第536話 決めておくべき事と、少しの楽しみ
次の『ラルグ』魔国の新体制の役職が、暫定という形ではあるが決められた。
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ラルグ魔国王:『レルバノン』。
ラルグ魔国相談役:『ソフィ』。
ラルグ魔国王補佐:『レヴトン・フィクス』。
ラルグ統括軍事司令官:『エルザ・ビデス』。
ラルグ外交担当長:『ビレッジ・クーティア』。
ラルグ統括軍事副司令官:『ゲバドン・トールス』。
ラルグ軍管理部長:空席。
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現在役についている者達がそのまま残るという次体制ではあったが、ソフィ王体制の時には、No.5を務めていたレヴトンが、No.2の『フィクス』という立場となった。
――長きに渡りこの国を支えてきた実績が、正しく評価された形であった。
まだ決まっていない役職もあるが、それはまだ『ソフィ』王の現体制の間に決めて行けば良いという事で決まり、この暫定の新体制はラルグ魔国の民達や、ヴェルマー大陸にある各国に伝えられた。
ソフィは先代魔国王という肩書の他に『ラルグ』魔国王の相談役という役職に就いた。
彼はこれまでレイズ魔国の相談役も務めていた為に、今後はラルグ魔国とレイズ魔国の両国の相談役と言う立場になる。
――『三大魔国』の内である『ラルグ』魔国と『レイズ』魔国という二つの大国の大きな決定権を有して、更には最後の三大魔国である『トウジン』の魔国王とも有意義な対談を直ぐに行える存在が、今後のソフィの立ち位置という事である。
今後は両国間で何かトラブルが発生した時に、まずは相談役のソフィに最優先で伝えられる事になる。大国ラルグ魔国という事もあり、他の魔国は直ぐにこの新体制を把握するために、しっかりと記憶するのだった。
会議を終えて他国にも伝え終わったソフィは、屋敷に戻ってきていた。
「これでひとまず我のやるべき事は終えたか」
「お疲れ様。ソフィ」
リーネが二人分の紅茶を淹れてくれた。
「おお、すまぬな」
リビングにあるソファーに二人仲良く座り、紅茶を飲む。
「ねぇソフィ? 明日久しぶりに『グラン』のギルドに行ってみない?」
「……む? それは構わぬが、突然にどうしたというのだ?」
「久しぶりに
「そうか。お主が見たいというのであれば我は構わぬよ」
「ふふ、ありがとう『グラン』の冒険者ギルドは、貴方の活躍で相当有名になっているらしいから、見てみたかったのよね」
嬉しそうにそう話すリーネを横目に見ながら、ソフィは頷く。
「懐かしいものだな。我がこの世界に来て何も分からない時に、ディラック達には本当に世話になった」
感慨深そうに
「ベアもつれて行きましょうね?」
「そうだな。ベアも自分の縄張りの森を見てみたいだろうしな」
屋敷の外の庭でベアは、耳をぴくぴくと動かしながら会話を聞いていた。しかし聞こえないふりをしながら、二人の団欒の時間を邪魔せずにその場に寝そべる。
「レグランの実もたらふく食べておきたいな」
そう言って光金貨がギッシリと詰まった袋をソフィは取り出す。ソフィは自分で自由に使える額も『使い道がないから』といって、リーネ達の生活費を除いた額を全て国の為に使おうとしていたところをレルバノンに窘められて、少しずつ貯めていたようである。
「え? まさか『レグランの実』の代金に、それ全部渡すつもりじゃないでしょうね……?」
「え? あ、うむ……」
リーネの表情が固くなり、ソフィに説教をするときの顔に変わった。
「い、いや! 世話になった露店のおやじに
慌ててリーネの視線から隠すように袋を懐に直すと、溜息を吐きながらリーネは仕方ないとばかりに頷く。ソフィの金銭感覚はこの世界に来た時から変わっておらず、リーネはその都度苦労させられているのだった。
「まぁ貴方のお金だし。私も
リーネはそう言ってソフィに釘をさすのだった。
ソフィが先程、懐から取り出した袋を手渡すだけで、場所によっては、
光金貨は国と国との取引で使われる金貨であり、たった一枚でも国レベルの商売は成立する。
そんな金貨がぎっしりと詰まった袋を『
とくに『グラン』は今でこそ治安も良くはなっているが、やはり冒険者ギルドがある町なだけあって、荒々しい冒険者もまだまだ多いのである。
そんな連中が大金を持っている商売人を見て、事を起こさないとも限らないのである。
(まぁソフィの知り合いを襲った瞬間に、冒険者は後悔する事になるだろうけどね)
とくに『グラン』の町で商売をしているソフィの大事な
リーネは隣に居る10歳くらいにしか見えない子供の姿をしたソフィを見ながら、苦笑いを浮かべるのだった。
「うむ。しかし本当に楽しみだな」
ソフィの頭の中は『グラン』や『レグランの実』の事で、いっぱいになっていくのだった。
……
……
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