纏うベルモントが、ネスコー元帥に『龍ノ息吹』を放つ。


 しかしネスコー元帥は冷静に『ベルモント』の『龍ノ息吹ドラゴン・アニマ』を対象に、の『龍呼ドラゴン・レスピレイ』で炎を跳ね返した。


 自身の吐いた火が自分に向かってくるのを見て、慌てて旋回しながら回避を図る。

 そのベルモントに向けて、今度はネスコー元帥が『龍ノ息吹ドラゴン・アニマ』を放つのだった。


 自分の『龍ノ息吹ドラゴン・アニマ』と、格上の『コープパルス・ドラゴン』である『ネスコー元帥』の『龍ノ息吹ドラゴン・アニマ』に同時に襲われたベルモントは、避けきれずにネスコーの火によって身体を焼かれながら、地面に落ちて行った。


「ベルモント!! お前らはネスコー元帥をこれ以上近づけるな!」


 シェアーザは『個別の軍隊』達にそう命令すると、地面に落ちて行くベルモントを空を飛びながら追いかける。


 『個別の軍隊』が、ネスコー元帥に一斉に攻撃を始める。

 しかしネスコー元帥は『個別の軍隊』達の攻撃を一切受けずに華麗に飛翔しながら躱していく。


 そして避けながら隙のある者達から順番に、攻撃を加えて撃ち落としていく。

 まさにネスコー元帥は、であった。


 スベイキア大国の軍隊でこれまで最強の座に君臨してあらゆる戦争から、を守り抜いてきた事はあると言えた。


 更に『コープパルス・ドラゴン』は『ネスコー元帥』だけではない。同盟の連合軍達がイルベキアの『個別の軍隊』達によってやられたことで、遂にスベイキア大国のコープパルス・ドラゴン達がその姿を続々と見せ始めるのだった。


 ハイウルキアのガウル龍王やその側近達は、シェイザー王子を守っていたという名目で、軍を最後尾付近に寄せながら、安全な所でイルベキア軍が、苦戦している様子を眺め続けるのであった。

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