第671話 待ち焦がれた言葉
その頃シティアスに繋がる洞窟付近の場所でレアは、遂に親であるフルーフと再会を果たした。
キーリが組織の大魔王達の手によって、やられそうになったところ『ダール』の世界からレアの魔力を探知した『フルーフ』が姿を見せて、レアを守るために組織の魔族達を蹴散らし『キーリ』とレアを守ったのである。
空から意識を失って地上へと落ちそうになったキーリの身体をレアは必死に掴んだ。
今はレアの膝の上でキーリは、心地よさそうに眠っている。
そんな二人の様子を見ていたフルーフは、ゆっくりとレアの隣に腰を下ろして、そしてレアの首に手を回した後にそっとフルーフは自身に抱き寄せた。
「レアよ、長い間一人にさせてすまなかった」
「ふ、フルーフさまぁ……」
レアはフルーフの胸の中でか細い声をあげた後、目に涙を溜め始めていく。
そしてもう我慢が出来なくなったレアは、嗚咽を漏らして涙を流すのだった。
実に三千年以上もの間、
そしてようやく再会する事が出来たのだから、レアはもう泣く事を我慢できなかった。
少しの間フルーフに頭を撫でられながら、胸の中で泣いていたレアだったが、やがて顔をあげてフルーフの目を見る。レアのその顔は不安そうでいて、そしてどこか期待をしたような顔をしていた。そしてレアはフルーフの顔をしっかりとみながら口を開いた。
「フルーフ様。私は、私は報告が遅れましたがご命令通り、
厳密には三千年前のこの世界の事であるが、それでも嘘は吐いてはいない。
フルーフはレアの言葉に心底嬉しそうな表情を浮かべたかと思うと、ずっと言いたかった言葉を口にする。
「レアよ。よくぞワシの言いつけを守りに任務を果たした『
そう言ってレアの頭に手を置いて撫でてくれた。
「!」
親に褒められた事のないレアは親から褒められた時に、自分がどういう感情を抱くのだろうと幼い頃からずっと考えていた。そしてそれは意識をし出した後もずっと疑問に思っていた。しかし本当の親の居ない自分にはどうしようもなく、求めようのない感情だった。
フルーフに拾われた後もレアはその事をずっと考えていた事であった。
――そして今ようやく『
レアは予想以上に自分が喜んでいる事に気づいた。
待ちに待った幼少期からの言葉を、
「え、えへへ……!」
泣きながらもレアは、嬉しさに顔を綻ばせる。
ずっと彼女が、欲しかった言葉だった。
レアはもう何も思い残すことが無いという程に、これまでの我慢してきた全てに対し、全てを許せるような、そんな感情が自分の胸に宿ったような満足感を得る事が出来たのだった。
レアのその屈託のない笑顔を見て、我慢しきれずに抱いている手を強めながら、フルーフもまた涙を流しながら自分の娘に謝罪を続ける。
「すまなかった、すまなかったなレア!」
たった一言で
レアの事を想うと操られていた自分の不甲斐なさがこみ上げてきてしまい、フルーフはもう涙を止められない。そしてレアもまた、フルーフの胸に顔を埋めて泣くのだった。
キーリはレアの膝の上でゆっくりと目を覚ましたが、空気を読んでそのまま気絶しているフリを続ける。
ちらりと片目を開けてレアの様子を窺う。
そのレアの顔はとても嬉しそうだった。
キーリもまたずっとこの瞬間が来るのを待っていたのである。そっと下を向きながら、キーリも目から涙を零す。
(……よかったな、レア! お前は本当によく頑張ったぞ!)
ここまで頑張ってきたレアをキーリは心の中で褒めた後、心から祝福をするのだった。
……
……
……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます